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【第一章完結!】猫又でーす、異世界にいまーす。  作者: くろこげめろん
第一章 GotoもしくはComefrom

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19/68

19 レイド参加者:一名

 僕が後ろを向くと、真っ黒な化け物がいた。


 身長は百メートルあるかな。とにかく真っ黒な大きな鎧で、兜のあたりが赤く光っている。さらに大きな剣も構えていた。


「……」


 勇者の話からすれば、最後の力を振り絞って、僕を倒すために呼び出したんだろう。まったく、面倒なことをしてくれる……。


「ギ、ガガ――ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」

「うわっ」


 大きな剣が振り下ろされ、地震が発生する。そらちゃんを回収し、伝言と勇者二名を託して魔法でラリルくんの部屋へ送り届けた。すまんね、ラリルくん。


 剣はたいして鋭くない。大きいので、サイズと質量で潰す感じだろう。


「『エクスプロージョン』」


 化け物の腕あたりでボンッと爆発が起き、小さな黒い破片のようなものが飛び散る。少しだけだが、ダメージを与えられたようだ。


 どこかにコアみたいなものが有るのか、全部ドカーンってやらないといけないのか。まあ、コアがあるなら胸とかだろうし、とりあえず胸を貫通させるとしようか。


「ギィイイイイイ」


 耳障りな音を立てながら剣を振り下ろしてくる。巨体に見合わず、速い。


「『エクスプロージョン・ラグナロク』」

「ギギギッ――!?」


 閃光と熱があたりを埋め尽くす。普通のエクスプロージョンをさらにいくらか魔法で調整して、国を消し飛ばせるほどの莫大な爆発力を極限まで収束。


 それを解き放つことでさらに増幅した爆発を起こす、僕が創り出した最強の技だ。

 もちろん周囲に被害が出ないようにたぶん、もう化け物はボロボロだろうね。


 光が収まると……


「え?」

「ギ――――」


 僕は潰れた。


「あーいってー」


 もちろんすぐに復活し、魔法で仕返す。


 だけど、思ったより化け物にダメージは通っていなかった。


 予想では胸に風穴くらい空いてると思ったけど、胸の厚さの三分の二……いや三分の一くらいが抉れただけだ。意外と硬いぞ。


「『エクスプロージョン・ラグナロク』! えーいめんどくさい『ラグナロク』! 『ラグナロク』っ!」


 とんでも爆発の乱射でどんどん化け物の体が抉れていく。


 ……ていうかダークな感じだよねこいつ。勇者が呼び出すもんじゃないと思うんだけど。


「ギイイイイイイイイイ――」

「うーむ、胸にコアは、ないかな……」


 ようやく胸に風穴が空いた。攻撃をひょいっとジェットで躱す。


「もうめんどいし、なら、仕方ないか。ビーチがなくなるかもしれないけど……ツケは勇者に回しといてね? 『エクスプロージョン・ラグナロク』――――――ッ!」


 持ちうる魔力を半分つぎ込み、魔法をぶっ放す。


 とんでもない轟音で鼓膜が破れ、目が見えなくなり、僕は化け物もろとも吹っ飛んだ。




 ――ごつんっ。


「いたーっ!?」


 砂の上に倒れていると、頭に何かがぶつかった。それで目を覚まし、起き上がる。


 僕の横に転がっていたのは、どす黒くて巨大な宝石。中には血管のようなものが張り巡らされていて、どくどくと脈打っている。

 それはとても強い魔法パワーを放っていて、下手に扱うと爆発しそうだ。


「あっ、そうだ! さっきのやつ、は……おっと?」


 予想はしていた。していたが、実際に目にすると驚くよね。


 範囲を狭めて被害を抑えようとしたにもかかわらず、ビーチが半分くらい消し飛び、海が若干広がっていた。

 あたりに、先ほどぶつかってきた宝石が散らばっている。なるほど、化け物のパーツかな。


 魔法で適当に回収してかばんへしまい、ついでにクエスト指定の貝を十個くらい拾ってからジェットで街へ戻った。




「まったく、人の迷惑も考えてよね」

「ごめーん!」


 ギルドマスター室へ入ると、ラリルくんは椅子に足を組んで不機嫌そうな顔をしていた。

 その隣に、簀巻きにされて気絶した勇者二名とそらちゃんがいる。


「事情は聞いたけどね。なにか、襲われたっていう証拠はあるかな」

「うーん、勇者が最後に呼び出した化け物の欠片なら、いっぱいだけど。それでいい?」


 かばんからひとつ取り出す。


「ああ、うん……? こ、これって」


 驚いたように目を見開くラリルくん。僕の近くへ飛んでくると、宝石をぶんどって眺め、大きな声を上げた。


「まずい! 勇者二人に、できるだけ強い回復魔法を!」

「え? あ、うん!」


 残っている魔力をほぼつぎ込み、回復魔法をかける。なあに、明日になりゃ魔力は全回復してるよ。

 勇者たちは「うー……」とうめいた後、目を開いた。意識を取り戻したらしい。


「こ、こは……っ!? おい、貴様――」

「ちょっと静かに。自分はこの近くのギルドマスターのラリルだよ。ひとつ聞くけど、なんであんなもの召喚したのさ」


 ラリルくんの剣幕に押され、おとなしくなる勇者。ラリルくんはかけらを見ただけで何を召喚したか分かっているみたいだ。


「なんでって……」答えたのはアイだ。「先生――えっと、アタシたちに魔法を教えてくれた先生が、負けそうになったらこれ使って召喚しろって、スクロール渡してきて……」

「はあ……なるほど、わかったよ。ルミネアは、勇者に死んででも昼くんを殺してほしかったみたいだね」


 それでも「え?」って顔をしている勇者たちに、ラリルくんが事実を淡々と告げた。


「きみたちが召喚したのは、『ハザード』っていう人工の魔物。あらゆる者の命を喰う、禁忌とされている魔物」

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