18 勇者の敵は必ずしも悪ではない!(キリッ)
「行くよ」
驚いた顔の雄太郎めがけて飛び出す。
「な、んだその力は……ッ!」
ぎりぎり僕の剣を受け止めた雄太郎が、絞り出すように言う。
表情は明らかに苦しそうだ。そりゃ、僕の力って強いもんね。
「攻撃を受けなきゃ、きみの魔法を発動させる機会もないでしょ?」
「貴様、そこまで調べて……!」
腕力で押し返し、ついでに雄太郎めがけて水の弾丸をぶち込む。
「がぁああーっ!?」
「ユーくん! くっ、『フレイムスピア』!」
ようやく現状を認識したらしいアイが炎の槍を飛ばす。威力はさすが勇者と言うべきか異常なまでに高いが――
「『エクスプロージョン』! 『ウォーターガン』!」
僕は爆発で難なくそれをかき消し、反撃を飛ばす。
アイはそれを結界で防ぎ、復活した雄太郎が僕へ斬りかかる。
「『インペリアル・コート』ッ!」
「おっと」
顔を逸らせて斬撃を躱す。横から飛んできたアイの銃弾は爆発で防ぎ、ジェットで空へ飛ぶ。
「貴様……! アイ、作戦変更だ。こいつは強い、本気を出すぞ」
「うん、アタシもそう思ってた!」
一瞬で、純粋な脚力だけで僕のいる高度へ到達する雄太郎。ふうん、さっきのはまだ手加減してたってわけね。すごく速くなった!
相手が魔法を使う前に、僕が剣を振るう。
「『インペリアル・コート』」
「フン、それはもう聞いている!」
やはり僕がコピーできることは聞いていたらしい。
アイが雄太郎に空中浮遊の魔法を付与し、雄太郎は横薙ぎの斬撃をひらりと回避した。ドッキリ大作戦は失敗だ、残念。
「ハイドロポンプー!」
「『ザ・インパルス』!」
アイが魔法を使うと、雄太郎の体を水がすり抜けた。
おーっ、『ザ・インパルス』は他人にも付与できるの? 情報に修正が必要みたい。
だけど、とりあえず勇者二人の固有魔法はコピーできたわけだ。
「ところで」激しい雄太郎の攻撃をいなしながら口を開く。「きみは自分が正義だと思う?」
「当たり前だ、何を言っている?」
わざと力を込めて大きく剣を振る。
ガァーンと大きな音が響き、振動が雄太郎の左手の力を弱めた。
「正義って言うのはね、いっぱいあるんだよ。僕は、自分が正義だと思ってるし……」
「はっ……」
「ここに来る前は、自分の意思ひとつで相手を悪にできたかな? 思い出してみてよ『検察官』くん」
「ッ!?」
雄太郎の日本での職を言い当てると、大きな隙ができた。
僕はとりあえずキックで雄太郎を地面へ落とす。
飛んでくる炎の槍を水を出現させて消し、ついでにアイをびしょ濡れにしてやる。
「きゃっ……ちっちゃいくせにやるわね……!」
着地した瞬間に、地面から真っ黒な蛇のような何かが飛び出してきた。
「わわっ!?」
僕を飲み込もうとする蛇の顔面を魔法で叩き、ジャンプの軌道を変化させて起き上がった雄太郎へライダー○ックもどきをぶちかます。
「甘いな! 『インペリア――」
「『インヘイル』!」
魔法に使われる予定だった魔力を消滅させ、空いた隙を突き顎へ、オーバーヘッド的な全力の蹴りを叩き込む。
雄太郎の体はわずかに上へ飛び、ばたりと地面へ倒れた。
「ゆっ……ユーくん!? そ、そんな……!」
気絶した雄太郎はその辺に置いたままで、アイの方へ向き直る。怯えた表情をしていたが、すぐにそれを引き締め、銃を構えた。その奥でそらちゃんがガッツポーズしているのが見える。かわいい。
「さて」
弾丸を斬り落としながら結界を張り、かばんへしまう。
「何をして……」
「ガンマン勝負ってカンジかな?」
僕も、二丁の銃を取り出す。
ただしこれらは特別製――アイの持っている銃とは違い、レーザー銃だ。ちなみに動力源は太陽光。すごいでしょ。
「なんで……!? なんで銃を!? まさか他の勇者から奪って――」
「違うよ。僕が『日本人』だからさ」
文を終えると同時にレーザーを放つ。
アイはそれを魔法で弾き、石礫に風のドリル、火の弾丸などさまざまな種類の魔法を乱発してくる。
「はあ!? なんで日本人がそんな悪い事ばっかしてんの!? サイコパスじゃん!!!」
「きみは少し、僕のことを誤解してる。僕がやった悪事は――少なくともきみが知らされてるだろうことは――正当防衛だよ。騎士団だって、訳の分からない理由で処刑されそうになったんだもん」
「それはっ! 神の部屋に勝手に入ったからでしょ聞いてるよ! 別にアタシは神とか信じてないけど、ここの人たちからすればすごく嫌なことなのよ!」
勝手に入ったと言っても、いきなりそこに転移させられちゃったんだけどね……。はあ、困った。
すごいスピードで飛んできた魔法製の砂を石の壁で防ぎ、石礫をレーザーで弾く。
いろいろな魔法をほぼ同時に使ってくるので、正直雄太郎の二倍くらい対処が面倒だ。
「『ザ・インパルス』っ! うおおおお!」
魔法でスペクテイター状態になった一秒の間に僕との距離を詰めるアイ。解除された瞬間に、ゼロ距離で僕へ発砲しようとしたけど……
「よいっと」
僕が真横に飛び、躱す。
ジャンプで近づいてきたので少し着地時に隙ができる。その間に僕は真後ろから蹴りをぶち込んだ。
「がはっ!」
アイの背骨が鈍い音を立てる。こりゃ、折れたね。
地面に突っ伏したまま動きを止めたアイを仰向けにさせると、どこか不気味な笑みを浮かべながら僕を睨んできた。同時に、僕の背筋をいやな予感が走る。
「できたよ……ふふ、できた。ねえ?」
「ああ」
いつの間にか、雄太郎は意識を取り戻していた。だが襲い掛かってくるでもなく、上半身を起こしただけで僕を睨んでいる。
そらちゃんは無事だ。念のために、結界を張っておく。
「何ができたって?」
「もう、分かるさ……」
力を使い果たした勇者たちが同時に倒れ、僕の真後ろで、大きな咆哮が響きわたった。
かささぎを見ていたら、PVが1000になっていました。やったね!
ちなみにユニークは500くらいです。




