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【第一章完結!】猫又でーす、異世界にいまーす。  作者: くろこげめろん
第一章 GotoもしくはComefrom

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14 会議にも力は必要なのだッ!

 昼過ぎのギルド備え付けの会議室。


「んー」


 ラリルくんがめっちゃ唸っている。


「んぅうううううう」


 会議中にもかかわらず、僕の前でめっちゃ唸っている。


「んんん――」

「静かにせんかこのガキがぁあッ! ギルドマスターになったからっていい気になってんじゃあないぞッ!」


 筋骨隆々の老年の男が机を大きく叩き、コップに入っている水が少しこぼれた。


 考え事の海から引き戻されたラリルくんが目をまん丸にする。いくらラリルくんでも、この人はちょっと怖いらしい。目つきは鋭いし、体はでかいしね。


 ……そう。今は、三度にもわたる魔人襲来の件について、自国と他国の大臣や他のギルドマスターなどが集まって会議を行っている。

 なんで僕がこの場にいるかって? ラリルくんに『重要参考人』として連れてこられた。報奨金が出るみたいなので、しぶしぶついてきたわけだね。


 司会者が黒板にチョークで色々書きつつ今までの情報を伝えている最中にラリルくんは大きな唸り声をあげていたので、隣の国のギルドマスターが怒ったのだ。


「まあいいじゃありませんかぁ、レオンギルドマスター。フォフォフォフォフォ、邪魔なのであればぁ、じきに地位を追いやられるだけのことぉ……」


 でっぷりとしたこの国の軍事大臣が言う。なんでこんな戦闘力ゼロにしか見えないやつが軍の大臣やってるんだろ。

 どうやらこの人は公爵らしいし、貴族の力かな。それとも相当頭がいいのか。


「フン」


 レオンと呼ばれた老年ギルドマスターが腕を組み、司会者に続けろと顎で合図する。


「はい、説明を続けさせていただきます。街を強襲したメアヴェノ・コルキソー及び救出に来たハチェアー・ボルビアッソは先日倒され、現在は地下留置所にて行動の制限をされております」


「地下留置所……そんなものが有ったか?」


 レオンさんは司会者を睨んだ。いちいち視線が鋭いなあ、この人。


「はい、このギルドの地下にはラリルギルドマスターが建設した簡易的な地下留置所が存在します」

「またお前か……! なぜ国に引き渡さなかった! 一度脱出されたんだろう? 責任はとれるのかッ!?」

「うるさいなきみ。今会議の腰を折ってるのはきみなんじゃないかなレオン。別に謝罪は要求しないけど、こちらだって一度黙ったんだ、黙ってもらおうか」

「ッ……!」


 おうおう、ラリルくんもラリルくんだ。

 レオンさんは舌打ちをひとつすると、再び顎で司会者に指図した。偉そうな人だ、この人も貴族の出か何かかな。


「そして、ハチェアー・ボルビアッソを救出に来たと思われるドッドゥルド・タザマロゥも倒され、留置所の別室で制限されております。彼らを倒したのが、そこにおられますアップヒル様です」


 ほう、と感心したように息を吐くレオンさん、いまいち信じていなさそうな軍事大臣、なぜか自慢げなラリルくん。

 他のメンバーは大半があまり信じていなさそうだ。まあ、見た目が見た目だしね、仕方ないかな。

 参加者の一人が、僕の方を訝しげに睨みながら発言する。


「失礼なのは承知しているが、この少女が魔人を三度も倒したと言われても首をかしげざるを得ないのは事実だ。どのように倒したか教えてくれるかな」


 この眼鏡をしたオールバックの壮年の男は、レオンさんとは違う国の大臣だったっけ。あー、最初に一気に紹介があったからこんがらがって合ってるかわかんないや。でも多分そうだった。


「メアヴェノは体を硬質化させて防御したので、とにかく内側に衝撃を与え、ぶん殴って倒したよ。ハチェアーは強かったけど、重力操作でメアヴェノをやっつけたら怒って行動が単調になって、そのままダウン。で、ドッドゥルドは魔法をコピーして、同じ手でやっつけた」

「ほう、魔法をコピーというのは?」


 一瞬メガネがキラリと輝いたのは気のせいかな。


「僕の固有魔法が、見た魔法をコピーできる能力なんだ」


 多分大臣は「そうか、わかった」と言って頷く。僕の言葉を信頼してもらうのはできたみたいで、一安心。ラリルくんが目で「あんまり人に手の内を明かすのは……」と言っているような気がした。


「報告は以上でございます」


 司会者がチョークを置き、部屋の隅へ戻る。


「うん。それじゃあこれからどうするか、話し合おうかと思うんだけど――」

「なぜお前が会議を仕切っている? いい気になるなよ、ガキがッ!」


 レオンさんの言葉にラリルくんの口が横一文字に伸びる。これは、怒ってるな。殺気があふれ出て、参加者の数名が小さな悲鳴をあげた。


「静まれ」


 だが、机の一番いい席に、一番いい椅子で座っている男がそう言うと、すべてが静かになった。たしか、そう、この国の王様だ。

 優しそうな表情だが、どこか威圧感と王者然とした雰囲気を纏っていた。かっこいい。


「この場は口論をする場であるか?」

「いえ」


 レオンさんは冷汗をかきながらも王の目をまっすぐ見据え、返事をした。ラリルくんが「ふははどうだ」って感じの悪い顔をしてるね。


「分かっているのであればよい。時間は有効に使うべきであろう、続けよ、ラリル殿」

「うん」


 この人は王様にもタメ口なんだね。すごいのか、やっぱり変わってるってことか。そしてそれを許す王様の心の広さよ。……それとも、この世界は王様にため口で話しても大丈夫なのかな。


「まず、とくに命令とかがなければ魔人たちはギルドで預かろうと思う。せっかく制限の腕輪もいくつか追加を買ってきたし、情報の伝達が遅いお役所様なんかより強力な昼くん……アップヒルをすぐに動かせるギルドの方が、万一何かがあっても対処がしやすいしね」


 軍事大臣の額に青筋が浮き出るが、情報伝達の遅さは自覚があったのか食って掛かったりはしない。やっぱりどの世界でもお役所は遅いものなんだろう。


 だがその代わりにオールバック多分大臣が質問を投げかけた。


「一度脱走を許したということだったが、安全管理ができている証拠はあるのか? 制限の腕輪も、そう簡単に購入できるものではたかが知れているのでは? その点についてはどうか」

「制限の腕輪は自分が改良をして、理論上はどれだけ魔力が大きくてもどれだけ力があっても問題なく制限が効くようになってる。さっきアップヒルや数人のAとBランク冒険者に試してもらったけどね、誰も自分で外すことはできなかった。素材もエンチャントを施してもらって、第三者からの攻撃にも十分耐えられるようにしたよ。どう?」


 うん、僕も手伝った。あれはとても怖いものだね、どうあがいても外せそうにないや。

 それとエンチャントをしてあげたのも僕でーす。僕ってば一番の功労者じゃないかな。


「ふむ、さすがだな。……そうだ一度実演してみせてはくれまいか? その方が信頼もされるだろう」


 念入りなことだね、やっぱり、為政者としてはそういう方がいいのかな。

 ラリルくんは予備で持っていた腕輪を掲げて見せる。


「だれか腕っぷしか魔法に自信ある人?」

「……ではわしがやろうではないか。ここで脱出できたのなら、お前はどうなるか、分かるだろうな?」


 レオンさんが好戦的な笑みを湛えてラリルくんへ歩み寄り、腕輪を自分の左手にはめる。


「はい、いいよ。好きなだけ暴れてみてごらん」

「フン。うぉおおおおお――お、お?」


 威勢よく大きな雄たけびを上げたレオンさんだったけど、すぐに途切れ、その場へぐたりと倒れこむ。


「レオンギルドマスターは確か一昔前はSランクだったよね。今は多少衰えてるかもしれないけど、レオンギルドマスターくらいなら容易に封じ込めるのは、これで実証できたよ」


 ラリルくんが鍵を腕輪に差し、腕輪を回収する。レオンさんは悔し気な表情でラリルくんにひと睨みくれると、席に戻って腕を組んだ。


 多分大臣も大きく頷き、次の話題へと入る。……もう、帰っていいかな。

 あれ、書いてから見直して気づいたけど、ギルドマスターってみんなキレますね(笑)。

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