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【第一章完結!】猫又でーす、異世界にいまーす。  作者: くろこげめろん
第一章 GotoもしくはComefrom

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11 拷問? 尋問? ただのお話だよ。

 ラリルくんが超怪力でメアヴェノとハチェアーを連れて帰ると、未だに騒がしかったギルド内は静かになった。


「こちらの不手際で心配と迷惑をかけました。ごめんなさい」


 深く頭を下げるラリルくん。先ほどまでギルドの職員にものすごい罵声を浴びせていた冒険者も、これには黙らざるを得なかった。


「魔人ふたりのことは今日は僕がつきっきりで話を聞くから、もう逃がさないよ。本当に、ごめん」

「……次からは気をつけろよな。ったく」


 バツが悪そうな顔で外へ出る冒険者。その後は、止まった時が動き出したかのようにギルド内が慌ただしくなった。


「お前が倒したんだろ?」


 ジョンくんが酒を飲みながら聞いてくる。


「よく分かるね。強かったよ」


 小さく息を吐くジョンくん。なぜか、全然酒臭くない。


「まあ、武器の点検をしてから地図を見て飛び出してったからな。お前なら、魔人討伐に出かけて行っても不思議じゃないさ」


 その隣では、ジョンくんの肩にもたれかかる形でそらちゃんが眠っていた。子守りもしてくれたのか、ありがとう。


「今日はもう休んだ方がいいんじゃないか? 少し、疲れてそうだぞ」

「んー……そうだね。ありがとう」


 僕は一ドル払ってからシャワーを浴びて、そらちゃんの隣でゆっくり寝た。




「悪いね、協力してもらって」


 翌日。すっかり調子を取り戻してふてぶてしい感じになったラリルくんは、これから魔人たちの話を聞くらしい。

 昨日はふたりとも一向に目を覚まさなかったので話が聞けなかったとのことだ――ああ、脳に障害が残ったとかそういうことは無いらしくて、ただ疲労で眠っていただけのようだ。


 そこで僕は何をするかと言うと、魔法の腕を見込んでの保険だそうだ。話が聞けなかった際の脅迫にも、拷問にも、護衛にもなる。すごいでしょ。


 ギルドの地下にある簡易的ながらいろいろ便利な留置所へ入る。ここは普通の家と大差ないつくりをしていて、何が違うかと言われれば少し狭いのと物が少ないことくらいだ。メアヴェノたちは奥の寝室で寝ているらしい、床に。ベッドもないんだって。


 あと、昨日ハチェアーが救出した際に掘ったのか大きな穴が壁にできており、石で雑に修理した跡があった。


「入るよ」


 ハチェアーは依然眠っているようだが、メアヴェノは起きていた。


「オい、拷問カ? あっサり侵入を許スヨうなダメギルマスが――っテお前ッ!」


 僕の方を指さして瞳を震わせるメアヴェノ。


「やっほー。今日は僕もついてるからね」

「ッ……! もウオ前の攻撃は受ケね……うァ!?」


 メアヴェノの体がすとんとその場に崩れ落ちる。

 その手首には、昨日はつけていなかった水色の腕輪がある。どうやら、それの影響で魔法を使ったり戦闘行為をしたりできないようにされているらしい。


「く、くソッ……言っテオクが、魔王軍は拷問へ耐性をツける訓練モ行ッテいル! 簡単に喋るトは思ウんじャアネえぞッ!」

「別に拷問も尋問もするつもりはないよ」


 ラリルくんが指をパチンと鳴らすと、水色の腕輪がぽやっと光った。それと同時にメアヴェノの目から光が失われる。


「尋問用の魔道具?」

「いや、お話を聞くだけだよ。もともとは牢獄で使われてる、行動制限の腕輪だったんだけど僕がいろいろ調整してみたんだ」


 僕が「すごいね!」と手を叩くと、ラリルくんは花が咲いたような笑顔で親指を立てた。

 行動もあどけなかったり賢かったりちぐはぐだから、本当に子供なのか、姿が変わらない長生き種族なのかよく分からない。


 すぐに真面目な顔になったラリルくんはメアヴェノに向き直る。


「さて……まずきみの名前を教えてもらおうかな」

「メアヴェノ・コルキソー」

「所属は?」

「魔王軍ヴィーダ隊」


 コンピュータみたいだ。聞かれたことを、一切の感情を挟まずに淡々と答えている。これは、やられたくないね。合掌。


「今回の襲撃の理由は?」

「魔王様かラノ勅命だ」

「なぜ襲撃するかは聞かされてないかい?」

「アあ」


 どうやら、メアヴェノはたいした情報を持たされていないようだ。

 理由も知らず襲撃しに来るのは、魔王への忠誠心が強いのか、それとも人間を舐めていたのか。


「想像する範囲でいいけど、次襲撃に来そうなのは誰とかある?」

「スリガルラ隊のドッドゥルド・タザマロゥ。隊は違ウがハチェアーのこトヲ誰よりも慕っテいタシ、性格が性格ダかラ独断デも助けに来るハズだ」


 それを聞いたラリルくんは、いったん視線をメアヴェノから外し、何もない宙を凝視し始めた。幻覚だろうか?


「ふむ……ふむ。昼くん、情報を脳に流し込む魔法ってのは……対処法とか知ってる?」


 僕が首をかしげたのを見て、ラリルくんは悩ましそうな表情を浮かべる。


「先に言っておくよ。ドッドゥルド・タザマロゥの魔法は、触れている相手の脳内に幸せな妄想を流し込み、脳を焼き切る魔法。対峙した時は絶対に触れられちゃダメだからね」

「なるほど。ありがと」


 少しすると、今度はハチェアーも目を覚ました。


「……貴様……クソッ、うぉお、魔王様に栄光――」

「『インヘイル』!」


 ハチェアーがいきなり自爆しようとしたので、僕が魔力を奪い取る。

 ……吸収した魔力は僕に還元されるわけじゃないみたいだね。ちょっと残念。


「な……!? なぜ貴様が、魔王軍の上層部しか習得法を知らない『インヘイル』を……!」

「真似してみたのさー。すごいでしょ」


 ぎりっと歯を食いしばり、全力で睨みつけてくるハチェアー。よく見るとその手首には、水色の腕輪はついていなかった。

 ラリルくんが頭をかきながら言う。


「ごめんね、腕輪って超高級品だからさ……しかもこれほどの魔人をとどめておくとなると、僕の年収を全部つぎ込んで足りるかくらいで……」


 用は済んだとばかりにメアヴェノの首筋に手刀を叩き込み、気絶させ、その腕輪を持ってハチェアーに迫る。


「き、貴様ァ……! チッ、くらえッ!」

「甘ーい! 『トレイン・レイン』!」


 ラリルくんへ殴り掛かったのを僕が相殺し、吹っ飛ばす。壁に少しひびが入ったけど、修理すればいいよね。


「ありがとう。じゃ、きみにも話を聞こうかな」


 再び指を鳴らすと、ハチェアーも同じように虚ろな表情になった。

 ドッドゥルド・タザマロゥ。名前は『風の又三郎』から取った気になっています。しかしながら、風を操る能力はハチェアーで、ドッドゥルドは無量○処もどきなのは、どういうことだろう。どっどどどどうどー。

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