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【第一章完結!】猫又でーす、異世界にいまーす。  作者: くろこげめろん
第一章 GotoもしくはComefrom

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10 かかってこい!

 敵の『インヘイル』なる技で魔力を奪われ、回復能力ががくんと落ちた状況で二体一。非常に卑怯だ、許せん。

 僕が剣を構えたのを警戒しているのか、ハチェアーに動きはない。


「動かないなら、こっちから行くよ?」


 全力で飛び出し、すれ違いざまに剣を振るう!


「貴様はもう見切ったぞ」


 しかしそれは斧に弾かれてしまう。バランスを崩したところに、変な軌道で飛んでくる土の槍。


「『エクスプロージョン』っ!」


 魔力を奪われているので、いつもと同じ火力を出すにはかなり力を込める必要があった。

 けどとりあえずは問題なく土の槍を爆散させる。


「なんと……!」


 意外そうな顔をしているハチェアー。ふっ、このアップヒルを舐めてもらっちゃ困るよ(キリッ)。


 剣の切っ先を地に着けて飛び上がり、ハチェアーには水の弾丸で、メアヴェノには強力な衝撃波を飛ばして攻撃する。が、


「『トレイン・レイン』」

「わあああーっ!?」


 横から強い衝撃を感じ、吹っ飛ばされる。


「出し惜しみはしない。貴様は確実に仕留める」


 嫌だねーこの状況……。


 ハチェアーからコピーした『トレイン・レイン』を分析する。どうやら、質量のある風を出現させる魔法らしい。


 僕が起き上がると、息つく暇もなく紫の斬撃が飛んでくる。


 ――ガキィイン!


「っ……らぁあっ!」


 剣で斧の攻撃を押し戻す。


「ぬぉっ!?」

「『ジェット』。……そろそろさ、自分で動いた方がいいんじゃない?」


 ジェットで絶えず加速し続け、ハチェアーを押す。特殊体質のせいで動かないが……この状況では、ハチェアーの足なり腰なりどこかに負荷がかかっているはずだ。


 ソースは僕の勘だけど、個人的には確信に近い。野生の勘ってやつ? 全然野生じゃないのは置いておいて。


「貴様ぁ……!」


 予想通り耐えきれなくなったのか、後ろへ飛びのくハチェアー。僕はとっさに、土の槍を泥団子にするときにも使った重力を、ハチェアーの真後ろへ生成し――


「グァッ!?」


 吸い込まれたメアヴェノがハチェアーにいきおい良く衝突する。


 ハチェアーの『押されない』体質のせいで、今メアヴェノは衝突の衝撃をもろに受けたはずだ。

 そう、まさにぜったにへこむことのない鋼鉄の床へ頭から落っこちたような感じで……。


「メアヴェノ! 貴様ぁ、よくも……ッ!」


 頭から突っ込んだおかげで見事に脳震盪を起こしたメアヴェノは頭を押さえ、ぐらりとその場に倒れ込み、土の槍による攻撃が止まった。作戦大成功。


「恨むなら自分の体質をどうぞ?」

「ッ……貴様は楽には死なさんぞォ――ッ!」


 ハチェアーの速度が格段に上がった。だけど、対応できないほどじゃない。


 怒りに任せてか、何のひねりもない袈裟斬りだ。このまま受けると、楽に死んじゃいそうだけど……。


「……『トランジェンス』」


 小声で魔法を使い、その場に幻覚を残して後ろへ飛びのく。

 ふふふ、怒っている相手はこういう単純な罠にもいともたやすく引っかかるのだよ。


 予想通りハチェアーは幻覚に向けて斧を全力で振り、隙ができる。


「『ウォーターガン・フォール』!」


 僕の人差し指から、十字型の広面積な弾丸が飛び……


「『フレアシールド』ォォオオオオオ――――!」


 突如現れた炎の壁に阻まれた。

 新手の奇襲か、と思ったけど……どうやら、違ったみたいだ。


 ハチェアーがばたりと崩れ落ちる。その首筋には、見覚えのあるナイフが突き刺さっていた。


「ラリルくん」

「……ごめんね」


 空から降りてきたラリルくんがぺこりと頭を下げる。さっきいきなり怒ったことを気にしているらしい。


「大丈夫だって、心の広さ海の如しってね……あれ?」


 気安く肩を組んだつもりだったが、ダメだったのだろうか。ラリルくんの肩は小さく震えていた。


「その……自分って、ギルドマスター、でしょ」


 絞り出すように出てきた言葉は、初対面の時のふてぶてしい感じからは想像もつかないほど、弱々しかった。


「うん」

「だから……さっき、怒ったこと、は、内緒にして……ください……」


 一瞬「ん?」と首をかしげたが、少し考えてみたら、いきなりキレてナイフを投げつけるのはギルドマスターとしてよくない行いだから秘密にしてほしいということだった。


「お金なら……いくらでも、払うし、だから……っ!?」


 ――むにゅ。


 いきなりほっぺをつねられたラリルくんは目を白黒させている。


「僕がさ、そんな人を脅して金取るようなやつに見えるの?」

「あ、いや、えと……」

「今回のは、内緒にしといてあげる。次からはちゃんと自分で抑えられるようにならないとね」

「…………うん……ありが、とう……」


 ラリルくんはそのまましばらく静かに震えていた。……なんだか、弟みたいだ。意外とかわいいかも?

 本文だけ見るとラリルくんは、いきなりキレてナイフを投げ、挙句は保身のために身勝手な頼みをしたクズに見えるかもしれませんが、根はいい人だし、めったにキレることは無いんです。今回も、冒険者のひとりからぜったいそこまで言う必要ないよねってくらい罵られたので追い詰められていただけなのです。まだ彼はひとりの子供なんです。どうか嫌わないであげてください。

 それと、ラリルくんが魔法で攻撃を防いだのは、『ウォーターガン・フォール』が致命傷になりうると判断したから。ラリルくんはお昼ちゃんよりかなり頭いいです。

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