01 僕は『被害者』なんだァーッ!
ハーイ、始めまして! 僕です!!! 名前はアップヒル、あだ名はお昼ちゃん。現在異世界に来てます!
「ふむ……そのガキが?」
「ははっ、私共五名が巡回中に発見いたしました」
なんか僕は今、すっごいかっこいい聖堂みたいなところで寝っ転がっています! 手足は縄でぎちぎちに縛られてまったく動けないけど、隣にはずらりとかっこいい白金の鎧の騎士様たちが、目の前にはこれぞ王様って感じの老年の人がいて、すごい壮観です!
「神聖なる場へ無断で立ち入ったのならば子供であろうと死罪! 一族郎党皆殺しが妥当でしょう!」
少し離れたところにいるおじさまたちが何か言ってます! いやー、神聖なる場に入ったとか、ほんとダメだな!
「分かった、よかろう。ジューク、首を刎ねよ」
「はっ」
隣の騎士がものすごくカッコいい装飾の剣を抜き、構えます! めっちゃ様になってる! そしてそれを振り下ろして――
「あーだる、ふざけんなって」
剣は木っ端みじんに砕けた。正確には、僕が砕いた、もちろん。縄は適当に腕力でちぎったし、鋼ぐらい横から殴れば叩き割れる。王やらギャラリー――大臣かな――はともかく、騎士も僕の動きは見えなかったらしい。鎧のすきまから白黒している目が見える。
「僕は被害者なの! 分かる!? 友達と乾杯してたのに!」
剣を抜き放つ騎士へ適当に飛び蹴りをぶちかまし、一ジャンプでクアトロプレー。みんな一瞬で鎧がへこんで倒れた。
王は脱兎のごとく逃げ出し、大臣たちがそれに続く。騎士たちは時間稼ぎをしようと僕を囲むように並んだ、忠誠心の強いことだ。
「なんなのだ貴様は……!」
目の前にいるのは一番豪華な鎧を着ているのでたぶん隊長とかそんな感じだろう。
「なんなのだって……しいて言えば、なぜか異世界から召喚された、かわいい猫又ちゃんだよー?」
生活しやすいように人の姿は取ってあるけど、猫耳と猫しっぽが一対隠せてないしね。かわいいでしょ。
ぶりっ子ポーズをしてみる。煽っていると思われたらしく数人が斬りかかってきたが、刃を素手で受け止めて勢いよく地面へ叩きつける。
もったいないけど、豪華な大理石の床が砕けた。弁償はしませーん。
「あーあー、訓練がなってない。そうやっていっつも感情で動いてんの? かっこいいねー! この国のレベルがよく分かるよ!」
「なんだと……!」
「ほら冷静に! ハイドロポンプ!」
魔法で高圧の冷水をぶっ放し、隊長格を吹っ飛ばす。そのままぐるりと一周回れば、もう立ってられる人はいなかった。
「こほん。……出だしは最悪だね……僕の異世界デビューは」
僕は小さくため息をついて、さっきまで何があったのかを思い出した。
* * *
僕は久々に会った同じ猫又の友達といっしょに酒を飲んでいた。未成年だけどいいのさバレなきゃ。だって僕猫又だもん。
するといきなり足元で魔法陣が輝いて、僕の周囲がいきなり真っ暗になる。しばらく宙に浮いているような不安定な感覚がしていたけど、気がついたら暗いところで寝そべっていた。窓はないので、昼か夜かもわからない。
「あいてて……」
ポッケに入れていたスマホを取り出す。画面はつくし、充電は百パーセントだが……電波は届いていなかった。
周囲を見回す。ちなみに猫の目は暗くても見えるのでライトとかは必要ないよ、便利だね。
ここはどうやら教会みたいで、一番奥へ行ってみると何やら大きな宝石が置いてあった。魔法パワーを感じる。……地球にはこんなものないはずだ。つまり異世界。あれ、なんで僕が魔法パワーとか認識できるかって? そりゃもちろん、猫又だから。すごいでしょ。
少し眺めていると、ガシャガシャとやかましい音が聞こえてきた。音の感じからして鎧かな? やっぱり中世ヨーロッパとか……ふむ、楽しそう。
扉が静かに開かれ、予想通り鎧がやって来た。しかもいっぱい。
「異常な……ハッ! 侵入者ーッ! 捕らえろォーッ!」
「いちゃまずかった?」
そんな感じで、僕は捕まって手足をぐるぐる巻きにされた。抵抗? したらここ吹っ飛んじゃうから今はしない。状況が分かって、して良さそうだったら存分にするけどね。
そうして僕がぽいっと王様の前に放りだされて、冒頭に戻る……というわけ。
* * *
「おーい」
「がふっ……悪魔、め……」
おい、悪魔呼ばわりとは失礼だなこの隊長格め。
「いや、あの話聞きたいんだけど?」
そう言っただけなのに、隊長は本気で睨みつけてくる。
「貴様に話すことなど、何も、ない……! 地獄へ落ちるがいい……! っ……」
結構本気で内臓をやってしまったようで、めっちゃ血を吐いてる。痛そうだったので全員魔法で回復しておいた。僕ってばやさしい! 鎧の掃除は各自でよろしく。
とりあえず、後ろの扉を開けて外へ出てみる。今は昼で、さっきの謁見の間らしい場所へ続く廊下は壁がなく、すぐに庭園へ出ることができる。
庭園は花と池、それと白い石碑があり、心地よい暖かな風が吹いている。
「地図が欲しいかな」
かばんからドローンを取り出し、空高くへ上げてみる。ふーむ、王城みたいな、っていうか多分王城なだけあってすごく広い。
間取りはだいたいわかったので、最短ルートで敷地の外へ出てみる。……おやおや、追跡してきてる騎士たちもまるわかりですぞ。
「ここっ!」
ベストタイミングでバックステップ。日本じゃありえないような化け物ジャンプで飛びかかってきた騎士だったが、とりあえず一瞬で全滅した。あ、遠くに魔法を構えている人が一人いる。この感じからすると……風のドリル?
「死ね、悪――」
「おりゃー」
風が僕の腹を穿とうとつっこんできたが、同じくらいの風で相殺してついでに石を投げつける。カーンといい音がして、額あたりの鎧へ直撃した騎士は倒れた。ナイスピッチ!
……ていうか、ここがどういうところか聞かないと行けなかったんだった。何あっさりやっちゃってるんだろ……まあ、街へ出れば済むことか。
こんにちははじめまして俺氏だぜ(ジャジャーン)
調子に乗って書きはじめた今作ですが、読んでいただけると幸いです。ちなみに昼ちゃんの情報はあんまり本編で明かされないので、以下でどうぞ。
名前:アップヒル 性別:女 種族:猫又 出身:日本 年齢:十二
髪の色:先端が金色の白髪 目の色:水色 服装:白いワイシャツに白の蝶ネクタイ、黒い短めのスカート
好きなたべもの:りんご、すし
他にも魔法とかありますけど、それは本編で。
それじゃ、またね。
P.S. めっちゃ不定期投稿です。すぐに続きが読めると思ったか!? 違うんだなぁ! ごめんなさい!!!!
P.S. P.S. 僕の説明不足で質問をいただきました。ちょっと追記したのですがまだわかりにくいと思うので、書いておきます。お昼ちゃんは基本的にずっと人の姿に化けて活動しています。