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ドラゴンズ・ヴァイス  作者: シノヤン
参ノ章:激突

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第95話 無駄遣い

 三人は一斉に駆け出し、尖凝式を腕に纏わせた龍人が真っ先に亜弐香へ襲い掛かった。龍人と颯真は殴り掛かり、その隙にレイが黒擁塵による煙幕を辺りへ散らばす。


 対する亜弐香の攻撃は重く、たとえ防御をしたとしても、まともに食らえば平然とはしていられないだろう。よって龍人は彼女の攻撃に対して避けに徹し、隙を見ながら拳打を見舞う。一方で颯真は銃剣による攻撃と、義翼による防御を試みた。辛うじて持ち堪えはするが、亜弐香は興味深そうに見つめ、続けざまに力を込めて連打する。


『リサーチ完了。打撃パターン把握。格闘モード移行』


 AIのアナウンスが発せられ、義翼が驚異的な速度で変形する。そして亜弐香の拳を包むように受け止めてみせた。もう片方の義翼も変形を済ませ、まるで二本の腕の様に動き出すと、彼女の顔と腹へ次々と打撃を放つ。意外な攻撃だったのか、僅かによろけたが、すかさず龍人が尖凝式を発動した脚で顔に回し蹴りを打つ。亜弐香が更に体勢を崩し、その頃合いで次々と黒擁塵の靄の中から大量の鎖が放たれてきた。四方八方から放たれた鎖の先端には分銅が備えられ、生き物のように亜弐香の四肢へ巻き付いていく。一本一本が意思を持っているらしく、大蛇の如く締め上げて逃そうとしない。


 それらの鎖達を後方で操っていたレイは、そのまま勢いよく亜弐香を引っ張る。鎖達の剛力によって軽々と宙に巨体が浮かび、そのままレイのさらに後方にある団地の壁面へと叩きつける。


「颯真 ! 準備は!?」

「もう少しだ !」


 龍人が聞くと、颯真は頭上を見上げながら答える。丁度その時、上空から荷物を携えたドローンが飛来し、その荷物を投下して飛び去っていた。金属製のケースに収められたその荷物を颯真が開ける間、龍人は印を結んで壁面から動き出そうとしている亜弐香へ手をかざす。


「幽生繋伐流 ! ”砕顎掌さいがくしょう” !」


 獣の頭部の様に形作られた霊糸が、亜弐香へと放たれるや否や背面の壁ごと彼女に食らいついた。大型の妖怪と戦うために編み出されたらしい術であるが、彼女相手には通用すると思っていない。只時間を稼げればいいのだ。


 一方で窓から団地の中へ入り、燃え盛る炎の中をレイは進む。やがて目星を付けていた地点…亜弐香が正にちょうど龍人の攻撃に耐えている場所へと差し掛かる。辺りに黒擁塵をばら撒き、退路を作った上で先程の鎖達を再び召喚し、壁の背後からそれを放って亜弐香へ巻き付けた。壁を砕いた鎖に巻き付かれたせいで体の動きは制限され、それを解こうとすれば霊糸によって作られた獣の顎が自らへ食らいつこうとする。彼らの体力が切れるまで耐えるべきか、亜弐香がそう思っていた矢先、遠方から光が見える。颯真が何か構えていた。


『変形完了。追加パーツとの合体により、レールガン形態への移行完了。出力最大に設定。発射準備完了。トリガーへ指をかけ、発射を行ってください』


 届いたケースの中には、拡張用の装備である大型の銃身が積まれていた。それを手に持つことによって義翼たちが連動し、自動で変形と合体を行う。義翼たちは複数の部位に別れ、颯真の体を支えるための補助用の脚になる部位と、銃身を挟み込んでレールガンの要であるレールの機能を果たす部位とで分かれていた。


「避けろ !」


 無線でその声が聞こえた瞬間、龍人は技を解除して霊糸で別の場所へと即座に避難する。レイもまた、鎖達を放って黒擁塵の中へと潜って消えてしまった。ようやく解放されたと亜弐香が理解した頃には、レールガンによって放たれた弾丸が彼女へ激突する。瞬く間に団地の一画が粉塵を巻き上げて破壊され、轟音と共に敵が打ちのめされたと悟った龍人は感嘆を孕んだ溜息を漏らす。


「あ~…死ぬかと思った」


 別の黒擁塵から転がるようにして姿を現したレイが、土煙を払うように首を振って立ち上がる。龍人も同じく、辺りを舞う土煙を払って颯真に近づいていた。


「いや、なんかする気やと思ったから手伝ったで ? やけどさ、ここまでするんならもう少しヒントくれへん ?」

「しょうがねえだろ。話したらバレちまうじゃねえかよ…ああ、やべ。電力が持たねえ。龍人、そこのケースに入ってる予備のバッテリーパック取ってくれ」


 文句を垂れるレイを宥める颯真だが、ピクリとも動かなくなってしまった義翼を助けるべく龍人へ懇願する。仕方なく霊糸を伸ばして龍人がバッテリーパックを手に入れて渡すと、首筋の装置にはめ込まれている物と急いで取り換えた。義翼たちは再び動いたのはいいが、想像以上にダメージが深刻なのか、火花を所々に散らしてギクシャクとした動きをして小さく折りたたまれる。


「一撃でおじゃんかよ…耐久性に難ありだな」

「でも上出来だろ。見ろ ! 俺達でぶっ飛ばしてやったぜ ! あの裂田亜弐香を !」


 記念撮影でもして欲しいのか、嬉々としながら龍人は破壊された団地の前に立って振り返り、両手でサムズアップをしてその腕を突き上げた。子供の様なはしゃぎ方を前にして呆れたように笑っている二人を見て、龍人は更ににやけていたが、次第に彼らの様子がおかしくなっていく事を不思議に思った。疲れたように上げていた口角が、目に見えて下がっていく。こちらを見つめていたその視線は、確かに自分のいる方角を向いてはいるが、もはや龍人自身を見つめているわけでは無い。自分の背後を見ている。龍人は彼らが見ている先がどこなのか、そして何を見ているのかがすぐに分かった。聞こえてしまったのだ。


「…ちょっと危なかったかも、今のは」


 倒したと思った筈の敵の足音。そして、もう二度と聞きたくなかった”沈まぬ猛鬼”の平然とした声。その二つの要素は、龍人の腕を自然に下げさせ、絶望のどん底へと叩き落すのはあまりにも容易であった。

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