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ドラゴンズ・ヴァイス  作者: シノヤン
参ノ章:激突

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第83話 会合

「へぇ~。解散ねえ」


 そろそろ行こうかと思っていた龍人とレイだが、結局それは叶わなかった。自分達が屯していた喫茶店で休息にのめり込んでいたところ、しびれを切らした颯真がわざわざ出向き、何があったのかを教えてくれたのだ。当然だが、龍人達がいつまで経っても来てくれなかった事に対して彼は少し苛ついていた。


「ああ。翔希にも連絡を取って、早ければ今晩にでも解散するように働きかけてみるってさ。誰かさんたちが呑気にコーヒー啜ってる間に、ぜーんぶ話がまとまっちまった」


 颯真はムスッとしたまま二人を見つめる。レイは気にも留めずにソファで股を大開きにしたまま、アイスコーヒーをストローから吸い上げていた。やはり熱いのは嫌いな様子である。


「そないガミガミ言わんでもええやん。休憩せえ言うたのアンタやで」

「”少し”って単語の意味を広辞苑で調べてこい間抜け」

「広辞苑って嘘やろアンタ。今時広辞苑とか誰も使わんで」

「じゃあネットで調べろ、屁理屈毛玉女が。話を戻すがどうする ? 付き添って行ってやるか ? 流石に心配だと思うんだが」


 レイを罵りながら颯真は尋ねるが、龍人は本日五杯目のパフェに手を付け始めたまま黙っていた。


「でもあいつ、自分でけじめを付けるって言ってたんだろ ? 俺達がついて行って大丈夫かな」


 スプーンを置いた龍人が颯真の方を見返す。


「そこはコッソリだよ、コッソリ。あんな犯罪者集団の事だ。逆上して何しですか分かったもんじゃねえ。俺達三人なら多少の事は抑えられる筈だろ。いや、弥助さんも入れるなら四人か」

「ちょいちょい。待ちや。何でウチまで一緒に行かなあかんねん」


 自分達で兼智を見守ってやらなければ。颯真は考えを述べるが、すかさず異を唱えてきたのはレイであった。ついでに通りがかったウェイターに対して、コーヒーのお代わりを要望する。


「おいおい風巡組の壊滅と、”果実”を流通させている連中を突き止めるんだろ ?」


 それじゃあ話が違うではないか。そう思った龍人は目を丸くした。


「せやけど風巡組無くなるんならもう起きんやろ。ウチはともかく、他のガキ達は引き揚げさせてくれても構わんのやないん ?」

「そこを見極めたいから、もう少し付き合って欲しいんだ。自分達の収入になってくれるかもしれない連中が足を洗うってなったら、風巡組の背後にいる連中だってもっと強く出張ってくるかもしれない。上手く行けばまとめて締め上げられるかも。それに…弥助さんは別の用事で動き回ってるし、一緒に来てくれるかも分かんないんだ。街を見張っておく連絡係も含めて、人手は多い方が良い。安心して頼れる奴がな。俺達は少なくとも…お前をそういう逸材として見ている」


 龍人の説得はある程度の功を奏したようだ。レイは暫し清聴していたが、やがて満足そうに笑みを浮かべ、ソファに背中を預けてふんぞり返る様にくつろぎ出す。


「はあ~…しゃあないな~…そこまで褒めて頼ってくれるんなら、ウチも期待に答えんとあかんわ。いやいや、ホンマモンの有能っちゅうんはやっぱ辛いわ…か~っ、参ったなあ」


 ちょろい。軽く、それも大した語彙も使わず、適当に褒めただけでこのザマである。自己肯定感が低いのか、単純な思考しか出来ない素晴らしく気楽なオツムなのかは知らないが、いずれにせよ羨ましい。だが有難い。少なくとも自分達を裏切る心配はなさそうだ。


「…戻って準備すっか」


 やる事が決まってしまえば自然に体も軽くなる。龍人は背伸びをしてから席を立ち、伝票を持って動き出した。




 ――――嵐鳳財閥の敷地内部、会長である秀盟の執務室に彼は現れていた。


「こっちへ来い」


 応接用のテーブルに秀盟は手招きをし、弥助は言われるがままに向かう。ブランデーと果物、それとチョコレートが用意してあった。


「最近はツイてる。佐那どころか、まさかお前まで顔を見せてくれるとは」


 秀盟はグラスにレミーマルタンを注ぎ、向かいに腰を下ろしている弥助にそれを手渡した。


「観光のついでだ。まだくたばっていないようで安心したぜ」


 弥助は笑って見せると、勢いよく酒を口へ流し入れる。少しの間口内で酒を味わってから、ゆっくりと喉の奥へと運んでいき、完全に飲み込んでから一息ついた。


「佐那からはどこまで聞いている ?」


 どれから頂こうかと果物を吟味しながら、秀盟が弥助に尋ねてきた。


「”果実”がこの仁豪町で流通し出して、尚且つ供給源が仁豪御三家における財閥以外の二つの勢力…そのどちらかが原因の可能性があると言っていた。本当か ?」

「或いは、両方が関わっているかもな。だが財閥でも調べてはいるが、いつ見てもアレはこの世の代物とは思えん。奴らもあくまで手に入れた物を高値で売り渡しているにすぎんだろう…更に奥深いところに、”果実”を生み出している存在がいる筈だ」

「だろうな。商売を止めるのは結構な事だが、ほんの少しチンピラ共がいなくなった所で、また別の売人を立てるだけだろう。そもそも誰が何のために”果実”を作り出しているのか、そこを突き止めない限り意味はねえ。詳しい奴に会って、話を聞く必要がある」

「しかし、”果実”について知っている者となると、下手をすれば既にこの世には……待て。まさかお前…」


 秀盟はハッとしたように弥助を見る。彼はニヤリと笑い、注ぎ直した酒を再び一気飲みしてからグラスを置いた。


「この町から地獄に行く方法はあるのか ? 信長様に会う」

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