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ドラゴンズ・ヴァイス  作者: シノヤン
参ノ章:激突

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第67話 モノが違う

 「それなら… !」


 龍人は印を結んで武装錬成を出そうとした。が、それよりも早く佐那が接近し、間合いに入られてしまう。


「やべっ」


 武装錬成を慌てて止め、反射的に拳を出したのがマズかった。合わせるかのように彼女も正拳を突き出し、龍人の拳に当ててくる。砕けこそしなかったが強烈な痺れと衝撃が伝わり、拳を握っていた方の手が後ろへ弾かれる。胴体ががら空きになってしまった。


 正中線を中心とした五か所の急所、そこに対して佐那はほぼ同時と思えるような、尋常では無い速度で打撃を叩き込む。”幽生繋伐流・五手連葬”である。龍人が大きく吹き飛ばされ、地面で悶えている間に佐那は追い打ちを掛けに行こうとするが、それを遮るためにレイが襲いかかって来た。 鉄の爪での突きを佐那は焦る事なく躱し、距離を取って彼女を指で挑発する。


 お望みどおりにレイが挑む。武装した尻尾と鉄の爪、そして蹴りで攻め立てていくが、これが当たらない。手を当てて攻撃を逸らすといった芸当はするが、フットワークと体の向きを変えて攻撃を回避する。それだけに徹していた。真正面から受け止めてくれたのは最初だけである。再び距離を取られ、レイはもどかしさを感じながらも、僅かに息が上がっている己の姿を自覚すると、落ち着かせようと必死になった。間違いない。この女は体力切れを狙っている。


「…キレの良い舞踊・・ね」


 相手を煽った佐那が、そろそろこちらからも動いてやろうとした時だった。斜め上からの殺気を感じ、直後に自分のいた場所から飛び退く。弾丸が地面に突き刺さっていた。


「やっぱ、飛んじゃうよな」


 その姿を見た颯真がニヤけた瞬間、弾丸が破裂して辺りに冷気を炸裂させる。いかに彼女といえども、炸裂した冷気の範囲からは逃れられない。さらに言えば、飛び退いた事で自らの体を宙に浮かせてしまった。質量の無い攻撃を、何の抵抗も出来ない無防備な状態で喰らえば無事では無いだろう。レイが間違いなく巻き込まれてしまうのは気の毒だが、何でもアリなルールである以上は仕方のない犠牲である。彼女に一泡吹かせられれば問題ない。筈だった。


 佐那は霊糸を後方に向けて即座に繰り出しており、離れた先にある鉄骨に絡みつけている。そして絡みつけた霊糸を掴んだまま、自分の体を引っ張らせて脱出したのだ。周辺をスクラップで囲っているせいで障害物だらけなこの場は、佐那にしてみれば脱出など容易であった。間一髪で冷気から逃れた佐那は、脱出をしながらも印を結び、地面に着地してから両手を地面に叩きつけた。


「”追蛇柱”」


 地面を手で叩いた後、地中から無数の触手が飛び出して来た。以前にショッピングモールでも使った技だが、それを応用した亜種とも言える技である。先端が蛇の頭部の様に変化し、口を大きく開けて颯真へと攻撃を仕掛けてきた。縦横無尽に逃げようにも、蛇たちは器用に絡むことなく彼を追尾してくる。これでは銃を構える余裕すらない。


「死んだふりは結構。早く来なさい」


 佐那が龍人を見て言うが、これが死んだフリに見えるわけないだろうと思った龍人は、何とか跪くようにして置き上がってから睨みつけた。自分の息が荒くなっている。おまけに痛い。顔、胸、腹にまだ強烈な鈍痛が残っている。吐き気さえした。普段の彼女のやり方からして、これでも死なない程度に手加減しているのだろう。だからこそ絶望感があった。力技で突破してくるというよりは、こちらの隙を見抜くのがつくづく上手い。


 中々立ち上がろうとしない龍人へ、佐那がとどめを刺しに向かおうとする。だが彼女は辺りが暗くなっている事に気付き、すぐに歩みを止めて上を見た。黒擁塵が宙に出現し、そこからレイが姿を現して落下してきた。逆手で刀を握り、佐那に目がけて突き刺そうとしてくる。レイは自身が現れたのと同時に、佐那の足元にも黒擁塵を出現させ、佐那の動きを封じた。ぬかるみにハマったような感覚に陥って、自分が回避のしようがない状況に置かれたのだと佐那は即座に理解する。それを好機と見たのか、痛みをこらえながら龍人も駆け出し、開醒・尖凝式で腕を強化して佐那へ殴り掛かる。レイが刀を刺し、怯んだ隙に自分が殴る。そのつもりであった。


「…ハァ」


 その溜息の直後、二人は一斉に吹き飛ばされた。ほんのわずかの間、眩い閃光と稲妻が迸ったのだが、龍人達が体勢を整える頃には消え失せており、黒擁塵から佐那が抜け出して一息ついている。僅かに呼吸が乱れていた。


「取りたくないわね、歳は」


 佐那の得体の知れなさを前にしても尚、二人は怯むことなく立ち向かおうとするが時間はそれを許さなかった。突然佐那のスマホがけたたましいアラーム音を奏で、彼女は二人を制止させて確認する。


「時間切れ」


 残念そうに言ってから、佐那はスマホをポケットにしまい直し、霊糸で遠くに置いていたジャケットを絡め取って再び羽織った。同時に霊糸で作った蛇たちに巻き付かれ、拘束された状態のまま颯真が佐那の元に引き寄せられる。



「まず颯真、狙撃能力については良し。でも遠距離から高みの見物を決め込んでるからといって油断をしないで。それと銃器ばかりに頼り過ぎず、しっかり相手の得意不得意に合わせて武器装備を変える事。ちゃんとCQBについては復習してる ?」

「してるけど、アンタ相手に近づく度胸ねえよ」


 颯真を解放してから佐那が始めたのは批評であった。この様子だと龍人達も例外では無いだろう。


「次に渓村さん」

「レイでええよ」

「分かったわ。レイ…連続攻撃を途切れさせずに仕掛けられるだけの持久力と、奇襲の仕掛け方は悪くない。でも武器を壊された時の反応を見るに、想定外のアクシデントに弱い。常に最悪の事態を頭に入れた上で動く事を覚えなさい」


 そして彼女は龍人の方を見た。次は自分の番かと、龍人は辟易したような態度で突っ立っている。


「龍人。以前に比べれば繋伐流の技にもだいぶ慣れてきたわね。尖凝式を実戦レベルで使えるようになった事は、私も心底驚いてる」

「そ、そう ?」

「だけど基礎的な格闘術についてはまだ訓練が必要ね。特に、何でもかんでも真正面から相手しようとする癖をやめなさい。何事であろうと、必ずしも無理に受け止める必要は無いの。それと体の鍛え方も足りない。はっきり言って…素手の私にすら張り合えないのなら、裂田亜弐香に勝つのは諦めた方が良い」


 案の定、ボロクソに言われてしまった。持ち上げて落とすタイプの感想は、言われた側にしてみれば感情の落差も相応に激しくなるのでやめて欲しいのだが、ちゃんと褒めてくれるだけマシなのかもしれない。ひとまずはそう思っておくことにした。


「で ? 俺達は文句言われて終わり ? 仕事に行ってる間、どうすればいいのか分からないのに自主学習してろって ?」


 龍人は若干不貞腐れていたが、佐那は彼を見て少し笑う。


「安心しなさい。そう言うと思って、アメリカから助っ人を用意してる。きっと力を貸してくれるわ。何せ…あなたの先輩だもの」

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