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ドラゴンズ・ヴァイス  作者: シノヤン
肆ノ章:狂宴

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113/116

第113話 狙われたもの

「いいか龍人。確かにお前は中華がいいって言ったな。そりゃ相手方が好きな食べ物要求したんだ。お前が食いたい物を正直に言うってのは大事だよ。何でもいいとか曖昧な回答して、代わりに選んでくれた別の誰か側に責任押し付けようとするなんてのは、他力本願且つ他責思考の分際で美味しい思いだけはしたいなんていう最低な行為だ」

「せやな。やけどまあ、状況が状況やしな。店なんか全然開いてないやろうし、温室以外何も知らん、周りが全部用意してくれる箱入り筋肉メスゴリラがその辺把握してなかったっちゅうのも、まあしゃーないわ。結果的にこっちが店選ぶとしてもな。でも、それ差し引いても…」


 そこまで言って颯真は隣にいる龍人を、レイは隣に座っている亜弐香を見つめた。ストランドの奥に備えられている、大人数用のボックス席で。その隣では、義経もくたびれた様子で眠っていた。開いている店が見当たらず、泣く泣くここへ駆け込む羽目になったのだ。


「ここじゃなくても良かったろ」

「ここじゃなくても良かったやん」


 二人から一斉に言葉が出て来るが、龍人は特に気にせずに大皿に入った麻婆豆腐をかき込んでいた。米は無いが、単品でも中々行ける。花椒がよく効いた好みの味であった。亜弐香も同様に、大皿に入った青椒肉絲へがっついている。


「しょうがねえだろ。受け入れてくれそうな店ここしかなかったし」


 空いた大皿が積まれているテーブルの中央へ、龍人は食べ終わった食器を再び積んだ。亜弐香の方もちょうど食べ終わり、皿をその上に重ねていく。


「もしかして今、僕は悪口言われた感じ ?」

「おお、気付くんやな。脳にもちゃんとプロテインとステロイドが足りとるようで何よりやわ」

「ステロイドはしないよ。体に悪いじゃん」

「妖怪に健康もクソもあるかい。アホか」


 この二人を同じソファに座らせたのはマズかったか。なるべく亜弐香の隣に座りたくないからと押しつけた結果、早くも険悪な雰囲気が漂い始めた事を龍人は後悔していた。颯真にも促してみたが、「何をハラスメント認定されるか分かったものではないので、あまり女性と同じ側に座りたくない」という非常に警戒心の強い反発があったためにこうなってしまった。カウンターや厨房ではアンディを始めとしたストランドの従業員が調理と仕込みに張り切っており、今更ながら申し訳なさも感じてしまう。


「アンディさん、何か無理言っちゃってゴメンね」

「気にしないで~。お金貰えるなら何でもいいから。あ、でも料理だけは自分で持ってってね」


 この気さくさにはつくづく助けられてばかりである。龍人はカウンターへと向かい、回鍋肉と天津飯が乗った皿を両手に席へ戻って行く。この短時間でどうやって作ってるかはいささか謎であったが、恐らくあまり考えない方が良いだろう。どうせクッ〇ドゥである。


「さて、話を戻すが…友達になりたいって言葉の意味と、お前が知ってる情報って何だ ?」


 龍人は皿を少し横にずらし、烏龍茶の入ったグラスを片手に亜弐香を見た。


「そのまんまの意味でもあるし、利害関係の一致による同盟っていう意味もある。功影派の連中に対抗したい」


 亜弐香は既に三本目の酒瓶…それもウォッカに手を付けながら語り出した。功影派の名前を聞き、レイも神妙な面持ちで亜弐香の方へ首を向ける。


「まず前提として、”終末の四騎士”という存在が問題になってくる。聞いた事は…ないよね、たぶん」

「今初めて聞いた。なんか厨二病って感じだな」

「名前だけ聞いたらね。この世界に終末をもたらし、復讐を成し遂げたいと考える者達…話で聞いた限りでは、彼らはそういう存在なんだと思う」

「お前は直接会ったわけじゃないって事か ?」

「亜空穴の内部…こちらの世界との繋がりが途切れない取引場所があって、そこで彼らと姿を見せずに話をした事があるってだけ。籠樹君の付き添いで。亜空穴は様々な世界線と時代が入り混じっている空間っていうのは知ってるよね ? …内部の詳細はよく分からないけど、彼ら四騎士と呼ばれる連中はその特性を利用して、この世界の様々な時代から集められた存在みたい」


 何やら壮大な話になり始めたが、龍人達の意識は取引場所という単語に対する疑問に集中していた。ここまでの経緯からして”果実”の事なのは確実だろう。


「その取引場所ってのはあれか ? もしかして”果実”専用 ?」


 ストローで飲んでいたエナジードリンクを置き、颯真が更に尋ねた。


「そう。最近、仁豪町で流通していた”果実”については、彼らに融通してもらったものだね。摂取した者を暗逢者という未知の怪物に変える。籠樹君は最近とうとう、現世の方でも流し始めたみたいでさ。たぶん世界各地で異常な現象として報告されつつあるんじゃないかな。そういう妙な動きがここ最近どんどん激しくなってきて…僕としても彼等とは少し距離を置きたくなってきた。今はボディーガードで済んでるけど、このままだと次に何を頼まれるか分かったものじゃないし」

「せやけど、理由が分からんな。その四騎士いうヤツらは、そんな事して何の得になるん ? 今ん所、ただ辺りをメチャクチャにしとるだけやで」


 亜弐香の説明について、レイはどうも腑に落ちないのか首を傾げいている。その場にいる者達は皆、同じ心境であった。こちらの世界が荒らされたとして、どんな利益になるというのか。


「利益とかの問題じゃなくて、そもそもメチャクチャにする事自体が目的…とか ?」


 意外な事に、その疑問に意見を提案したのはアンディであった。追加で作ったらしい大量の焼き餃子を、大皿にして二つ分も持ってきてくれたのだ。


「ほら、世界に終末を~とか復讐したい~とかって話なら、世界そのものをそうやって荒れさせるのが目的って線が一番じゃない ?」

「アンディさん。俺も一瞬それ考えたけどさ、それならもっと効率の良いやり方すんじゃねえかな。ただ”果実”ばら撒いて、周りが化け物になって暴れてくれるのを待つって、どうものんびりしすぎっつーか…大体それで生まれた暗逢者に対処できる奴って結構いるし、ホントにやる気あんのかって感じすんだよな」


 龍人はすかさずアンディに異を唱え、再び話は沈黙へと行き着く。四騎士とやらが語る野望と手段が一致しないというこの謎だが、思わぬ方向から糸口が現れた。


「ふぁ~…世界の終末。それそのものがハッタリで、その対処をできる者を呼び寄せて優先的に始末するつもりという可能性は ?」


 寝起きに欠伸を一つかましながら、義経がテーブルへと歩いてくる。


「ハッタリ ?」


 龍人が目を丸くした。


「復讐が個人に対してのものという事であれば、そういう考え方もできる筈だ。世界の終末という大層な言葉で不安を煽り、真の標的…つまり復讐をしたい相手を呼び寄せる。そいつが止めようとするか、加担しようとするか…いずれにせよ必ず姿を見せてくれると踏んでくれているからこそ、わざと足の付くような真似をしてでも、自分達の素性と目的を流布させている。そしてそいつをおびき寄せた上で排除し、邪魔者がいない中でゆっくりと世界に終末をもたらす……どうだ、悪くない推理だと思わないか ?」

「成程…確かにアリやな。ああでも待って。そうすると、またおかしくならん ? おびき寄せるにしても、何でわざわざ暴れる場所に仁豪町を選んだんや ? 復讐したい相手が仁豪町にゆかりがあるとかやないと、成立せんやろ ? 」

「確かに、お前達の誰かが四騎士に縁があるとは思えんし、かといって俺が生きた時代は、この仁豪町が生まれるより前だ。恨むにしても、もっと別の場所を狙うだろうな。誰かいないのか ? この仁豪町に危機が迫る事で動揺し、行動を起こしかねない者…町の設立に関わった御三家か………待てよ」


 義経とレイの会話の中で御三家の名前が挙がり、それ以外の可能性を考えていた時に全員が固まった。誰もの頭によぎったのだ。仁豪町に何かあれば真っ先に動く。そして必要とあらば、迷いなく暗逢者や四騎士と対峙してくれるであろう存在の事を。


「……老師 ?」


 そう呟く龍人の声は、微かに震えていた。


「なあ、老師や御三家が標的だったとして…あの人たちが表立って動かないといけない状況ってどんなのだ ?」


 龍人が颯真へ尋ねると、彼も少し考えた上で焦りを感じているように顔をしかめる。


「取り返しのつかないレベルで、大惨事が起きるとか…それこそ、言いたくないけど滅んじまうとかじゃねえのか ? すぐに伝えねえと」

「ウチもやな。どの道黙っといてもしゃあないわ。龍人、老師様への連絡は頼めるか ?」

「ああ」


 そうして三人が語り合う姿を見ていた亜弐香だったが、やがて小さく頷いて立ち上がる。そして財布をアンディに手渡した。


「お釣りはいりません。ありがとうございました…どうやら、君たちに話して正解だったみたい。証拠はないにしても、僕も色々と腑に落ちた部分がある。まあそういうわけで、僕は君達と組みたいと思ってるから。籠樹じゃなくて僕を選んでくれることを祈ってるよ」


 そのまま店を出て行こうとする彼女だったが、不意にこちらへ振り返ると、先程渡した財布に向かって指をさした。


「財布の中、龍人君用に連絡先入ってるから。もし気が向いたら声かけて」

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