『反転』
『反転』
㈠
神が許すところの、神が許す限りにおいて、俺は世界を反転させて、生き。問題ないようとする。問題ないよ、そう一人で呟くも、回答のない部屋のドアを見ていると、ふいに、憤怒の念が沸き上がり、しかし、どうしようもないと、諦めるに至る。
詰まる所、許されることが、自分で自分を保ち、実行できることとは、まるで異なるということなのだ。何を言っているんだろう、自分でもそう思うのだが、反転について述べようとして、内容が反転してしまったかの様である。
㈡
とにもかくにも、生きねばならぬに、という命題において、その反転というのは、非常に俺にとって重要であった。物事の表裏において、それが実在すると分かっていても、その原初的根幹を捉まえねば、意識は遠のくばかりである。
反転、反転、俺は何がしたいのだろう。天下を取りたい、そんなことは思わない。しかし、俺は俺として、一生を全うし、天国へ行きたい。それだけである、それだけのために、小説を書いて、物事を反転させようとしているのだ。
㈢
つまらないなあ、と声が出たが、何、目標さえ立てれば、それに向かって生きていく俺じゃないか、と思うのではある。しかし、その速度は遅延し、ぐうたらと、呼吸を始めるや否や、また、眠りに入ってしまう、という訳なのだ。
それでは、物事を反転させることはできまい。確かにそうだ、しかしそもそも、目標が至極曖昧であるから、こうやって、小説を書いていくくらいしか、脳のない俺なのである。光はまだ照らない、昼に日光があるのに、俺には、本当の光はまだ照らない。




