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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

山賊を退治したら国が滅びた話。

 俺の名前はラウール。

 自分で言うのも何だが世界最強の戦士だ。


 俺は一人で賞金首を退治して生計を立てていた。

 そしたらいつの間にか悪人殺しと呼ばれるようになっていた。


 正直呼び名なんてどうでも良いが、おかげで金に困る事はなくなった。


 俺の噂を聞きつけた奴らが色々な仕事を持ってきてくれるようになったからだ。




 そんな俺は山賊退治の依頼を受ける為にとある国へとやってきた。


 その国は好戦的なビーカラミス帝国と、商業大国のレヤアニル共和国の堺にあった。

 名前はユテーラ王国。規模は小さいが屈強な騎士団を擁しているので独立を保てているらしい。


 俺は依頼者がいる山の麓の村にたどりついた。

 村に入ると歓迎されたが、軽くあしらっておいた。


 そして俺は依頼者である村長と対面する事になった。


「今回の依頼は近くの山にいる山賊の退治。これで間違いないな?」


「はい、その通りでございます」


「一つ疑問があるんだが、どうして騎士団じゃなくて俺に退治を依頼したんだ?」


「勿論騎士団にも何度も陳情はしました。ですがことごとく却下されたのです」


「それは妙な話だな。騎士団はどうして山賊を放置しているんだ?」


「恐らく騎士団にとって、山賊は必要な存在だからです」


「どういう事だ?」


「この山はビーカラミス帝国とレヤアニル共和国を結ぶ交易路になっているのです」


「ああ、それは知っている」


「そして、その交易品を狙って山賊が出没するのです」


「ああ、それも知っている。一体何が言いたいんだ?」


「ここからが重要です。騎士団は山賊から商人を護衛する代わりに大金を貰っているのです。だから騎士団にとって山賊は倒してはいけない存在なのでしょう」


「なるほどな……。でもどうしてあんたらは俺にその山賊の退治を依頼してきたんだ?」


「これは私の推測ですが、恐らく山賊と騎士団は裏で繋がっています。だから山賊は騎士団がいない所ではやりたい放題なのです」


「やりたい放題?」


「ええ、この辺りの村を襲って金品を奪っていくのです。ですが交易路にある村だけは無事らしいのです」


「それは酷い話だな……」


「このまま奴らの好きにはさせておけません! 悪人殺し様、どうか我々をお救いください! お金ならできる限りお支払い致します!」


「わかった。この依頼受けようじゃないか」


「ありがとうございます! 悪人殺し様!」




 という訳で俺は山賊を倒す為に山へと向かった。


 そして山賊に狙われる確率を上げる為に大きな荷物を荷車で運び商人のふりをした。


 すると狙い通りに山賊どもがやってきた。

 数は8人ほどだろうか、まあこのぐらいなら余裕だな。


 そう思っていると、山賊の一人が話しかけてきた。


「おいそこのお前! 死にたくなかったら荷物を全て差し出せ!」


 どうやらこいつがこの中では一番偉いみたいだな。

 そう判断した俺は変装を解き、そいつ以外を瞬殺した。


「さて、残りはお前だけだな」


「ひ、ひえっ……。命だけはお助けを……」


「ならお前たちのアジトに案内して貰おうじゃないか」


「は、はいわかりました!」


 男がそう言った瞬間、俺はそいつの首を切り落とした。


 俺のスキル『嘘看破』でそいつが嘘をついてるとわかったからだ。


「やれやれ、面倒な事になったな。まあ地道に探すとするか」


 それから俺はスキル『周囲探索』を使い山中を調べ回った。


 すると魔法で岩に偽装された隠し通路が見つかった。

 どうやらここが山賊のアジトへの入り口のようだ。


 俺はスキル『罠看破』を使い罠が無いかを調べた。

 その結果、罠はない事が分かった。


「ふむ。罠も見張りも無しか」


 俺はそう呟きながら隠し通路へと入った。


 隠し通路は一本道で、距離もあまり長くは無かった。

 そして通路を抜けると、そこには大きな砦があった。


「ほう。思ったよりも立派なアジトじゃないか」


 俺は迷わず弓矢を取り出し、砦に向かって火矢を放つ。

 すると火の手があがった砦から山賊どもが慌てて出てきた。

 そこをすかさず矢で撃ち抜く。


 おかげでかなり人数を減らす事ができた。

 矢が尽きたので武器をナイフに持ち替え、残った山賊どもに近づく。


 山賊どもの攻撃を避けながら、急所にナイフを突き刺す。

 気がつくと、辺りの山賊は全員地に伏せていた。


 俺は倒れている山賊にトドメを刺しながら砦に近づく。

 火は治まっていたので中に入ったが、誰もいなかった。


 これ幸いと金目の物を根こそぎ頂く事にした。

 元は誰かから奪った物だろうが、知ったことではない。


 丁度荷車もあったので積めるだけ積んで村へと戻った。




 村に戻ると盛大に歓迎され、パーティーまで開かれた。

 悪い気はしないので参加してごちそうを頂く。

 うん、なかなかの味だ。


 翌日。村長から報酬を頂いた俺は村を後にした。


 報酬は大した額ではなかったが、

 山賊から頂いたお宝もあるので来た甲斐はあったな。


 俺はそのままユテーラ王国を出て、隣のレヤアニル共和国に入国した。


 そしてお宝を闇ギルドで売りさばいた。

 何でも買い取ってくれるので、とても助かっている。

 かなりの金額になったので、これでしばらくは安泰だな。






 それから数ヶ月後。


 俺が山賊を退治したユテーラ王国が滅びたという話を聞いた。

 なんでも隣にあるビーカラミス帝国に攻め込まれ、あっさり滅びたらしい。


 恐らく山賊が退治された事によって騎士団の商人護衛の収入がなくなり、戦力を維持できなくなったのが原因だろう。


 要するにあの国は山賊の存在によって隣国から守られていたという訳だ。

 なんとも皮肉な話である。


「まっ、そんな事はどうでもいいか」


 俺は特に気にする事もなく、次の依頼者の元へと向かうのであった。


 おしまい。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 必要悪というのはありますからね。 勿論、犠牲とされる川がそれを納得できる筈もありませんが、為政者は小事を切り捨て大事を為すものですからね。 まして軍事は、平時においては疎まれますから、…
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