市場
今一銭も金は持っていない。
ワイシャツと黒ズボン、そして上着を着ただけだ。
一応財布も持っている。
革の財布だから値はつくのだろうけど、物価がまだわからない。
遠くからにぎわう声が聞こえてきた。
その声を頼りに細い道を歩いていく。
ついに大通りに着いた。
予想通りそこには多くの店が並んでいた。
食べ物から衣服まで、様々なものが売っている。
並べられた果物に目を通す。
通貨は…なんだこれ?
異世界だから当たり前なのかもしれないが、見たことのない表記だ。
何とも言えない形状をしている。
何語でもないような文字。
「あれ…ああ、なんだっけ?」
おもむろに声に出して悩んだ。
「お客様、どうしました?」
店主に見える女性がこちらによって来た。
「ああ、通貨の単位をド忘れしちゃってね。これがなにかわかるかい?」
「『フラン』ですよ。」
これがフラン?
僕の記憶にあるフランは「F」みたいな記号だったのだけどね。
たまたまなのかな。
「ああ、そうだ!フランだフラン!ありがとう、思い出したよ。」
「それよりお客様、このリンゴ新入荷なのですよ。おひとついかが?」
「いや、遠慮していくよ。あいにく今腹がいっぱいでね。また次買うよ。」
「ぜひいらしてくださいね!」
随分軽々と客を帰らせたね。
もし商売に困っているのなら、意地でも売りつけると思うのだが、それほど困ってはいないのだろうか。
それにしても、フランかぁ。
「平和にしろ」という命令がもし革命の発生を指しているのなら、嫌な予感がする。
皇帝が殺されたり?
だれによって?
市民?
なぜ?
何の根拠もないが、フランがフランスフランを意図的に指しているとして考える。
フランス革命と一緒であると仮定すれば、市民階級の人々によるかな。
市民階級というより、ブルジョワジー?
フランスではないと仮定すれば、プロレタリア革命タイプ?
ロシア革命の前のような不況はあまり見られないが、この区域がたまたま金持ちの集まる市街である可能性もあるな。
はたまた民主主義ができていて、首脳が暗殺されて、それで平和が打ち破られたり…?
それを止めろという可能性も…。
分からんな。
政治の仕組みがわかる書物のようなものがあるのなら良いのだが…。
とりあえず本屋に行ってみよう。
そもそもあるかな?
【注】
ブルジョワジー……一定資本を保有する市民階級のことを指す。資本家とも。
プロレタリア革命……一般的には資本主義から共産主義を目指した革命のことを指す。ブルジョワジーの根絶を図った。




