疑問
扉の外には、民家の風景が広がっていた。
僕が開けた扉は、こっちから見るとただの民家の木製ドア。
オマケに少し傷がついている。
ひとまずは様子見だ。
道の広いところを選びつつ、人々の集まる市場などを目指す。
そこまで続く街並みは、レンガ造りの家が殆どで、あとは木の家だ。
鉄の柵がついている広い庭の家もあれば、土地に家が一戸だけ建っているものもある。
時代感を除けば、現実世界とは何一つ変わらない。
道に小さな銀色のコインが落ちていた。
何かの役に立つだろうと拾って胸のポケットに入れておく。
景色などを含め、ここは何か近代ヨーロッパのような、産業革命後の街に似ていた。
もしここがどこかの国ならば、おそらくは鉄砲や蒸気機関も発明されていて、場合によっては軍隊を持っているであろう。
もっとも、それができる環境にあるかどうかは分からないが。
おそらくそれで間違いはないだろう。
「世界を平和にしろ」
こんな命令が下るというのなら、戦争や革命が起きている可能性はとても高い。
街には様々な人がいる。
人というより、人間ではない長い耳のエルフもいるようだ。
何もおかしくない。
そう思っていたのだが、ひとつ疑問点ができた。
どうして街には「男が居ないのか」?
住人の姿はあるし、それも1人2人では無い。
数十人は見た。
そして僕と目が合い、「こんにちは」と挨拶するものもいた。
もし最初からこの世界に男なんて存在しなかったとするのなら、僕を見た時は少なからず怪奇の目線を向けるはずだ。
でもそれらは一切なかった。
そして、男女で住居地域を分けているのなら尚更だ。
ならばおそらく、男がみんな兵役を担っているか、働きに出ているかだな。
後者ならば市場には少なからず男がいるはずだ。
この世界がどういう仕組みなのかを知るためにも、まずは市場に行かなくては。
僕は少し歩くペースを上げた。