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ちっぽけな一日

作者: 臼木潤二

『今日死のう』



私あるいは僕は朝、電車に揺られながらそう思う。

車窓から入る朝日が空気中のゴミと共に自分のことを照らしてきた。暑苦しい満員電車、人との距離が近ければ近いほど苦手にも関わらず、この箱の中では一人のちっぽけな願いは届かなかった。


最寄りの駅まであと数駅。

今日は休み明け初めての学校だ。

9月1日この日が何の日か皆はご存知だろうか。最も自殺者の多い日と言われている。


別に今日が9月1日というわけではないのだが、私あるいは僕は、冬休み明けのこの登校時間に、そう考えてしまった。


友達と呼べるかわからない人間あるいは肉塊との会話、黒い板へと打ち付けられるあのチョークあるいは脳から溶けだす白い個体、それを一心不乱に白いノートに綴っていくあるいは書かされていく。


そんなダル絡みの中に、私あるいは僕は毎日の如くその場所に決まった時間に行かなければならない。


それならばやめてしまえばいいだろう。

そういう奴もいるだろう。

もっと頑張ろうよ!

なんてゴミみたいなことを言う奴もいる。


やめるなんて選択肢は基本この世の人にあってはならない選択肢なのである。それが許されるのであれば人はどれだけ怠惰になるだろう。

自分にムチを打ち、ケツを叩き、我慢してまでもその行為を死ぬまであるいは終わるまで続ける。


一度やめてしまったもの、壊れてしまったもの、それはもう二度と戻らない。

機械なんかでもそうだ。

部品を変えて、直したところでそいつは元の姿ではない。元の姿であっても、中のものが別物であろう。

人間でも同じことが言えるであろう。


そんなくだらないことを考えていると、車内に最寄りの駅に着く音声が流れる。


絶望とともに扉の前まで向かう。



扉のが開き、一斉に人が降りる。この瞬間が、登校時間の中でもトップクラスのストレスを感じる。


学校に行くまでの道に私あるいは僕のお気に入りの場所がある。

そこまで少し早めに歩いて向かう。


向かう先は橋の上だ。

橋の先に学校があるなんて珍しいかもしれないが、そんな学校なので仕方がない。

少し渡るのが面倒臭いがこの景色がものすごく好きだった。


橋の柵の上に立ち景色を眺め、後ろの方で肉塊共がチラリとこちらに視線を向けてきた。


そんなものを気にせず、空気に体を預ける。


ふわりと浮く感覚が、とても気持ちがよかった。

が、直ぐに地に着いてしまった。


少し残念だったが、何も考えず心は学校に向かうことを決めていた。

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