表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/6

〜 春風と小悪魔 〜 第二話

 †GATE2 春の小悪魔


 夜空の星が宝石の様に輝きを放ち、夜風が程良く肌を刺す夜に宿の一部屋では密談が行われていた。


「それで私のところに来たのね?」

 ティアナがシオンの様子をチラッと窺がった。

 暫らくシオンを観察する様に見た後……。

「いいわよ。その話乗ってあげるわ」

 シオンの容姿を見たティアナが微笑みを見せた。

 

 乙女の直感がティアナのシオンを見る目に、ただならぬ何かを感じたのかアイナはティアナの耳元で呟いた。

「なに、企んでるですかぁ?」

「企んでるのはアイナでしょ?」

 「そうですぅけど、違うですぅよ」

「何が違うのよ」

 小声で話す二人にシオンが尋ねた。


「何、二人でこそこそ話してんだ」

 アイナはティアナの手を取ると立ち上がり部屋の外に出ようとした。

「ちょっと、きやがれがれですぅ」

「どこ行くんだ?」

 二人にシオンが尋ねた。

「おしっこですぅ」

 言い残すと、すたすたと部屋を出様とした。

「ちょ! 違うからね。シオン! アイナ、レディなんだからせめて『お花を摘みに』とか言いなさいよ」

 ティアナが慌ててアイナに言った。

「夜に花摘みて……おかしいですぅ」

「そんなの分かってるわよ! 慎みよ! レディの慎み」

「なんだ、連れションか」

「シオン! あなたまでぇ」

 御立腹のティアナの手を引きアイナ達が部屋を出て行った。


「でもよぉ。そんなんで上手くいくのか?」

「アイディアはいいと思うよ。あの公爵様は自分の娘を助けてくれた人が困ってるのをそのままにはしないよ」

「そんなに上手くいくもんかなぁ」

 シオンが疑いの交じる声で首を傾げた。

「そりゃ、なんかくれるかもしんないけど、そんなんで屋敷に置いてくれるのか?」

「助けただけならそうかも知れないけど剣で魔物を倒せば話は別だよ。そんな強い剣士なら自分の旦那様もご自分の軍に欲しくなるよ」

 シオンは以前ランスから貰った剣を失っている。

 フィノメノンソードがあるのだが、使い方すら分からない。それどころかソードなのかも怪しい。


「だから、軍人になるなんて嫌だてぇの」

「魔物を倒した程の剣士なら、公爵様直轄の衛士にして貰えるかも知れないよ」

「でもよ。剣も無いしどうするよ。フィノメノンソード刀身ねぇし」

「フィノメノン使えばいいでしょ……あぅ、使えないかも」

 鬼妖精が眉間に皺を寄せ言葉を続けた。

「お兄ちゃんの為に私が魔物に化けてあげる」

「俺、魔物なんてオークしか見たことねぇもの。違い分かんねぇよ。確かにお前が化けてくれるなら前もって何に化けるかと特徴を教えてくれたら解り易いけどな」

「竜なんてどう? 魔物の中でも最強の部類に入るよ」

「げっ! そんなのと闘えるかてぇのか?」

「だったら、何だったらいいのよぉ」

「知るかよ! どんなのがいるのかもしらねぇのに」

「なら、ランスに聞いてみなよ」

「どうなんだ? ランス」

 シオンが尋ねた。

「竜にしたら? 僕も魔物の事なんて詳しくは知らないけど母様に現在種は利巧だけど言葉は喋れないし僕の見た竜は見た目爬虫類みたいだったけど強そうだったよ」

「ばれるだろ? 一人の剣士が竜に勝つ事自体が怪しい」

「大丈夫だよお兄ちゃん! 私がゴーレム用意しといてあげるから」

 鬼妖精がシオンに微笑み掛けた。

「「それは名案だ」」

 二人は声を揃えた。

「お兄ちゃんにも出来る筈だよぉ。今は知らないだけ後、あの娘もあなたも」

「一対一、剣だけで竜に勝てる者は居ないからね。現在種といえ鱗は硬いそう簡単には剣の刃が通らないから、ゴーレムを使えば倒しても不思議じゃないよ」

「それもそうだね」

 ランスが頷いた。

「それより遅くないか? あいつら話詰ねぇと終わらねぇ」

 シオン達が話を聞いている時、部屋の外ではアイナがティアナに何事かを言っていた。


「いいですぅかぁ。シオンに手を出してはならんですよぅ」

「あら? どうして? 私結構シオン好みの男性よ。あの銀の髪に光が当るとほのかに淡いブルーが浮き出すの……とても幻想的で綺麗だし分からないけど、とても強そうなオーラが出てる感じがするの。引かれちゃうわ」

「だ、駄目ですぅ。兎に角シオンは駄目ですぅ」

 焦った様子でアイナが言った。

「シオンて妖精と意思の疎通が出来るなんてかなりの使い手なの?」

 自分もランス、シオンが魔法を使える様になっている事を他の誰にも話してはいない。これからも話すつもりも無い。

「シ、シオンは、ただの人間ですぅ。ほ、ほら孤児だったので寂しくてどこぞで幻獣の幼生を拾ってきて育てただけなのですぅよ、まったく根の暗い野郎ですうよぅ。だからやめといた方がいいですぅよ」

 アイナは声を震わせ言った。

「怪しいわね。ねぇアイナ、あんたシオンさんが好きなんじゃなの?」

 ティアナが目を細めた。

「べ、別に、そんなんじゃないですぅ。けど……」

 アイナは俯いて答えた。

「けど、なぁに?」

「その、あの、えっと……」

 アイナは口籠ってしまった。

 あの時、シオンがゴーレムと戦った時、シオンが生きていて嬉しかった。

 そしてとても愛しく思っえて自分も気付かない内に自然に唇重ねていた。

 でも、シオンは自分は本当に好きなのか改めて考えると良く分からない。

 シオンの持ち物のエッチな本を見てなんだか苛々したので燃やした。

 自分でもその気持ちが良く分からないのだ。

「と、兎に角シオンはダメですぅ。ティアナとは身分が違いますしシオンは何処かの外国人で平民ですし公爵家のお嬢様のお相手にするにはねぇ」

 しどろもどろになりながらアイナは言い訳をしていたが、ティアナの視線が怪しいものを見ている目になっている事に気付くと深く俯いた。

 アイナは今のティアナがしている様な目が嫌いだった。それが友達で悪意がなかったとしても……。

「部屋に戻るですよぅ」

 自分で呼んでおいてへんなのと思うティアナだった。

 

 部屋に戻るとシオンが苛立った様子で言った。

「おせぇよ。お前等えらく遅かったじゃねぇか。うん――」

 その先を口走る前にアイナの拳がシオンの顔面を捉えた。

「レディに向ってなんてこと言いやがるですぅかぁ」

「まだ、何も言ってねぇ」

「下品な事、口走りそうだったですぅ」

「二人共いい加減話詰めようよ。もう遅いし」

 ランスが呆れて二人に言った。

「鬼妖精に何に化けて貰うか、考えなきゃいけないしな」

 シオンが息を吹き返し言った。

「化ける? その妖精が? なんの話なの」

 不思議そうにティアナが尋ねた。

 ティアナに、まだ詳しく鬼妖精の事は話してない。

 シオンが幼い頃から飼っている妖精を使うとティアナには適当な事を言ってあったのだ。

 ランスはしまったと言う顔をした。

「ああ、竜に化けて貰い、ゴーレムも出して貰う」

 しかし、そんな事に気付いていないシオンが口を滑らせ言ってしまった。

 ランスは手を額に当て無言で嘆いたのだった。

  言ってしまったものは仕方ない。ランスが鬼妖精の事を話した。

 「かわいい妖精さん。宜しくね」

 ティアナが笑みを作り挨拶をした。

「でも、珍しい妖精ね」

「ち、珍種ですぅ」

 アイナが適当な事を言った。

「何にせよ凄いわ。妖精を連れてるなんて、益々シオンさんに興味でてきたわ」

 感激した様子でティアナが目を輝かせてシオンを見ていた。

「そ、そうなの? 妖精連れてるのって凄いのか?」

 目を輝かせ自分を見ているティアナを見て満更でもない様子だ。

 デレデレした顔をしているシオンを見ているとなんだか面白くない。

 (シオンの馬鹿)

 とアイナは心の中で呟いた。

 その話で夜も更け何に化けるのかは、鬼妖精に任せシオン達は明日からの長旅に備える事にした。


 クラウス公爵の領地までは、ログの村を越えログの北西にある。

 ラナ・ラウルの王都を通り抜け更に北に向い馬車で約七日程は掛かる所にクラウス領はある。

 アイナ達の計画ではフェリナスを出て暫らく進んだ街道の人気の無い所に出た所でティアナが鬼妖精がの化けた魔物にさらわせ、ログとの分かれ道まで同行するシオンがティアナを助け出す算段になっていた。


 竜では強すぎるし弱すぎれば公爵の護衛隊でも倒せてしまうので化ける対象は長生きで賢い鬼妖精の匙加減に任せてある。

 シオン達も何に化けるのかを知らないのだ。

 翌朝、クラウス公爵一行は北に向かい出立する。ログの村との分かれ道まで約三時間程で着く、その間に鬼妖精が化けたものとやり合う算段だが、いつ現れるかも分からない。

 今の場所は街からまだそんなに離れてはいない。

 暫し進むと辺りに草原が広がっていた。野には春を彩る花が咲き誇っている。

「綺麗ですぅ」

 アイナが頬を緩ませた。

「ほんと、綺麗だね」

 ランスも素直な感想を述べた。

「この大地に咲く花も生きているのですねぇ」

 アイナが微笑みを浮かべた。

 竜に化けて空を旋回していた鬼妖精がが一行の進路にいる生物を遠くに見つけた。

 鬼妖精が魔法で姿を変える。

「水と風の精霊よ我に流れしものを変え包め」

 呪文を詠唱すると一羽の鷹に身体を変えシオン達が乗る馬車に向った。

 

 馬車の中はシオンとアイナとランス三人だけだった。

 公爵とティアナはひと回り大きく豪華な馬車に乗っている。

 他の従者もそれぞれ、馬車に別れて公爵の乗る馬車を挟むかたちで乗っている。

  シオン達の馬車に一羽の鷹が飛び込んできた。

「うわっ」

 シオンとランスが驚く。

「ひぃや――」

 アイナも驚き何故か隣に居るランスではなく向かいのシオンに飛びついた。

 鷹が空座になっていたシオンの隣に降りた。

「び、びっくりした。なんだ鷹か」

 ランスが言った。

 アイナはシオンにしがみついたまま震えている。

「鷹だってよ」

 シオンがアイナに教えた。

「お兄ちゃん」

 

 鷹が喋た……。

 一同再び驚くが聞き覚えのある声だった。

「もしかして、お前か?」

「そうだよぉ」

 鷹に姿に変えた鬼妖精が答えた。

「打ち合わせと違うだろ」

「緊急事態だよ。良く聞いてこの先にコカトリスが居る」

「なんだよ。コカトリスて」

「厄介な奴だよぉ。こんなところで出くわすとはついてないよぉ」

「そんなに、厄介なのか? お前が言うくらいなんだから」

「人間にはね。私にはそんなに厄介じゃないけど」

「なんだよそれ。どう言う意味だ」

「いいから、まずこの一行を止めてコカトリスに気付かれなければやり過ごせるかも」

「下手に近付いて気付かれ暴れられたら厄介だよぉ。まず止めて。それから話すから」

 シオンとランスが公爵の乗る馬車に向かい走り駆け寄った。


 To Be Continued

最後までお読み下さいまして誠にありがとうございました。<(_ _)>

次回をお楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ