第3話 担い手は冒険者の職を得る
アルカナが村をでてからもう5年が経つ。突然だが今俺は一体の青いスライムを概念的な意味でいじくっていた。いきなりなんのこっちゃと言うと、まず俺の権能なる力が関係する。
『権能』、これは簡単に言って世界のルールに干渉して捻じ曲げてしまう異端な力。
俺の力で言うなら[担い手]。これは自身の持ちうる全ての才能を指定した才能に加算して更にその才能を最大限までに発揮できるという馬鹿げた力だ。これさえあれば基本的になんでも出来てしまう。
俺はこの力を使って【魔法生物生成】の才能を指定し、アルカナが村を出てから直ぐに魔法生物を生み出した。それがこのスライム。こいつは俺が全力を尽くした特別製なんだが、俺の全力と言われても分からないと思うからステータスを見てほしい。
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名前:なし
性別:不明
種族:魔法生物(スライム種)
状態:良好
干渉力:Lv5
固有:<吸収>
スキル:<物理耐性Lv5><再生LvMAX>
権能:<存在同化Lv->
称号:全種の原点
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このスライムは作成時にポテンシャルだけに全てを注ぎ込んだ事により全ての種族になれる可能性を持った進化するための生物となり、更に5年の月日を経て本来ならば先天的にしか持ちえない権能すら身に付けた俺の最高傑作。
こいつの権能は固有によって吸収した生物と同化する事で自身を進化させる能力。権能にしては弱いがルール干渉が強すぎるからこんなものだろう。
俺がこいつを作った理由は暇つぶしだ。アルカナが居なくなって俺も働く事にはなったけれど子供は俺一人で空き時間のやる事がなかったのでなんとなくで作って遊んでいた、ただそれだけだ。
そんなことより今日はついに村を旅立った。この村のしきたりに15の成人になると村を出て外の世界を見てくる事になっており、俺もついにそれが適用されたのだ。
太陽が天辺にのぼるお昼時、俺は要所だけ鉄で守っている革鎧に地味な黒のフード付きマントと1振りの素朴な鉄剣に旅のセットを入れた大きめのバックを背負って村を既に旅立ち森の中を歩いていた。スライムは少し後ろを着いてきている。
さて、今俺が向かっているのは勿論アルカナに会いに行く為に王都なわけなんだが、いきなり行ってもつまらないし遠い。取り敢えず今向かっているのは道中にあり、村と少し広めの今俺がいる森を挟んだ先にある冒険者の街[キマイア]。この街に向かっている理由は何かと便利な冒険者になる為だ。
冒険者とは、端的に魔物と戦う事とダンジョンなる神が創ったといわれる不思議な場所の攻略する職業だ。冒険者は職業柄街の出入りが激しいので大体の街は入税が免除される。俺はこの特典が欲しくてなりたいのが1つ。あと、成人しているのに無職なのはなんとなく嫌だったのだ。
森を歩いてあるともちろん魔物が襲ってくるわけだが、この森にはスキルのない俺ですら倒せる雑魚しかいないが、村を出る時に持ってきているお金は心もとないのでしっかりと魔物から魔石を剥ぎ取っている。
この魔石とは魔物の心臓の役割を担う機関であり、魔力が込められている石である。この石には勿論純度によってランク付けされており、最低がFで最高がSとなっている。この階級基準となるのは魔石の色の濃さだ。基本的に魔石の色自体は魔物によってそれぞれだが、魔石の濃さは強さに依存する。よって強い魔物程色が濃く、保有魔力も多いのだ。
魔石自体の用途は魔法の触媒が主となるのでランクが高い程需要は高く、高く売れる。ここの魔物からは弱い割にDランク程度の魔石が取れるので売ればそこそこ稼げるるだろう。
そんな感じで俺は襲ってきた魔物から魔石を手に入れながら進んで行くと2日かけて森を抜けた。森を抜けた先には平原が広がっており、近くに整備された道まで用意されていた。
現在の時刻はもうすぐ昼になる頃だが此処からキマイアまで徒歩で半日以上かかるので夜になってしまう。さすがにめんどくさくなってきたので俺は魔力による身体強化を行って全力で道を走り出すと1時間程でキマイアまで着いてしまった。
冒険者の街のキマイアは大きな壁に囲まれた大都市。壁門も四方に存在しており、今俺が並んでいるのは西の門、列はそれ程長くなくて直ぐに俺の番がきた。ちなみにスライムは俺のバックの中だ。
「よぉ小僧、この街に入りたいのか? 見ない髪の色しているがどっかの異種族さんか? 」
壁門に立っていた門番は、俺より10センチ程高い180越えの鎧を着た大男。鎧を着ていても分かる筋肉の厚さは、まるで獣を連想させる。
「俺はおじさんと同じ人種ですよ。それよりいくらですか? 」
「そりゃ失敬。入税は銀貨2枚だ」
ポケットから銀色の貨幣を2枚を渡すと俺はついに街の中に入った。
街の中は村では信じられないくらいの密度と大きさの住宅と店。目に映る全てが建物ばかり。こんな光景を見たのは今世では初めてだ。大通りを道なりに進んで行く事30分、他の建物とは雰囲気の違う平屋建ての建物があった。
入口の上には剣と盾が描かれた看板にこの国の文字で冒険者ギルドと書いてあるのでここが冒険者になるための場所だろう。扉を開けると思ったより中は広く、どうやら酒場も併用しているみたいだ。俺は左手側に3つ程ある受付カウンター中から誰も並んでいない少し年上位の金髪の受付嬢の所に向かった。
「すまない、冒険者の登録をしたいのだが」
俺の顔を見た受付嬢は一瞬固まっていたが直ぐに気お取り直して1枚の紙を取り出した。
「え、えっとこの紙に必要事項を記入してください。あと、登録には銀貨1枚かかります。それと代筆も有料ですけど必要ですか? 」
少しあたふたしている受付嬢を見ていて面白かったが俺は首を横に振ると直ぐに視線を落として紙を見た。紙には名前と種族にスキルを書く欄の3つだけと簡潔なものだったので直ぐに書いて渡した。
「えーと、これは本当なんですか? 」
「ん? あー、スキルの事か? それなら本当だぞ。なんならステータスでも見るか? 」
紙を受け取った受付嬢が信じられないみたいに言ってきたので証拠を出してやろうとしたんだが彼女は首を横に振った。
「いえ大丈夫です。ただ信じ難いものだったので。それではユートさん、あなたは今日から冒険者のFランクとして仲間入りです。それでは説明を始めたいと思いますけど大丈夫ですか? 最初に、冒険者とは……」
そんな感じで俺は今日をもって職を得た。冒険者のやる事は知っていた通りで、知らなかった事は冒険者は何でも屋に近い事と階級があって魔石と同じでFからSまでらしい事だ。ちなみに前世でよくあったテンプレと言われる新人いびり的な事は起きなかった。
貨幣は
鉄貨、大鉄貨、銀貨、大銀貨、金貨、大金貨、白金貨の順に価値があがり、十進法(10で次の貨幣)で増えていく。
(鉄貨1枚日本円10円程)