9 勇者魔王
魔王の本気で地形が変わる。
地面さえも吹き飛ばす猛威はクレーターをさらに10倍は広げて吹き飛んだ石に当たれば貫通するスピードを与える。土埃で周りは見えず、キノコ型の雲が出来ているだろう。
深く抉れて水が染みだし泥となっているクレーターの外縁に、穴だらけで骨が見えている人の上半身が埋まっていた。
逆再生みたいに穴が塞がって、蛇の下半身が生えてくる。
離れて飛んでったダンジョンコアも戻ってきた。
「ちょっとダメージデカイけど奴もコレが無くなれば弱体化だろ」
触手の一本の額に赤い結晶が埋まっている。そう、あの一瞬で奪ってやった。
バリアを割るコツも分かった、上手いこと魔力を流して揺らすことで制御が緩くなる。赤結晶で魔力も上がってさらに割りやすくなるだろう。
最初の焼き直しだが魔法は弱くなったね。泥道をスイスイ、魔法を剣で反らす。
赤いバリアでダメージも入らない。
魔王は移動しようとしている。ニガサナイヨ。
光線を魔王に当てると周囲の泥は乾き、蒸気が上る。
『この劣等種がっ!!』
全触手の攻撃でバリアは割れ、結晶も奪い、肉を喰らう。
『がっ!この!た……や……。……』
勝った!
「ハハハ、魔王をやったぞ!!」
4つの属性結晶と5つのダンジョンコアが触手に組み込まれ9つの頭に変わる。
「魔王を倒した! オレが魔王だ! 魔王はコロさナケレば!」
「ゆウシャはマオうを がっぉごぁアアぐぅあーー!!!」
9本の頭は互いに喰い合い、9つの目を持つ蛇は更に自身の尾を飲み込んでいく。
クレーターの底には一本の捻れた剣が刺さっていた。
―――
静かになったねクレーターに三人の男が調査に来た。
「くそっ、ぬかるんで動きにくいな」
「急いで中央を確認しないといずれ湖になりますよ」
「待ってくれなんだなー」
チビとノッポとぽっちゃりが中央に向かって進んでいく。
「おっ! 剣が刺さっているぞ」
手に取ってノッポに見せる。
「捻れて、鱗の意匠、魔力が感じられる。相当な物ですよ」
「サノっち使ってみるか?」
疲労困憊のぽっちゃりに剣を渡す。
「いいのかな?」
「俺はナイフだし」
「弓ですから」
「鞘買わないとだめなんだな」
周辺を探索して帰っていく間際、剣の鱗が動いた気がした。
勇者と魔王を内包する剣……ぽっちゃりの伝説が始まる、みたいな。
お付き合いありがとうございました。