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7 勇者戦

 空から人間の陣地に向かう。



 光と共に触手10本が消失し、胴体が焼ける。

「グッ!狙い打ちだな!」

 およその方向に魔法を撃ちながら低空高速飛行に移る。

 光がそばを通るが気にしない。気にしてられない。再生にも限度はある筈だ、早く厄介な攻撃者を潰さないと。


 魔法を文字通りばらまく、人間達がいる中に隠れているなら防がざるを得ない。

「来た!」

 結界に弾かれる俺の魔法、2時の方向に蛇行しながら進む。

 喰ったヤツ達の武器を触手の口から射出、胴体の口は4つに割けて魔力を集める。


 兵士に守られた30人位の黒髪が魔法で強化した視力で確認できた。集団転移か? 思考に意識を割いた一瞬で、目の前の刃が現れ上半身を切り裂いた。


 幹竹割りのまま手のひらから剣を出して、切り裂いたヤツに振る。

 剣で受けられて俺の剣先は切り落とされた。切れ味おかしいだろ!さらに左手を向ける前に衝撃と共に横に吹き飛び地面を滑る。

 相手は綺麗な鎧と剣を持ったイケメン少年だ、どうやら蹴った反動でお互いに距離が離れていく。


 勇者か?上半身をくっ付けようとしたが、光で上半身まるごと消えた。これはまずい。

 胴体の口は破壊の暴力を勇者ではなく、結界の方へ解き放つ。

 ブレスは結界を揺さぶり貫き、半数の生命光が消えた。燃えている姿が見えないのは残念だ。


 そのままブレスで凪ぎ払う。

 転移組は10人まで減っている。探知系能力を全部オンにする。空気の振動、熱、魔力、匂い、生命。処理能力オーバー気味だが勇者相手に言ってられない。


 触手で二人捕まえた所で勇者が来たのがわかった。強奪で反応スピードも上がったのか辛うじて肉盾を配置する。

 ……そう、お仲間という盾だ。


「タツヤ!俺ごと斬れ!」

 捕まえたヤツが吠える。動けない勇者。俺の上半身も再生出来た。

「甘いな」

 残り8人にしっぽの先を向ける。防御か土が盛り上って動き出す、ゴーレムか。だが、無意味だ。

 先が割れて強奪によって威力の上がったブレスがゴーレムを崩し全員を燃焼させて、肉の油が弾け、炭と化していく。


「み……みんな。うぐ、おおぉーー!!」

 こちらに近寄るヤツの前に捕まえた盾をかざしていく。

 肉盾で近寄らせずに触手から魔法を四方から飛ばす、絶対に剣には近寄らない。

 しかし、魔法を切り裂く剣とか弾く鎧なんて魔王対策みたいだな。


 ひたすら逃げ回りながら落ちてる肉を拾い食いし、土ゴーレムを人間兵達に向かわせる。

 捕まえた二人を斬れない限り余裕で対処できる。魔王軍は優勢と言うより蹂躙している。


 撤退かラッパの音が響く。勇者は聞こえないみたいだが。

 そろそろ時間だ、あの光の理屈も分かった。


 捕まえて気絶している女を放り投げ、俺ごと斬れとか言ったヤツの頭を掴み、強化された握力でザクロみたいに握り潰す。


 頭にが潰れて痙攣している体を捨てて、触手を気絶しているヤツに向ける。

 勇者はどう選択するのか、攻めてきたら女殺して逃げるだけだが、勇者は立ち止まった!


 女を両手で抱えて魔法を背中で受け逃げていく。

 ふぅー、勇者ヤベーな。あの剣を防ぐ方法なければ物理ダメージ入れられないし、魔法使いは鎧でダメージ入らない。


 ……さて、駄目元でお返ししてみましょうか!


 ドラゴンの鱗を持ち、あの鎧とまではいかないが物理、魔法ダメージを軽減するこの身体を消し飛ばす光……


 理屈は簡単だ、太陽の光をそのまま転送する穴を一瞬開くだけ。周囲に与える影響を押さえる方が大変だ。穴の周辺が高温にならないよう光線方向に影響を絞る。その熱はドラゴンだろうと消え去るだろうよ。


 元々の能力的には範囲の絞りも緩く、連発は難しいみたいだったが、俺なら小型化してもっと細く出せるだろう。


 ……こんな風にね。




 気絶しているユウカを抱えてあの化け物から逃げる。俺だけなら勝てた、魔法主体のモンスターで相性も良い、あの賢さが厄介だった。

 余裕で守って戦えると考えて皆でレベル上げに戦場を選んだ自分を殴りたい。唇を噛み血が流れる。


 アイツは追って来ないみたいだ、前を見て安堵した瞬間に後ろから軽い衝撃がトンッときて、抱えていたユウカから血が流れる。


 えっ?なんで?前からの攻撃?

 いや、痛みから自分の胸を見ると鎧にゴルフボール位の穴が開いている。心臓か肺をやられているのか立っていられない。目の前が暗くなり、彼女ごと前に倒れて意識を手放した。



「おお!やったか!」

 予想以上の結果にテンションも上がる。

 まさか味方の能力で死ぬことになるとは笑えるな。


 さて、あの剣と鎧を頂こう。勇者に向かおうとするが動きが見える。鎧からチューブが伸びて勇者の首筋に刺さる。

 勇者が起き上がるが頭は下を向いており、鎧の穴が塞がっていく。


「ゲッ!?」嫌な予感がする。鎧と剣が本体とかじゃないか?

 触手30を使って多重結界を構築し、蛇のバネで後ろに跳んで急いで離れる。


 勇者は下を向いたまま、膨大な魔力を剣に込めてこちらに腕だけで振った。

 飛んで来る斬撃は雲も切り裂きながら迫ってくる。

「斬撃対策! 横にかわす、無理なら反らす」

 誰かの知識か、アーサー君だと信じよう。

 結界を斜め45度に配置、反対に退避する。結界をバリバリ破壊する斬撃が少し反れて進む。結界が全て破壊される前に避けることが出来た。

 斬撃は後ろの山を割って消えた。


「あの野郎、蜂の巣にしてやる」

 勇者に向き直り、触手全てを広げて穴を開き、そこから光の線が延びていく。

 30本の光の束は勇者を穴だらけにした。

 腕は千切れ、頭は無くなり、片足も骨が見える。


 壊れた人形みたいに動くが、勇者の光は消え、糸が切れたように崩れ落ちた。


 くくく、これで俺が勇者だ!

 胸が熱くなり、勇者の鎧と剣がカタカタ動いている。

 装備はあれでいい、後は魔王に向かう前にレベル上げなきゃな!



人外勇者の誕生です。

争いが種ごと無くなる……

へ、平和だなー

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