5 人間卒業
都市側から人が列をなして移動している。何があったのか?
「どうやらダンジョンから化け物が出たらしい、引き返すなら50枚だがどうするよ?」おっさん値段変わり過ぎ……。
「稼ぎ時だな!」一気に英雄になっちゃうかもなー。
馬車を降りて都市に向かう。自重無しのフルスピードで風を押し退けて地面を蹴り進む。
左側に巨大な生命力と100以上の生命を見つけてそちらに足を向ける。蛇みたいなプレデターと戦う集団!
「質量×スピード×ツルハシ=破壊神!」
砂ぼこりを立てながら蛇の胴体にピッケルを下から掬い上げる。肉に刺さり、そのまま引きちぎる!あっ、ミシリと音がしてツルハシの柄が折れた。
ポーンと飛んでく俺。着地からのブレーキに耐えられなかった靴を引きちぎる。
しっぽの凪ぎ払いをバットで打ち返す!衝撃が全身を襲い、足元の地面がへこむ。
再生が始まる胴体に借り物の剣を投げ、ウインドカッター、ファイアボールも撃ち込む。
向こうの集団も狙いがわかったようだ、集団の魔法が再生を許さない。バットで肉を千切り半分にしてやる。
蛇が甲高い悲鳴をあげて口の触手を此方に向ける。
千切れた胴体に結晶が見えた。前衛が全員胴体に向かう。
蛇の全身から触手が生えて数人食われた。自分の下半身を食べようとするのを殴って阻止する。触手を千切ってホームランで飛ばしていくと触手も少なくなって回復が遅くなってきた。
蛇が此方を向いて弱々しく鳴いた。頭を吹き飛ばす。べしゃべしゃと肉片と血液が降ってくる。
集団は雄叫びを上げている。
強奪の影響か身体が熱い。
しかし何で最後に鳴いた?
あぁ、しかし腹がヘッタ。こちらに大剣持ったニクが来る。
「よお!他の町の冒険者か?」
「あァ、イただきマス」
自分の腹から蛇が突き破り、前のニクを剣ごと食べる。
背中からも蛇が出て周囲を牽制してくれる。右手は4つに裂けて大剣が出てくる。素早いニクは後回しだ、奥のニクを狙う。地面に固定された蛇がしなり、身体が横に飛ぶ。バットと大剣は蛇が使っている。吹き飛び千切れるニク
迫ってきたニクを手刀で切り刻む。
蛇が喋り出す「ウインドカッター」
蛇の数が20を越える。しっぽが身体を支えている。
「なんだこれ?」辺り一帯の惨状と自分の状態に驚く。
これは強奪した分を自分が制御できてないのか?いや、だったら何故理性が戻った?人間を殺して強奪したから?
「これ、モンスター倒したら駄目なやつだ……」
最初に何を倒した?人間の前にオオカミ、いやスライムを倒してる。あの時点で既に自分ではなくなってたのか……
人間倒してたから理性はあったとすれば冒険者なんて駄目じゃん。
人類の敵認定だよ。隠れてほのぼの生活かな……蛇はまだ消えないのか、もう少し人間ヤってくるか。
肉を食べてる蛇が都市の様子を見ている。
「ん?なんだ?」
ダンジョンから見覚えのある姿が出てくる……さっきの蛇より倍のサイズがありそうだ。
「鳴いてたのはあれか、子供だったのか?」
大きな蛇が此方に来る。
「ですよねー」出来るなら逃げたいが無理だわ。
お互いに触手を使い、食いながら削っていく。しかし、武器と魔法が使える俺達の方が優勢だ。ひたすら触手を奪い、しっぽが裂けて化け物を飲み込んでいく。
予測が正しければまた理性が無くなるだろう。早めに戻れるといいんだが……
―――
「ここは?」
どうやら人間が散らばっていない、理性の強奪は間違いか?
いや、目の前にトカゲが倒れている。翼がある、ドラゴンだろう。ファンタジーなドラゴンなら知性もあろうな。魔力の理解も出来る、魔法が自由に使える。翼も生えた。
「いや、人間から離れたぞ!」
現状蛇の至るところが焦げて人間の上半身も半分消しとんでいる、胸から上半分ね。翼は蛇から生えている。爬虫類成分多過ぎないか?
再生を待ちつつ考える。国でも滅ぼして人間の姿に戻るか、戻る意味があるのか?……無いな!
「これは困った」
「お困りのようですね?」
独り言に反応されるとビビるんだけど。
角の生えた人間が近くにいた。
「強くなりすぎるのも問題だよね」
「目的が見つからないなら、そのお力、魔王軍で生かしませんか?私、魔族の幹部の一席に座しておりますセドリックと申します」