4 迷宮都市へ
ギルドでアーサー君の木の板を返却する。
特に何も無く回収された。冷た過ぎないか?聞いてみたら学校には連絡が行くみたいだ。
報酬は討伐素材含めて銀貨15枚。ロックワームは売れてから支払われるので、まだ待たないといけない。
「本登録が許可されましたのでブロンズカードをお渡しします」
木の板は返却し、これで本当の冒険者となる。
「ブロンズで戦闘向けって戦争以外に何があります?」
「ブロンズクラスの討伐か、迷宮都市のダンジョンがおすすめです」
ダンジョンなら色々強奪出来て強くなるには良いな。
「迷宮都市は馬車で何日かかりますか?後、支払いは向こうでも受け取れます?」
「3日で着きますよ。受け取りは何処でも出来ます、金額によっては時間が掛かりますが」
よし!都市に向かう馬車に乗るか。
探すと明日の朝に出る馬車があったので名前を書いて、宿へ戻る。
翌朝、荷物をまとめて宿の返金を受け取って馬車に乗る。チビとノッポとポッチャリの3人と一緒のようだ。運転手のおっさんから説明された。
「初日は村に泊まります。2日目は野宿で、都市には昼過ぎには着く予定です。」
4日で着く馬車もある。野宿が嫌な人向けだ。3人組も冒険者で野宿は慣れているから3日コースらしい。
2日目で思った、尻が痛い。マントを下に敷いているがそれでも痛い。強奪でステータス上がっても防御貫通でダイレクトアタックなのか、振動毎に1ダメージ入っているのか分からないが痛い。
猛烈に痛覚無効が強奪したい。今すぐに!
「盗賊だ!」
これは痛覚無効をゲットするイベントか!
3人組と一緒に馬車から降りて、剣を……
剣買ってないな。
ツルハシを構える。
10人の盗賊が馬で横からこちらに来る。ノッポがウインドバリアを張る。盗賊の矢がバリアで逸れていく。
馬に向かってツルハシをフルスイングすると馬ごと1回転して後ろに転がっていく。
「「ウインドカッター」」ノッポ君とユニゾンで盗賊を落とす。チビはナイフを投げたり、落ちた盗賊のトドメを刺している。ポッチャリは馬ごと盗賊を投げ飛ばしている。
これだけ馬を倒したら馬並みになるかもしれないな!
……な!
そんな馬鹿なことは無かったが、弓と馬術は得られたんじゃなかろうか。
結局、痛覚無効は無かったが休憩でなんとか痛みが弱まった。
無傷の馬だけ連れて、遅れたが野宿場所まで着いた。
俺は今、品質の悪い剣2本を装備している。盗賊の戦利品から融通してもらった。まぁ、残りも馬車に乗せているし都市でまとめて売るので借りてるだけだ。
後半日の距離で盗賊も出ないだろうけど。
▽▽▽
迷宮都市の冒険者ギルド二階の一室にて、立派な椅子に座っている初老の渋さ溢れるイケメンギルド長は、各部門の報告書を読んでいた。
「化け物はダンジョン奥から登ってきている……か。剛腕の、でも倒せなんだか」
机の向かいに仁王立ちしている筋肉質の大男が頬を掻きながら答える。
「いやー、無理だわ!手数は多いし、回復する、消耗狙ったが雑魚モンスターを食べて一向に疲れが見えない。こっちが持たないな!」
「連れて行った魔法使いはどうだった? 弱点はあったか?」
「喰われた。ダメージはどの属性も変わり無さそうだったな!」
「そうか……ベテランの前衛と消耗狙いの後衛で倒せることを祈るしかないか。」
ダンジョン入口は周りを壁に囲まれ、隣接するように都市がある。都市への門は閉じられ、外への非常時の門が開かれる。
ゴールドの前衛20余人、魔法を使える冒険者500人が待ち構える。
ゆったりと黒い生物が外に出てくる。しんと静まり返る冒険者達。それの姿は蛇に近い。目は無く、口は十字に開き、サイズは人の身長以上の胴回り。ズルズルと外に出てきており、全長は未だ分からず。
弓が鱗に当たり弾かれる。化け物は冒険者達の存在を感知し、前進し始めると徐々にスピードを上げていく。
剛腕は仲間達のバフを受けて、驚異的な加速を大剣に乗せて化け物へぶつけた。衝突によって化け物の前進が止まり、口の一辺を斬り飛ばすことが出来た。剛腕の腕の骨を代償に……
「止まったな」後ろに引きつつ化け物の様子を見ると既に回復が始まって口からは小さな化け物と言うべき舌が10本此方に向かってくる。
後衛の魔法が色鮮やかに化け物へと降り注ぐ。続く衝撃音。いかに化け物でもダメージはデカイだろう。腕の治癒を受けながら魔法による土埃の先を注視する。
土埃から舌が飛び出すが片手で剣を振り回し反らす。前衛が他の舌も受け、切断していく。風の魔法によって土埃が晴れていく。
「こりゃ長い1日になりそうだ」
化け物の切断した口は再生し、魔法で剥がれた鱗も回復しつつある。さらにダンジョンから出たがしっぽが振り回される。
後衛の魔力回復までは前衛のローテーションで時間を稼ぐ。
増援が来てくれるといいんだが。