炎使いvs風使い
カンッ!!!
戦闘開始のベルが鳴る。
「早速...始めようか!!《点火》!!」
1人の男、炎使いの両腕を前に振り、その瞬間両腕がオレンジ色の光が発生する。
それと同時に放たれたまるで蛇のようにうねる炎がもう一人の男に近づく。
ゴォォォォ...!!
炎の波はもう一人の男、風使いに直撃する寸前に左右に分かれ明後日の方向へ飛んで行く。
「残念だったね...能力の相性が悪いみたいだ」
風使いは両手を腰に当て、余裕そうに呟く。
面倒くさそうな表情をしたまま左手を炎使いに向ける。
しかし、炎使いは自分が狙われているのをわかったまま笑い始めた。
「あははは!本番はここからだゼェ?」
そう炎使いが叫ぶと風使いの足元が赤くなり始めた。
「っ!?不味い!」
風使いは一瞬で自分が何をされたのかどんな状況なのかを悟り、自分の周りにものすごい上昇気流を作り出し、その気流に乗るようにジャンプして上空へ逃げる。
ドカァァァ!!!
先程まで風使いが立っていた場所から高さ15mはありそうな火柱が立つ。
風使いは地面に着地する直前に上昇気流を起こして衝撃を軽減する。
スタッ、
風使いがまだ攻撃体制に入ろうとした時に風使いの足元がまた赤くなる。
「ふぅ〜ん」
そんなつまらなそうな声を出しながら軽く背後にジャンプして避ける。
しかし、すぐ後ろには白い大きな壁があり、これ以上下がれそうにない。
勿論避けた所からは火柱が上がっている。
その様子をボーッと見ながら風使いは右手を横に真っ直ぐ伸ばし、手も広げる。
「...何だ?」
風使いは伸ばした右手をまるで暑い時団扇で自分を扇ぐかのように、目の前に上がっている火柱を扇ぐ。
すると、真っ直ぐと伸びていた火柱の一部が曲がり始め、ものすごい勢いになり、炎使いを襲い始めるが...
「ふふっ、」
笑ったのだ。
まるで勝利を確信したかのような笑み、
その笑みをした途端、炎使いがこちらに左手をかざして来て...
「あの火柱を出しっぱなしにしたのはこの状態をする為の囮の炎だったんだぜぇ!!!」
風使いの後ろの壁が真っ赤に染まる。
勿論背中には目が無いので...
しかし炎は、風使いを綺麗に避けてしまう。
「なっ!?」
炎使いが驚いた瞬間に風使いは距離は離れているが、思いっきり炎使いに向かって手刀を振り下ろす。
炎使いはなにかを察し回避行動をとるが間に合わずに左肩に思いっきり切り込みが入る。
「グッ!!」
「一気に畳み掛けますよ!!」
風使いがそう叫ぶと何回も同じ場所から手刀を繰り返す。
縦、右斜め、左斜め、十字、横、と手刀を1秒置きに向きを変えて炎使いに放つ。
「ぐっ!ぐぁっ!!」
左肩に傷を受けてから連続して攻撃を受ける。
その攻撃の量は白色の床に赤色のカーペットを敷いてしまう程の量だった。
炎使いはこのままでは不味いと思い一気に勝負をかけるべく思いっきり風使いに向かってジャンプする。
勿論風使いと炎使いの距離は15m程あるのだが...炎使いの靴底が赤くなり始め、
ドォォォォーーーーン!!!
爆発する。
勿論自分の能力で作った爆発なので自分にダメージがないように調節がされてある。
爆発の威力は炎使いの体を風使いの2mまでと言う至近距離にまで一瞬で飛ばしたのだ。
だがここでも風使いは余裕の表情を崩さない。
「さっき、君が壁から出した火を覚えているかな?アレ、何処に飛んで行ったかわかる?」
そう人差し指を立てながら炎使いに問いかける様に話しかける。
すると次の瞬間、
ボワァァァ!!!
炎の波が炎使いの両側から襲って来たのだ。
「なっ、なにぃ!?」
「馬鹿め!貴様は自分が出した攻撃を、覚えていなかった!!それが敗因だ!!」
そう風使いは物凄い形相で炎使いを睨む。
しかし、
炎使いが息を吐くと、いきなり炎使いを襲っていた火が一瞬にして消えたのだ。
「馬鹿はどっちだ!!自分が出した炎を少し目を離しただけで操れなくなるとでも思ったかぁぁ!!」
炎使いは右手に力を思いっきり込め、右手から物凄い火力の炎が発生する。
炎使いの力強く握られた拳は風使いの顔面へ一直線に向かう。
しかし、それでも風使いは余裕の表情を貫き通す。
グゥンッ!!!
「なっ!?」
炎使いが風使いに向け放った拳の速度がいきなり減速、いや、止まった!!
炎使いの拳は、まるで透明な何かに阻まれるように、透明な手に止められたかのように、あっさりと止まった。
「ふふふっ、今、この僕が何をしているのか気になるんだろ?だがなぁ...今から死に行くお前に教えるものかぁぁ!!!」
そう叫んだ瞬間に風使いは指を鳴らす、すると炎使いの右手に纏われていた炎が徐々に小さくなり、消える。
自分が意図しない形で自分が意図のままに操れる炎が消えたので驚きを隠せない炎使い、
その隙を狙って風使いは物凄い爆風を自分から発生させる。
「ぐぁっ!!」
炎使いは5mほど後ろに吹っ飛び、即座に受け身を取り左手を風使いに向ける。
「ふぅん、まだやりますか...」
そう呟くように風使いが言うと、今度は風使いが左手を強く握り始める。
すると、風使いの目の前に風が、空気が集まり始める。
「何をするかは知らんがさせるかぁ!!」
炎使いの左手からまるで爆発するような威力の炎が発生し、風使いに向かって行くが風が一点に集まっているところにまるでブラックホールがあるかのように吸い込まれてしまう。
一点に集まっている空気が大きくなり、肉眼でも見えてしまう程の大きさになる。
「行けぇ!!!」
風使いが叫ぶとその大きな空気の塊は人が走った時ぐらいの速さで炎使いに迫って行く。
「なっ、何なんだよぉ!!それは!!!」
「はっ!教えるものかぁ!!!」
バフゥゥゥゥ!!!
「くっ、何か、何か策はないか?」
炎使いは考える。
今の炎でできること、
燃やす、爆発させる、飛ばす、纏う、
___奴に勝つにはこの4つの出来ることに5つ目の出来ることを増やさなきゃいけない...
そう考えていると、後ろから物凄い風の塊が迫ってくるのに気づく。
「くっ、これは...空気を高速で圧縮することによって擬似的なブラックホールのような物を作り出しているのか?ん?圧縮...それだ!!」
左手から炎を出し、それを球体状に圧縮して行く。
____これだ、これを大量に一気に出せば風で相殺することも難しいはず!!
圧縮された炎を一瞬で大量に作り出し、風使いに向かって飛ばす。
「はっ!これくらいまた風で吹き飛ばして...いや!無理だ!!」
風使いは気流を操作し高速移動して炎使いが出した炎の弾幕を避ける。
すると先程まで風使いがいたところに着いた炎使いの弾幕はそこで爆発を起こした。
「あっ、危なかった...」
風使いが行った緊急回避が成功し、少しほっと息をついた...その隙をつかれた。
「残念だったなぁ、二段構えだ」
炎使いが右手を燃やして風使いに殴りかかる。
完璧に隙をついた。
ギリギリ急所を外されてしまった。
しかし、ダメージは確実に与えた。
炎使いはまた靴を爆発させ、風使いを飛び越えて反対側に着地する。
「ぐっ、よくもこの僕にダメージを与えてくれたなぁ!!」
風使いの正面に肉眼で見えるほどの分厚い空気のバリアが出来る。
それを見た炎使いはその場に座り込んでしまう。
「はっ!この僕の完璧な防御に腰を抜かしたようだなぁ!!」
炎使いは黙る。
そして、風使いが手刀を作り出し下に振り下ろす...
瞬間、風使いの背中が一気に抉れた。
その抉れ方はあと少しで腹に大穴が開きそうなぐらい深いものだった。
「なっ、何を...」
そう風使いが呟くと、炎使いはめんどくさそうに立ち上がり、左手の人差し指を風使いに向ける。
「さっき、お前を爆発で飛び越えた時点で、俺の勝ちは決まっていた、増してはお前が油断してくれたおかげでもっと確証性が上がったがな」
風使いは黙って炎使いの話を聞く。
「お前を攻撃したのは、お前が出したあの圧縮された空気だ」
その言葉を発した瞬間風使いは驚く。
「自分が出した攻撃を、覚えていなかった...それがお前の敗因だ」
そう呟くように炎使いが言うと、風使いは力無く倒れた。