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【完結】異世界転生してモンスターを倒してそこそこ成功したので故郷に帰ったら、幼なじみを奴隷として買う事になった  作者: よぎそーと
第5章

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99回 打算や妥協ももちろんある

「そんな事言ってると襲うぞ」

「えー、兄ちゃんがー?

 出来るのかなー?」

 牽制のために言った言葉も、軽くあしらわれる。

 タカヒロがそこまでしないと思ってるのだろう。

 実際、この程度で何をどうしようとは思ってはいなかった。



「でも、そうなったら責任とってくれるんでしょ」

「ん?」

「兄ちゃんだから、そのまま捨てるなんて事はないよね」

「それはどうかな」

 口でそう言うも、何かしたなら相応の事はするつもりである。

 今までそうしてきたつもりだったし、これからも変わらずそうしていこうと思ってる。

 それはタカヒロに接してきた者達も察していた。

「じゃあ、手切れ金も渡さずに捨てたりするの?

 お手つきになっちゃった使用人とかを」

「するかよ、そんなこと。

 実際にどうするかは分からないけど」

「うん、そうだよね」

 ミオもそこは分かってるからこんな事を冗談として口に出来ている。

「捨てるような根性があれば、今頃もっと出世してただろうしね」

「おいおい」

「そういう事をしないから、出世できないんだって言ってたよ、色んな人が」

「その『色んな人』ってのはどこのどいつだ?」

「サキさんとか周旋屋のオッサンとか、他にも色んな人」

「あいつら…………」

 周りからの客観的かもしれないな評価に怒りがこみ上げてくる。

「だから襲われても、兄ちゃんなら構わないって思ってるよ」

「責任とらせる気満々じゃねえか」

「だって、言わなくても責任とってくれるでしょ」

「…………」

 さすがに違うとは言えなかった。

「それだったら、私は全然構わないから」

 言われてタカヒロは、顔が赤くなるのを感じた。



(しょうがないなあ……)

 赤くなってるタカヒロを見て、ミオは苦笑するしかなかった。

 口では何を言おうとタカヒロは決して非道な事をしない。

 しようとはしない。

 やるにしても、それはやらねばならない事情や理由があるからだ。

 それがタカヒロと一緒にいて分かってきた。

 例え損をする事になっても、決して悪い事には走らない。

 手を染めようともしない。

 道理をねじ曲げて利を取るような事はしない。

 だから他の者達に出し抜かれる事が多い。

 しかし、着実に一歩一歩進んでいく。

 時間がかかっても信をとっていく。

 信は積み重なってより大きな利になっていく。

 その証拠に、タカヒロを悪く言う者はいなかった。

 人の好さにつけ込んで利用しようという者もいなかった。

 それよりも、利害を踏まえて協力した方が良いと接している誰にも思わせていた。



 それに、タカヒロは一方的に搾取するような人間とは付き合わない。

 どんなに美味い話でも決してのろうとしない。

 着実な儲けや戦果、何より全員が生きて帰ってくる事を念頭に行動している。

 お人好しに思えて、こういった警戒心などは決して捨ててない。

 むしろ他の誰よりもこの部分については厳しいところがあった。

 それがまた多くの者達に考えさせる。

 下手をうって関係を失うより、信頼関係を作った方が得だと。

 お人好しに見えて、不正や不実は決して許さない。

 誠実さの欠片も見えない態度をとれば、タカヒロは確実に縁を切る。

 切った相手とつるんでる者達も含めて。

 でなければ、縁を持ってる者達を通して相手との関係が続く。

 こういう時のタカヒロは何一つ容赦がない。

 おかげで様々な人間関係を失う事もあったという。

 だが、だからこそまっとうな人間達だけと付き合ってきている。

 そうした者達とのつながりが、タカヒロ達に地道な成長をもたらした。



 そんなタカヒロと縁が出来るなら、襲われるくらいはどうという事は無い。

 ミオもそんな計算くらいはしていた。

 このあたり、女の強かさというべきであろうか。

 ミオとて無邪気に今まで生きてきたわけではない。

 むしろ、最悪の家庭の中で生き延びてきたのだ。

 相応の強さ、あるいは陰険さも持っている。

 でなければ、とっくに潰れていただろう。

 精神的にも肉体的にも。

 利害を考えての事と言えばそれまでである。

 最善を考えればそれが一番という計算尽くなところもある。

 それを踏まえて出て来る言葉もある。

「襲うなら早目にね」

 笑顔で、とても自然な笑顔でミオはそう言う事が出来た。

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