94回 他と比べて見えてくる奴隷というものの優位性
「でも、やっぱり人がいると変わるな」
トシノリの欲望のためであるとはいえ、人手が増えた事に変わりはない。
「この先もどうにかして人手を増やしていきたいけど」
「それって奴隷を買えって事か?」
フトシが念のためにといった調子で尋ねてくる。
「そんな余裕は無いぞ」
「分かってるって。
そこまで求めてるわけじゃない」
「でも、それが一番確実っすよ」
「まあ、それはそうなんだが」
残念ながら、常駐する人間を増やすなら奴隷の購入というのは割と確実な手段である。
義勇兵を呼び込むというのもあるのだが、それだと戦闘員だけを増やす事になる。
それも欲しいが、今一番必要なのは生活方面で活動してくれる者だ。
戦闘員ではない。
それに、義勇兵を増やす事には問題もある。
戦闘が主な仕事である義勇兵は、素行不良な連中もいる。
そういった者達が数をたのんで周囲に不穏をまき散らす事がある。
縄張り争いなどはその典型だ。
複数の義勇兵集団が集まってる場所などは、複数の集団が対立してることすらある。
統治者のいる町などではそういった事はまずないが、義勇兵が取り仕切ってる場所はそうではない。
タカヒロ達がいる村のように、領主のようなおさえのない場所では単純な戦力が影響力になってしまう。
このため、他の義勇兵を呼び込むというのはかなりの危険を伴ってしまう。
モンスターという外の脅威だけでなく、対立集団という内側の問題が増える。
それはモンスター以上の脅威となる事がほとんどだった。
それに、戦力だけなら、今の状態でもどうにかなっている。
無理して義勇兵を増やす必要はない。
手が回ってないのは、炊事・掃除・洗濯・裁縫などの生活方面だ。
更に言うならば、建物の増改築や田畑の整備などもしたい。
そちらに振り分ける作業員をどうにかして確保したかった。
だが、モンスターの出没する地域にわざわざやってくるような物好きはほとんどいない。
よほどの大金を積まない限りは無理である。
それを考えれば、奴隷を購入してくるのが最も安上がりであった。
裏切る危険性も極端に低い。
人道的とは絶対に言えないが、とりうる手段の中では最も堅実なものとなってしまっている。
「でも、さすがにねえ」
タカヒロとしては、これを最後の手段にしておきたかった。
確かに最も効果的であると思ってるが、奴隷とされた者の意志を踏みにじってる。
そんな手段は出来るだけとりたくはなかった。
送ってもらったメッセージで誤字脱字などを訂正。
他にもまだまだあるだろうから、見つけたら報告してくれると助かる。
しかし、こういったものは何度見ても赤面してしまう。
無くしたいものだが、それも難しい。