93回 それでもやる事はやってるのだろうと誰もが考えている
トシノリの奴隷がやってきたのは二週間後。
買い出しで町に出向いた時に契約が成立した。
一緒に出向いたタカヒロとミオは、戻ってきた周旋屋の宿舎で顔を合わせる事になった。
「よろしくお願いします」
頭を下げて挨拶をしたのは、20代前半の女だった。
目立つほど綺麗というわけではないが、穏和な雰囲気をもっている。
そんな女を見て、
「犯罪だ」
とタカヒロはもらした。
「オッチャン、この年齢差は言い訳が出来ないぞ」
「何にどんな言い訳をしなくちゃならないんだ」
トシノリの反論にタカヒロは持てる全ての言葉と勢いで対抗したくなった。
だが、何を言っても無駄だろうと悟り、その全てを放棄した。
「まあいい。
それより、本当にこの人が奴隷なの?」
「もちろん。
ほら、左手に魔術契約の印があるだろ」
確かにそこには、魔術による紋様が浮かび上がっている。
紛う事なき、奴隷の証しである。
「……なんだろう、他人のこういうのを見ると、凄く最低だって思うよ」
自分の奴隷のものを見ても大して何も思わなかった。
だが、他人の奴隷にある確かな印を見てると、とてつもなく犯罪に思えてくる。
サキがあれこれ言っていた理由がうっすらと理解出来てしまった。
「とりあえずっていうか、何はなくとも悪さだけはしないでよ」
「当たり前だ、身の回りの世話をさせはするがな」
「その世話ってどこまでやる事になるんだ?」
「色々だな、一言では言い表せん」
ようするに、ありとあらゆる事をするのだろう。
「うん、最低だ」
男として分からないではないが、認めてしまうのもどうかと思った。
ただ、トシノリが連れてきた奴隷によってミオの負担は大きく減った。
トシノリが連れてきた女も、家事などはそれなりに出来るようで、裏方の即戦力になってくれた。
おかげで食事や洗濯などに義勇兵をまわす事が少しだけ減った。
あくまでトシノリの身の回りの世話が優先であるが、手伝いが増えたのは大きかった。
様々な事が次々に片付いていく。
様々な部分でその恩恵は出てきていた。
「それに、金を払わなくていいのはありがたい」
タカヒロとしてはこれも大きかった。
「周旋屋に頼んだら、かなりの出費になるからなあ」
人を雇用するとなるとどうしても金がかかる。
奴隷の購入も金がかかるが、継続的な出費にはならない強みがある。
長期間にわたって仕事をしてもらうとなると、そのありがたさが分かって来る。
それぞれでかかる費用を計算したタカヒロは、その差の大きさに愕然としたほどだ。
例えトシノリの世話の片手間であっても、ミオの手伝いをしてくれるならそれだけで大いに助かる。
そして、トシノリが仕事に専念出来るようになったのも大きかった。
炊事・掃除・洗濯・裁縫などなどを奴隷がこなす事で、トシノリはモンスターの方に集中出来る。
その事によってトシノリは外で活動する以外の事に労力を割かずに済む。
その事がトシノリの作業効率を上げていった。
それを見た他の者達も、自分の身の回りの世話をしてくれる存在を求めるようになっていった。
戻ってきてから食事の用意をするのも面倒である。
洗濯や掃除なども手間がかかる。
それらを別の誰かがやってくれればと誰もが考えた。
すぐに購入出来るわけではないが、それも考え始めていた。
「ところで、やっぱり夜の世話もさせてるの?」
「それは秘密だ」




