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91回 結局は怒鳴られるところに落ち着いていく

「ふーん、まずまずじゃない」

 一泊のために戻った周旋屋の宿舎で、サキが絡んでくる。

 そしてミオが買ってもらったと言って見せた小道具の品定めをしていく。

「あんたもちゃんと面倒見るようになったんだね」

「もとから見てるだろ」

 そもそも奴隷として売られるところを救った(他に流れる前に買い取った)のは誰なのか、である。

 見捨てるならそんな事しない。

 もちろんサキが言いたいのはそういう事ではない。

「いやいや、ちゃーんとミオの事を気にかけるようになったなあって。

 ずぼらなあんたにしちゃ上出来だよ」

「うるせえ」

 見捨てて放置するかどうかではなく、女の扱い方というか接し方が理解出来てきた、と言いたいのだろう。

 決して悪く言われてるわけではないのだろうが、からかってるのもはっきりしている。

 だからだろう、腹が立つのは。

「そんな事言いにわざわざ来てるのかよ」

「当たり前でしょ」

 皮肉や嫌みも通用しない。

「辺鄙な所に連れて行かれたミオが可哀相で心配だったんだから。

 どれだけこき使われてるか分かったもんじゃない」

「…………」

「まさか、本当にこき使ってるわけ?」

「…………貴重な生活部分の戦力として助かってる」

「さいてー」

 言い返したかったが、これには何も言えなかった。

 確かにミオに仕事を大分押しつけてるのだから。



「まあ、そういじめるな」

 ぐうの音も出なくなってたタカヒロの耳に、トシノリの声が届く。

「そっちの補強の為に、戦力の補充もしてるんでな」

「へえ」

 帰って来たトシノリは、そう言ってサキの前に立つ。

「嬢ちゃんに無理をさせてるのは確かだが、俺らもそれをよしとしてるわけじゃない。

 手間を省けるよう努力はしてるさ。

 まあ、すぐに出来るってわけじゃないがのお」

「それはしょうがないけどね。

 でも、さすがに働かせっぱなしってのは無しだよ」

「分かってる分かってる。

 うちの頭もそんなつもりじゃないさ。

 ただ、どうしても人手がのお。

 何せ零細集団だ、どうしても無理は出てくる」

「うちも似たようなもんだから、事情は分かるよ」

 サキも同じような状態なので、そこを責める事はなかった。

 そんな事をしても、結局は自分自身に跳ね返ってくる事になるからだ。

 相手を思いやってというより、我が身かわいさからのものだが、余計な攻撃を封じる事にもなる。

 似たような境遇というのは、自分にも跳ね返るような状況を生み出す事がある。

 それは傷をなめ合い、互いに牽制し合って安全地帯を作り出してくれた。

 歪な形であるが、割と便利ではあった。

 おかげでタカヒロは助かっている。



「ま、とりあえずあと一週間か二週間でどうにかなるはずだが、それまでは嬢ちゃんに無理をさせるがのお」

「あんまり負担をかけないでよね。

 ミオが倒れたらあんただって困るでしょうから」

「分かっとるよ、それくらいは。

 まあ、人手が増えれば少しはどうにかなるだろうさ」

 トシノリの言葉にサキは「それなら」と呟く。

 だが、すぐに思案顔になっていった。

「……それで、どうやって人手を増やすの?」

「ああ、俺が奴隷を買うから、それに手伝わせようと思ってな。

 俺の身の回りの世話が優先だが」

 その言葉を聞いてサキの顔がすさまじい勢いで険しくなった。

「この…………外道があああああああ!」

 絶叫が周旋屋の中に響き渡る。

 結局そこからサキの糾弾が始まり、タカヒロを辟易とさせていった。

 だが、サキの怒鳴り声を受けてるトシノリは平然と受け流していた。

(あれは真似出来ない……)

 面の皮の厚みと精神のふてぶてしさが、タカヒロには羨ましく思えた。

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