84回 危険を理由に家の中に押し込められる
「何やってんすか!」
翌朝。
目覚めて行動しはじめた直後に、タカヒロはコウゾウに詰め寄られていた。
「なんで家の外で寝てるんすか。
どうしてテントなんか張ってるんすか」
「いや、中はミオが使ってるから……」
「理由になってないっすよ!」
こいつ何言ってんだ、と言わんばかりの勢いでコウゾウはタカヒロに向かって叫ぶ。
「一緒に家の中で寝てればいいじゃないっすか」
「出来る訳ねえだろ!」
今度はタカヒロが一喝する。
「お前は何を考えてるんだ!」
「それはこっちの台詞っすよ!」
一歩も引き下がる事無く、コウゾウは叫び返した。
「そりゃあなあ」
事のあらましを聞き終えたトシノリも呆れたように言う。
「言いたい事は分かるが、だからって外で寝てるのはまずいだろ。
堀も土塁もまだ完全じゃないんだから。
モンスターが襲ってきたらどうするつもりだ。
「まあ、それはそうなんだけど」
「家の中も安全とは言い切れんけどな。
それでもテントよりはマシだろ」
「ああ、それはね」
「昨夜は運が良かったとは思うが、今日からはちゃんと家で寝ろ。
でないと危険でしょうがない」
もっともな言い分である。
否定のしようがなかった。
「けど、ミオが……」
「そんなの問題ないだろ」
トシノリは「本当に何を言ってんだこいつ」という表情と口調でタカヒロに向かう。
「そんなもん手をつければ済む事だろうが」
「それが問題だって言ってんだよ!」
またもタカヒロは叫んだ。
とはいえ皆の言ってる事は間違ってない。
家の外にいるというのはそれだけで危険である。
これがモンスター退治のために外に出てるならやむをえないものがある。
しかし、わざわざ建物があるのに外に出てる理由は無い。
男女の倫理や道徳も大事だが、それよりも生命を優先するのは当然であろう。
仮にも集団の主が軽率に危険に身をさらすのはいただけない。
そういった周りの意見はまっとうなものであり、退ける理由は何一つない。
「けど、それって単なる口実だろ」
熱弁をふるう仲間に、タカヒロは冷ややかな目を向けながら押し殺した声を出していく。
「ようは俺とミオを一緒にさせておいて、何かが起こるのを待ってるだけじゃねえのか?」
「あ、分かりますか、やっぱり」
これ以上ないくらい素直にマサルは認めた。
「いやー、大将がいつまで経っても手を出さないもんだから。
そろそろ無理矢理にでもやらせようかと思って」
「おい」
「大将も女に興味があるなら、ここは一発がつんといくっす」
「こら」
「別に奴隷なんだから気にしなくてもいいんじゃないかな。
もっと気楽に考えるべきだよ」
「待て」
「まあ、気が引けるっていうなら、嫁にでも迎えればいいんだしのお。
あまり深く考えるな。
なるようになる」
「いい加減にしろ!」
結局この日は、こんな調子で怒鳴りっぱなしであった。
そして、そんな事をしつつも再び夜が来る。
家に戻ったタカヒロは、ため息を吐きながら中に入っていった。