78回 いよいよ始まるお引っ越し 2
モンスターを倒し、土を掘り、土嚢を積み上げていく。
まずは最低限で良いから、モンスターが入ってこれない場所を作らねばならなかった。
それを一日でどうにか確保して、翌日からの作業に向かっていく。
まだまだ工事など出来る状態ではない。
安全確実な場所を最優先で確保しなくてはならなかった。
その間もモンスターは次々にやってくる。
街道から外れてるとはいえ、モンスターが蔓延る地域である事に変わりはない。
土嚢作りとそれの積み上げをこなしながら、やってくるモンスターを倒さねばならなかった。
幸いにして、どこにどれだけモンスターがいるのかはフトシによって把握されている。
襲撃の予想が出来るので対処はそれほど問題は無い。
最低限の人数で適切な対処をして、作業を進める事が出来る。
それでも戦闘をこなしながらの作業は、なかなか簡単には進まなかった。
「この家も撤去しなくちゃならないんだろ」
「そうだな。
修繕しようにも壊れ過ぎててどうしようもないだろうしな」
「となると、撤去するのも手間だな」
破壊されたり荒らされたりしてる家屋の残骸は、処理に相当な手間がかかりそうだった。
「これだけでかなりの金がかかるんじゃないのか?」
「だろうな。
相当厳しいもんがあるだろうよ」
思わぬ出費になりそうな部分ではある。
単に居場所を作るだけというわけにはいかない。
「材料も大工もつれてこなくちゃならないし。
思ったよりも手間がかかりそうだな」
「ああ。
けど、それでもやらなくちゃ。
俺達の居場所のために」
行く当てのない者達がなるのが義勇兵である。
そんな彼等にとって、自分達の居場所というのはとてつもなく大きな意味を持つ。
それがようやく手に入るというところまで来ているのだ。
退くわけにはいかなかった。
とにもかくにも最初の一週間で、土嚢による急造の壁はこさえた。
田畑だった場所を覆うほどではないが、居住地はなんとか確保した。
これで最低限の整備が出来る状態がととのった。
「それじゃ、食料の買い出しを頼む。
核の精算もな。
戻ってくる時には、食料とかを大量に買い込んできてくれ」
一度何人かを買い出しに戻らせつつ、タカヒロは現地に残って作業を進めていく。
消耗品の補充も必要だし、モンスターに備えておく必要もある。
一度に全員戻るわけにもいかない。
何より怖いのは、他の義勇兵である。
良さそうな場所があれば占有してしまおうと考える連中は多い。
そんな奴らを撃退するためにも最低限の人数は残ってなければならなかった。
これは、モンスターの出没地で活動してる時に散々悩まされた事である。
だからこそタカヒロは、この場所を空ける事無く必ず誰かがいるようにしていた。
敵はモンスターだけではない。
この数年でその事を嫌と言う程思い知った事から生まれた教訓である。