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77回 いよいよ始まるお引っ越し

 かつて存在した、山と山の合間を抜けていく街道。

 比較的通りやすかったそこは、山の向こう側との交易路にもなっていたという。

 モンスターが出現してから数百年、今やその面影もない。

 押し寄せるモンスターによって山の向こう側は攻め滅ぼされた。

 今やモンスターが通り抜けてくる主要な戦場の一つになっている。

 そのモンスターも、今や大分おさまってきている。

 軍が最前線を形成するようになってからは、街道を通ってくるものは激減した。

 なのだが、交易路としての価値はいまだに復活してない。

 山の向こう側との取引が成立しないのだから当然である。

 それに、減ったとはいえモンスターが出現しなくなったわけではない。

 相変わらずモンスターが流れ込んで来るその場所は、人を寄せ付けない戦場となっていた。



 だからこそ、義勇兵にとっては格好の狩り場にもなり得ていた。

 何せ定期的にモンスターが流れ込んで来る。

 稼ごうと思ったらこれほどの好立地はない。

 問題なのはどうやって宿泊するかであるが、これもかつての宿場を使う事である程度は解消出来た。

 モンスターの襲来で崩壊しているが、場所そのものは申し分ない。

 水が確保出来る場所にあるし、壊れた建物などは撤去して再建すれば良い。

 長期間の滞在が出来るように、様々な義勇兵が手を加えていった。

 そして宿場は、モンスターに対抗する砦へと変貌していった。



 タカヒロ達が向かったのはこういった元宿場の一つである。

 宿場としては規模が小さく、大規模な集団の駐留には向かない。

 それもそのはず、元々は山間にある小さな農村であったという。

 わずかに開けた場所に田畑を作っていたとか。

 宿場といっても、農作業の傍らやっていたという。

 あくまで農作業の余禄といった程度のものだったとか。

 その為、大規模な義勇兵の駐留場所にはなり得なかった。

 場所も街道からは少し外れてるというか奥まった場所にある。

 その不便さが敬遠されてほとんど手つかずであった。

 だが、タカヒロ達にとっては都合が良かった。



 規模が小さいといっても、タカヒロ達十数人の集団ならば充分な広さがあった。

 街道から少し離れてるのも、さほど大きな問題ではない。

 町からモンスターの出現地に出向くよりはマシである。

 それだけモンスターはそこらにうろついている。

 街道に直接面してない事も、防衛を考えれば有利であった。

 モンスターに直接触れる事がないから、脅威から逃れる事が出来る。

 街道沿いの宿場としては使いづらいが、義勇兵の拠点としては悪くはなかった。



 ついでに、田畑を復活させる事が出来れば、ある程度の自給自足が出来る。

 その分の出費を抑える事が出来るかもしれない。

 もちろん、これが目当てというわけではない。

 田畑を耕して糧を得るのは、あくまで補助のようなものだ。

 基本はモンスターを倒す事で得られる収益である。

 それを少しでも底上げ出来ればありがたいという程度である。

 だが、とりあえず食い扶持が確保出来ればそれにこしたことはない。

 そういう面も、この場所の利点の一つであった。



 問題をあげるとすれば、かなり荒れてて傷みが激しいこと。

 ほとんど使われてこなかったから、これはやむをえない。

 他の義勇兵が使ってるところならば、多少は整備がされてるのだが、ここはそうではない。

 住み込めるようにするためには相当な出費と労力が必要になる。

 このあたりは甘受するしかないところであった。

 もっとも、手が入ってないからタカヒロ達が入り込む余地があった。

 他の義勇兵も出入りしてる所だと、住み着く事が困難になる。

 それだけの場所がなくて、居場所を作る為の工事が必要な事もある。

 先住者との付き合いもどうしても必要になる。

 それらが無いというのは、大きな利点ではあるだろう。



 馬車を連ねてタカヒロ達はそこへと入っていく。

 モンスター以外に誰もいない廃村へ。

「それじゃ、やってくぞ」

 スコップを片手にタカヒロはそこへと向かっていった。

 村の中には様々なモンスターがいる。

 まずはそれらを叩きつぶすために。

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