73回 とりうる手段の中で出来る事を模索していくとこうなってしまったというだけである
「頭を見ていて思ったんだがな。
俺らにはこれが一番かもなって」
「何が?」
「奴隷だ」
そう言ってトシノリは考えを披露していく。
「俺らに縁談なんてまず無理だ。
そんな縁がそもそも無い。
無いものを求めてもしょうがない。
けど、手にある物を使ってどうにかなるものもある」
「だから奴隷だと?」
「そういう事だ。
残念だけど、世の中身を堕とす奴は多い。
身売りしなくちゃならんのはな。
その中なら、俺達にも選択肢があるってもんだ」
危険であるが金を貯められる義勇兵だから出て来る考えであろう。
一般人より良い稼ぎが出来るようになれば、奴隷を囲う事も出来る。
それまで生き延びねばならないが、生き延びる事が出来たら選択肢は多い。
「金で全部が解決するんだ。
後腐れがなくていい」
割り切る事が出来るならば、そう言えるかもしれなかった。
「それで身の回りの世話をさせると」
「そういう事だ。
色々とな」
「色々っすか」
「そうだ、色々だ」
「それってつまり、エロい事も含めてですよね」
「もちろん」
何を今更とトシノリは思う。
「慈善事業で見受けするわけじゃない。
それだけの覚悟はしてもらわんとな」
「酷え話だ」
「しょうがないだろ。
この通りの年齢だ。
女を囲おうと思ったらこうするしかない」
それもそうだと誰もが思った。
「だから、お前達。
若いうちに頑張っておけ。
でないと、俺のように寂しい老後をおくる事になるぞ」
「ああ、分かった」
「貴重な教訓と思う事にするっす」
「でも、そうすると俺もかなり手遅れになりますね」
マサルとコウゾウはともかく、フトシはそろそろ年齢的にまずいところに来ている。
「これは、オッチャンにならって奴隷購入を考えねばならないかもです」
「まあ、だとしてもだ。
嬢ちゃんみたいな綺麗どころが手に入るかどうかは分からんがな」
「確かに」
そこで皆が笑い声をあげた。
「頭は本当に上手くやったよ」
「ですね。
まさかあんな可愛い娘をつれてくるとは」
「しかも、奴隷として売られたその日に掴まえたらしいし」
「なんていうか、運の引きが良いっすよね、本当に」
「その運の良さも実力のうちなのかもしれんのお」
しみじみとトシノリは語った。
「出来れば俺も、ああいう美人さんに世話をしてもらいたいもんだ」
「かなり難しいのでは?」
「分かってるよ、それくらいは」
「でもまあ、家を構えるんだ。
その中の事をやってくれる者がいないと話にならん」
「確かに」
「家を空けてる時に色々やってくれると助かるし」
「何にしても人は必要だ。
そしたら、奴隷にさせた方が安上がりになるからのお」
最初に支払う金は高いが、その後数年間は何も支払う必要は無い。
衣食住は用意せねばならないが、定期的に給料を出す事は無い。
人道にもとる事であろうが、そういう意味でも便利な存在ではあった。
「考えておかねばならない事だからのお」
言われて誰もが考えた。
これから構える予定の家と、その中の整理などについて。
どうしても人がいるという事と、その人をどうやって揃えるかを。
「それも、若くて綺麗な女なら最高なんだがのお」
「だよなあ」
「それもそうっす」
「まさしく」
結局、話はそこに戻っていくが、それでも彼等は真剣にどうするかを考えるしかなかった。
避けられない問題なのだから。
「まあ、今は頭がどうするかが気になるっすけどね」
「俺達の最先端を行ってるわけっすからね」
「上手くやってくれるといいけど」
「まあ、頭なら何とかしてくれるだろうさ」
信じているのかどうか分からない口ぶりで、仲間は自分達の頭領の成功を願った。