71回 見送る者達の邪悪だったりする視線と考えとか
「そんじゃ、行ってくる」
「行ってきます」
タカヒロとミオが連れ立って外に出ていく。
それを関係者達はニヤニヤと邪悪な笑みで見送った。
「あれってデートだよな」
「違いない」
だいたいがそんな事を口にしていく。
「ようやく大将もその気になったっすね」
「意外と奥手っていうか、引っ込み思案っていうか。
女には手を出さない人だからな」
「てっきり男の方が好きなのかと思ってたよ」
「これでその疑惑も少しは払拭出来るかもしれないのお」
仲間から結構酷い事を言われていく。
居合わせたサキやカズマも、
「あの馬鹿、余計な事までしなければいいけど」
「そんな度胸があったら、とっくにやってるだろ。
まあ、今度でさすがに腹をくくるかもしれねえけどな」
こちらはこちらで状況を楽しんでるようではある。
サキは多少苛立ちや憤りなどもあるようだが。
それとて、タカヒロが不実な事をした場合への警戒が主である。
責任をとるなら、むしろ後押しするであろう。
「まあ、一緒に出かけてるんだ。
何かしらあるだろうさ」
「でしょうね」
カズマの言葉にサキも頷くしかない。
男と女が一緒に出かけるというのは、割とはっきりした意思表示でもある。
表現する事を自主規制せねばならないような事をしてくるというようなものである。
実際にやるかどうかは別として、そうなるのも承諾してるととられかねない。
それがこの世界におけるデートというか、一緒に出かけるという行為の意味するところであった。
もちろん、本当に買い出しだけの場合もあるが、それとは別に男女一人ずつというのは色々な意味にとられる事だった。
「あいつもそれなりに身を立ててるんだから、別にいいんじゃねえの?」
「分かってるわよそんな事。
問題は、そんなつもりもないのに遊ぶ事だから」
「それこそ問題ないだろ。
あいつの堅物さは知ってるだろ。
不用意な事はしないし、手を出すなら最後まで責任とるだろうさ」
このあたりは日頃の仕事ぶりからの評価である。
「女だけは例外って事はないだろうよ」
「だといいけど」
「もう少し信じてやれよ、あいつの根性の無さを」
売春宿にも通わないタカヒロへの、それが周囲からの評価でもあった。
半分以上冗談で言ってる事ではある。
だが、それをかなり心配してる者達もいる。
「でも、大将だからな。
ちゃんと手を出すかどうか不安だ」
「そうだよな。
女の経験もなさそうだし」
「大丈夫なのか不安になるっす」
「それを言ったらお前さん達も同じだろ。
売春宿以外で女と接した事があるのかのお」
「それは……」
「まあ……」
「ぐうの音もねえっす……」
「そうだろうな」
余計な心配については年長者からの一言で撃沈する。
「まあ、あの二人というか、頭については頭に任せよう。
失敗するならするで、それもネタに出来るからのお」
「……なにげに酷い事言いますね」
「なに、年寄りをこき使ってるんだ。
これくらいはさせてもらわんとのお」
それはそれでなかなかに酷い言い分である。
「だが、俺もあまり人のことは言えんのだがのお」
「そういえば、オッチャンも義勇兵だったな」
「女の接点なんてないんじゃないの?」
「当たり前だ。
あるわけないだろ。
だから、奴隷でも買おうかと思ってるんだ」
「それも理由かよ」
「そうだ。
今更女とまともにつきあえるわけないだろ。
義勇兵でまともな縁談が来るわけもない。
貴族様じゃないんだから恋愛なんて論外だしな」
この辺りは社会事情も絡んでくる。




