7回 今後の身の振らせ方について考える 2
(とはいえ……)
義勇兵にはさせたくない。
そうは思うがそこで考えがまた循環する。
(他に何があるってわけでもないし)
結局そこに戻ってしまう。
食い扶持を稼がせるためにはそれなりに仕事をしなくてはならない。
だが、その働き口がない。
唯一なれるのは義勇兵だけ。
その義勇兵は危険なモンスターとの戦闘をせねばならない。
だから他の仕事をさせたいのだが……という考えを繰り返す。
堂々巡りも良い所だ。
それでもどうにかせねばならない。
出来なければ、明日からの食い扶持に困る事になる。
(どうしたもんだか)
考えがまとまらないままにいつもの寝床に到着してしまう。
町にやってきてから世話になってる店だ。
宿とは少し違う。
ただ、最初に来た頃からずっと寝泊まりしている。
やや躊躇いながらタカヒロは、ミオの手をひいて中に入ろうとする。
「あの」
その直前、ミオが立ち止まってタカヒロの手を引く。
「ここ、どこ?」
「ああ、言ってなかったな」
ここに至るまでろくろく説明もしてなかった。
町についても、仕事にしても。
あらためて目の前の店について語っていく。
「周旋屋だ」
周旋屋。
日雇いの仕事などを斡旋する生業である。
長期的な雇用はなかなかないが、短期的な作業などは比較的多い。
そんな短期業務に人を送り込むのが周旋屋である。
タカヒロも町に来た当初はここで仕事にありついていた。
というより、町に来る者達がとにかくやってくるのが周旋屋である。
常に仕事があるとは限らないが、何かしらの仕事を斡旋してくれるのはこういった商売くらいである。
また商売柄、頭数を確保せねばならない。
その為、人が寝泊まり出来る寝床を用意してるのが常である。
非常に安価ではあるが金をとるので、本当に無一文では利用も出来ないが。
それでも、日当を手に入れれば一晩過ごす場所を手に入れられる。
伝手も縁故もない者達にとっては、数少ない避難所のようなものだった。
義勇兵もだいたいにおいてこういったところを拠点としていた。
だいたいの者達が、無一文で町に流れ着いてくるので、まずはこういったところで日銭を稼ぐためである。
ある程度まとまった金が手に入り、戦闘用の装備を手に入れてからも、周旋屋を中心に行動する事が多い。
理由はいくつかあるが、代表的なのが仲間を見つけやすいからだろう。
同じような境遇の者が多く、ならばモンスターを倒しにいこうと考える者が見つけやすい。
日雇いなどの短期の仕事は常にあるわけではないので、より安定した稼ぎが必要になる。
そうなると、常に出現するモンスターを倒すというのは定期的な収入源になり得る。
また、そんな義勇兵を求めて依頼を出してくる者達もいる。
近隣に出現したモンスターを倒して欲しいとか、行商の護衛だとか、村の警備だとか。
周旋屋の中には、こうした義勇兵への仲介が主になってる所もあるという。
そこに人が集まってるのだから、仕事が舞い込むのも当然ではあるだろう。
「────そういうところだ」
「へえ……」
分かったのか分かってないのか。
曖昧な返事をしてミオは周旋屋を見る。
「ここで突っ立っていてもしょうがないから。
入るぞ」
「う、うん」
少し緊張しながらミオは頷く。
そんな彼女の手を引いて、タカヒロは店の中に入っていった。