67回 早急なる引っ越しを考えていく
「まあ、連中の気持ちも分かるからのお。
やった事を許さんでもいいが」
「でも、このままじゃまずいっすよね」
「なんとかしたいところだな」
「でも、どうすんだよ。
まさか全員と喧嘩するわけにもいかねえだろ」
周りの連中のやっかみと嫉妬と羨望とこらえきれない何かの集合体。
それらを凌いだあと、タカヒロ達の仲間はこれからの事を考えていった。
「こりゃ、早いうちにここを出られるようにするしかないかもな」
「まあ、金はあるから家を建てる事は出来るし」
「頃合いかもしれないな」
「ただ、そうなるとのお」
全員の視線がタカヒロに集まる。
「言っちゃなんだが、そのお嬢ちゃんに金を使っちまってるんだろ」
「まあねえ……」
ちらりとミオの方を見る。
申し訳なさそうに肩をすくめてるのが見えた。
「まあ、それをあれこれ言いたいんじゃない。
それで金がないのが問題になるのお」
「稼げば良いのは確かだが、それまで時間がかかるしな」
「けど、あいつらは待っちゃくれないだろうな」
他の作業員やら義勇兵の態度から、あまりここに長居するのも考えものである。
「そこで考えがある」
トシノリがそう言って口を開いていく。
「50万くらいは融通出来る」
その言葉にタカヒロは意表をつかれた。
「どういう事だ?」
「何、建てる家の水準を少しばかり落とせばこれくらいはな」
事も無げに言っていく。
タカヒロの方はその意味が飲み込めない
「いや、どういう事だってば」
「分からんのか?
金を貸すって言ってるんだ」
「それは分かるよ。
でも、何で?」
「別に。
お前さんがここで足踏みしてても困るってだけだ」
「それもそうだな」
フトシが頷く。
「俺らが動けるのは大将がいるからだからな。
それが変なところで足を引っ張られたら困る」
「そうっすね。
生活する場所も離れると面倒も多いし」
「そういう事なら話は早いわな」
そう言って全員がトシノリの考えに賛同していく。
「じゃあ、俺も少しは」
「俺も出すか」
「世話になってるしな」
「大将ならきっちり返してくれるだろうし」
そう言って皆がタカヒロへの支援を申し出ていく。
「けど、どれだけ出すかだな。
家はそれなりのものにするにしても、やっぱり高いし」
「オッチャンはどうするつもりなんすか?」
仲間からはオッチャンと呼ばれるトシノリは、事も無げに答えた。
「なに、家じゃなくて物置にするのさ」
「え?」
予想外すぎる答えに、全員口を開いたまま固まった。




