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65回 加熱していく所有者と奴隷の周囲

 ミオが周旋屋内で少しずつ顔をおぼえられるようになっていく。

 それにつれて顕著になっていく事があった。

 当然のことながら、野郎共からの関心が高くなっていく。

「誰だあの娘?」

 そんな事を思う奴は確実に増える。

 実際聞き出す奴も出てくる。

「ああ、あの娘か。

 あれはうちに出入りしてる義勇兵の奴隷だ」

 隠す必要もないので周旋屋としてもそう答える。

 その事はすぐに周旋屋の野郎共の間にひろまっていく。



「奴隷?

 確かに左手の甲に印があるけど」

「どいつの奴隷だよ」

「うちの人間だって言ってるけど」

 口々にそう言い立てる連中は、すぐにその答えを知る事になる。



「あ、おかえりなさい」

「ただいま。

 留守中、何かあった?」

「ううん、何も。

 タカヒロ兄ちゃんは?」

「まあ、特に何もなく。

 上手く稼いでこれた」

「良かったね」

「まあな。

 また明後日あたりから仕事に出るけど」

 そんな言葉を交わしてる相手を見つけた事で、疑問の大半は解消されていった。



「あいつか」

「誰だあいつ」

「義勇兵らしいけど。

 知ってるか?」

「いや、全然」

「大手のやつってわけじゃないよな」

「そこらの小規模の連中だろ」

「でも、そんなに稼いでるのか?

 奴隷を抱えられるようには見えないぞ」

「いや、あいつらってあれじゃねえか」

「なんだ?」

「ほら、落ちこぼれで外を回ってるって」

「ああ、あいつらか」

「そういや、結構長くやってるな」

「じゃあ、儲けてるのか?」

「それは分からんが…………。

 でも、奴隷がいるって事はそれなりに稼いでるんだろ」

「いや、あいつら家を建てるって言ってるから」

「ああ、そんな話もあったな」

「本気で言ってるのか?」

「分からねえ。

 けど、あいつら長いこと同じ面子でやってるのは確かだ」

「じゃあ、そうとう手練れって事なんじゃ」

「かもしれねえ」

「そこの人間って事か…………」

 何も知らなかった者達も、だいたいこんな風に事実を知っていく。



 タカヒロの事などを知っていた者達は、

「ちくしょう、上手くやりやがって」

「あいつ、稼いでるとは思ってたけど、まさか奴隷を手に入れるまでとは」

「あんな可愛い娘を…………」

「上手くやりやがって」

「いいなあ」

「俺も金を貯めてれば」

「あんな可愛い娘を…………」

「売春宿にも行かないわけだ」

「そりゃあ、ずっと囲う事を考えたら、遊びに通ってなんていられねえだろうしなあ」

「俺も我慢してれば今頃は」

「あんな可愛い娘を…………」

 こんな調子でタカヒロを羨んでいく。



 憶測と事実が入り交じり、様々な話が出てくる。

 根も葉もない出鱈目から、かなり正確な推測まで様々だ。

 だが、最近現れた割と可愛い娘と、それと親しく話してる野郎という事で話題性は充分だった。

 娘への憧憬や欲望と、野郎への反発と嫉妬が生まれていく。

 それらはやがて────、



「おい、タカヒロ!」

「上手くやりやがったな」

「羨ましいぞ、この野郎」

「俺らにも御利益を寄越せ」

「あんな可愛い娘を…………」

という事になっていった。

 野郎共からの憎しみと羨望が叩きつけられる。

 それに対してタカヒロは、



「なんでだよ?!」



と叫ぶしかなかった。

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