64回 奴隷の働きぶりは仕事の斡旋業者の眼鏡にかなってるようです
仕事をするようになってから、ミオの行動範囲は増えていった。
基本的には周旋屋の中で女作業員の洗濯物を片付けている。
仕事を持ってる者達にとって、これはかなり重宝していた。
それに加えて、外でも同様の仕事をこなすようになっていった。
町の中でも独身者は洗濯物を片付ける暇が無い。
この為、洗濯屋の需要は結構高い。
洗濯機のないこの世界において、個人が衣類を洗うのはかなり難しいのだ。
そんな町の洗濯屋からやってくる仕事をまずは受けるようになっていった。
それらが無い時も周旋屋の中で仕事をこなしていっている。
掃除は恒常的にあるし、食事の準備や配膳に皿洗いなどもある。
片付けねばならない仕事は多く、引く手は数多であった。
そうしながら周旋屋の方もミオの評価を定めていく。
登録証で見れる技術レベルだけではない。
働き方などから伺う事が出来る態度などを見ていく。
そちらの方でもミオの評価は高い。
「働き者だな」
技術レベルはまだ物足りないが、決して仕事から逃げようとしない。
仕事で楽をしようとする場合は、手を抜いたりするのではなく、手際よく片付けて余裕を作ろうとする。
決して秀でた能力はないが、最後まで片付けようという意志がある。
労働者として最も大事な素養である。
人間としての美徳でもあるだろう。
「頑張りすぎるのも困るが、怠けるよりはいい」
そういう周旋屋は、外の仕事へも少しずつ出していくようにしていった。
そうして貯まった経験値で、ミオは最初のレベルアップを迎えようとしていた。
何にしようと迷いつつ、まずはよくやってる洗濯の技術を上げる事にした。
これで洗濯のレベルが2から3に上がる。
作業員としては最低限求められる水準に到達した。
一日にこなせる洗濯物の量が増えていく。
周旋屋も外の仕事を少しずつ増やしていった。
それでも周旋屋内での仕事が多く、なかば従業員と化している。
掃除などで屋内にいる事も多く、寝泊まりしている作業員と顔を合わせる事も多い。
すれ違う度に「おはようございます」「こんにちは」「おかえりなさい」などと声をかけていったりもする。
たったそれだけではあるが、それも続けば顔をおぼえられる事にもなる。
それが少しずつ顔なじみを増やしもした。
知り合いのいないミオにとっては、これが貴重な人脈にもなっていく。
馴染みの人間がいるのは、心細さを減らしてくれる。
身寄りが事実上存在しないミオにとっては、これがありがたかった。




