63回 奴隷の今後とこれからと未来について 4
「でも、本当にどうするの?
奴隷なのは仕方ないとしても、これからかなり大変な目にあうよ」
「だろうなあ」
サキの懸念にタカヒロも頷く。
奴隷という身分がもたらす悲惨なこれからを考えると、なんとかしてやりたくなる。
「ここにいる間は、あたしらが仕事を回す事も出来るだろうけど。
周旋屋だって仕事をさせるだろうさ。
けど、年季明けはどうするの?」
「仕事を身につけさせて自活出来るようにしておくつもりではいるよ。
さっきも言ったと思うけど」
「それは聞こえたよ。
けど、それだけじゃないってのも分かってるだろ」
「本当にあの娘の身の振り方を考えてるんなら、最後まで面倒をみるのも考えの一つだぞ」
サキもカズマもそう言ってより深く考えるよう促していく。
社会のあり方も絡んでくる事である。
仕事をおぼえさせて自活できるようにするだけでは足りないかもしれない。
そう思えてきたタカヒロは、自分の考えがまだ甘かったかと考えていく。
「そしたら……こっちで引き受けるか」
すぐにどうこうする事は出来ないが、考えはある。
「俺達の居場所が出来たらそこで働いてもらえばいいかな」
「それって、つまりどういう事だよ」
カズマが意味を問うてくる。
「俺達が家とかを建てるつもりだって知ってるだろ。
そこの管理とかお願いしようと思ってね」
留守番、その間の掃除や洗濯などなど。
皆がいる時には食事などを作ってもらいもする。
「つまり、常駐とかメイドとか、家政婦ってこと?」
「そうなるか?
まあ、他に働きに出すのが不安だってんなら、それがいいかなと思うけど」
タカヒロとしては、このあたりが妥当だと思っていた。
「そりゃあ、他所で仕事させるよりはいいだろうけど」
「奉公先でお手つきされるなんて危険はないわよね」
タカヒロの案ならば、確かにさほど問題は発生しないように思えた。
元奴隷だからと見下されず、不当な扱いを受けない場所というならば。
特にお手つきにされる可能性を考えれば、それはかなり防げるだろうと思えた。
女が働く先の者達に手籠めにされる事は珍しくもない。
そうおおっぴらにやるような屑な人間はそれほど多くはないが。
それでも、身分差につけ込んだり、労使関係の強弱を盾にするアホは後を絶たない。
運が良けれ(?)ば、そのまま囲われる事もある。
だが、多くの場合そのまま捨てられていく。
その際、多少なりとも手切れ金が出されれば良い方である。
腹に子供を抱えたまま放逐されるなんて事の方が多い。
中には、働いてる途中で行方不明…………という事にして、口封じのために殺されるなんて事もある。
元奴隷という経歴があれば、こういった対象にされる可能性は飛躍的に高くなる。
なお、これの被害者は女だけに限らない。
男も屋敷の奥方などに誘い込まれるなんて事もある。
この場合、生きて帰れる事はまずない。
誘い込んだ方が「貞淑な妻」の評判を保つために、生きた証拠である使用人の男を殺す事がほとんどだ。
このようなえげつない事実がある。
タカヒロの考えはこれらを避ける事にもつながる。
年季明けに行く場所としては悪くないだろう。
「まあ、最低でもそれくらいやれば文句ないんじゃないの」
「勝手に放り出したりしないならね」
「そんなつもりは無えよ」
自活出来るなら独り立ちさせたいとは思っている。
だが、帰ってくる場所くらいは作ってやりたいとも思っていた。
しかし、それでも嫁はないよなあ、と思ってしまう。
考えがあまりにもぶっ飛びすぎている。