60回 奴隷の今後とこれからと未来について
「でも、ミオの方も問題が無いようで何よりだよ」
労働条件などについての話が終わってから、タカヒロはそんな事を漏らす。
「何も出来ないんじゃ本当に困るから」
生きていくためには働かねばならない。
それが出来ないのではどうしようもなくなる。
この部分で問題がないのは良い事だった。
「仕事はとりあえず洗濯だけでも引き受けておいて。
周旋屋とか外の仕事とかは、まだ無理して考えなくていいから」
「うん。
でも、兄ちゃんはそれでいいの?
お金が無いと困るでしょ」
「気にするな。
そこまでして稼がなくてもどうにかなるくらいは稼いでるから」
義勇兵としての収入は割と多いので、ミオ一人を養うのは問題がない。
金のやりくりが大変なのは確かだが、それは家を建てる事を考えてるからである。
それが無ければ、生活そのものは問題がない。
お釣りがかなり大量に出るくらいには余裕がある。
「働いてくれれば、そりゃあ楽だけどさ」
だが、金銭収入だけが目的でミオを働かせてるわけではない。
「最終的にお前が自活出来るようになってくれないとな」
「へ?」
素っ頓狂な声がミオの口から上がる。
「今は奴隷だけど、そのうち年季明けになる。
そうなりゃ自分で生きていける。
けど、生活手段がなけりゃどうにもならん。
金を稼げないとどうしようもない」
「それで、ここで仕事を?」
「ああ。
そんなに稼げるわけじゃないけど、最低限はどうにかなる。
あとはレベルを上げて、少しでも雇われる可能性を高くしていけ。
そうすりゃ食っていくくらいならどうにかなる」
ミオに仕事をさせる一番の理由はこれである。
「人と接する事も多くなるから顔も広くなる。
そうすれば伝手を辿ってどうにかなる事も多くなる。
その機会も増やしていけ」
無理をしてでも外に出る意義の一つである。
「ついでに、ろくでもない奴がいるってのもおぼえてこい。
縁を持つ必要は無いけど、こういう奴もいるんだって知っておくと役に立つ。
言っちゃなんだが、お前の親みたいなのはあちこちに転がってる。
それを知っておくのも勉強だ」
「それは……あんまり見たくないかも」
「まあな。
俺だって出来れば近づけさせたくない。
けど知らないとどうしようもない事だってある。
知って、対処法を考えておけ。
無駄になればいいが、これが役立つ事もある」
本当に無駄になれば良いがとは思う。
だが、思っていてもどうにもならないのが世の中でもある。
「何にせよ、いずれお前自身に役立つなにかになる事もある。
それを手に入れる為にも頑張ってこい」
「それはいいんだけどさあ」
一通り話をしてるところに、仕事から戻っていたらしいサキやカズマがやってきた。
「あんた、女一人を奴隷にしたんだからね。
その責任をとってもいいんじゃない?」
「そうそう。
他で働かせるんじゃなくて、最後まで面倒をみるってね」
「どういう事だ?」
「だから、あんたが面倒見るのよ。
最後の最後まで」
「嫁にしろって事だよ、ようするに」
「は?」
「え?」
言われてタカヒロとミオは硬直した。
「奴隷だったのがまともに生きていけると思ってるの?
世間の目は冷たいんだからね」
「それなのに年季明けで『それじゃ、さよなら』ってのはないだろ。
最後まで引き受けてもいいんじゃないのかなあ?」
サキは割と真剣に、カズマはからかいながらそんな事を言ってくる。
そんな二人の前で、タカヒロは頭を抱え、ミオは顔を赤くしていった。




