55回 奴隷のお仕事 2
手洗いで進める洗濯は午前中全てを使っても完全には終わらない。
もとより全部を終わらせるのは一日では無理だ。
なので、作業量はある程度考えて洗濯を引き受けている。
そうでないと幾ら時間があっても足りやしない。
昼にさしかかり、洗濯は一度中断する。
まだ多少残ってるが、それよりも脱水と物干しをしなければならない。
脱水機は便利だが、一度に放り込める量が決まってる。
どうしても小分けにしていかねばならない。
洗い終わったものをその中に放り込み、次々に水気を抜いていく。
そうする間に、洗濯の間に少しずつ脱水をしていた物を物干し竿にかけていく。
水気が抜けてるのでかなり早く乾くはずであった。
脱水が終わった物も同じように物干し竿に下げていく。
午後の日差しの中で、それらは完全に乾くはずだった。
それらが終わってから食事に。
事前にタカヒロが支払ってるので、周旋屋での寝泊まりと食事については問題はない。
定番の定食を受け取って席に行き、そこで一人で食事を始めていく。
大勢の中での食事というのは初めてなので少々気後れする。
他の者達がミオを向いてるというわけではないが、何となく人に圧倒されそうになる。
このあたりは慣れなのだろうが、どうにも居心地が悪くなっていく。
何かと気にかけてくれるサキがいないのもその原因かもしれない。
今、彼女は義勇兵として仕事に向かってる。
話に聞くに、一週間は帰ってこないという。
一応、サキ以外の者で宿舎に残ってる別の人間が声をかけたりはしてくれる。
だが、その者達も今は外に仕事に出ている。
ここにミオの顔なじみは今のところ一人もいない。
大げさだが、孤独と言えばそうであろう。
だからこそ、馴染みでもない他人の存在が気になるのかもしれなかった。
(気にするなって言ってたけど)
タカヒロがそう言ってたのを思い出す。
周りはこっちを別に気にしてるわけではないとも。
だが、今までと違う環境なのでどうしても緊張してしまう。
馴染むのを待つしかないのだろう。
(食べたら、また洗濯に戻ればいいけど)
少しでも食べてさっさとここから退散しようと思ってしまう。
嫌いなわけではない。
ただ、まだ馴染めないだけである。
少し早めに洗濯場所まで戻ってきて、そこから作業を再開する。
洗濯も少しは進めていくが、ここからは脱水と乾燥が中心となる。
何せ、干せるのは日が出てる時間だけ、それも出来るだけ早い時間でなければいけない。
いくら脱水して乾燥室に入れられるとしても、それで完全に乾くわけではない。
どうしても熱気が、日光が必要だった。
なので、手早く洗濯した物を干していかねばならなかった。
乾燥室も出来るだけ使っていく。
動かす為に必要な核は作業員や義勇兵からもらってるので問題はない。
脱水機も乾燥室も、今は最大限に稼働して洗濯物を片付けていく。
その間にミオは、早めに干して乾いていた物を取り込んでいく。
そして、脱水や乾燥(半乾き状態)にまでなっていた物を新たに干していく。
昼が終わり夕方に入る前の、この日最後になるだろう天日干しである。
一日の洗濯はここで終わりとなる。
これから洗濯をしても、脱水して乾燥室に入れたとして完全に乾きはしない。
中途半端に乾いて水気がどこかに残る事になる。
残ったものは明日にまわすしかない。
だが、それでも結構な量の洗濯物が片付いた。
一日の作業量としては順当なところだろう。
ミオの一日はだいたいこんなものになっていた。




