表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

54/259

54回 奴隷のお仕事

「さてと」

 遠ざかっていく馬車を最後まで見送ってる暇もない。

 周旋屋の宿舎に戻って仕事を始めていく。

「頑張っていきますか」

 そう言いながらミオは、出された洗濯物を回収していった。



 タカヒロに買い取られ、周旋屋の作業員になったミオの生活は変わった。

 やる事そのものは家にいた頃と変わらない。

 家事をこなして一日が終わっていく。

 なのだが、その意味合いが少し変化してもいた。

 以前は強制労働のようなものであった。

 また、少しでも仕事をおぼえて売値を高く出来るようにという親の願望もあった。

 だが、今は違う。

 自分の生活を支えるための仕事だ。

 やらねばならない、という部分は変わらない。

 誰かに強制されてないかわりに、生活のためにというある種の強制はされている。

 しかし、それでも今までにない大きなものがある。

 自由だ。



 奴隷であるのだから完全な自由があるわけではない。

 タカヒロに命じられたら逆らう事は出来ない。

 だが、そのタカヒロは無理難題をふっかけるような事はしてない。

 ミオを追い詰めたり追い込んだりするような事もない。

 この先はどうかは分からないが、今のところミオが虐げられる気配はなかった。

 事実上、ミオは奴隷という状態から解放されてるようなものではあった。



 気が楽になっていく。

 親の目があった頃にはない、誰かに行動や言動を制限される事のない自由があった。

 それは、思った事もないほどの晴れやかさを感じさせてくれた。

 何もないというのは、これほどまでに気分が晴れやかになるものなのだと。

 いかに家というものが、家族というものが重荷であったかを感じさせる。

 それに比べれば今は極楽のようなものだった。



 やらねばならない事はあるけども、それで苦しい思いをするわけでもない。

 仕事として周旋屋の女作業員の洗濯物を引き受ける事になったが、それは家でやってきた事である。

 量は格段に増えたが、だからといって大変というわけでもない。

 脱水機と乾燥室のおかげで手間は大幅に省ける。

 脱水したものならば簡単に乾く。

 量が多くても、乾燥室に入れておけば乾燥までの時間を減少させられる。

 天日干しにしておく時間もそれほど長くはかからない。

 物干し竿が空くのを待たずに済む。

 回転を早くする事が出来る。



 ただ、洗濯そのものはどうしようもない。

 手で洗っていかねばならないので、それだけで一日が終わってしまう。

 それ以降の作業は大分短縮出来るが、こればかりはどうしようもなかった。

 なので、午前中に出来るだけ手早く終わらせるよう努力する事になる。

 午後は干していきたいからだ。

 腕の見せ所である。

 タカヒロはこの洗濯部分ももっと改善したいと言っていた。

 どうやるのかは分からないが考えがあるらしい。

 ただ、実現させる目処は今のところたたないようでもある。

 やり方そのものは、脱水機と同じようなものだとは言っていたが。

 それがどういったものなのかはミオには見当も付かなかった。



(まあ、兄ちゃんならなんとかしちゃうかもしれないけど)

 昔から不思議な智慧のある人間だった。

 様々な改善案を出して村に貢献していた。

 その突拍子もない発想がどこから来るのか、みんな不思議がっていた。

 その考えが、タカヒロの前世の世界の記憶によるものだとは、さすがに分かりはしなかったが。

 ただ、タカヒロの考えを実現化すれば、確かに物事がよくなっていった。

 洗濯についても同じ事が言えるだろうとは何となく思った。

(早く実現してくれればいいけど)

 洗濯物を手にとってながら、そんな事を考えた。

 さすがに何十人もいる作業員の洗濯物はかなりの量だ。

 全部片付けるのは大変である。

 タカヒロがやろうとしてるのが何であるのかは分からない。

 だけど、それが作業を楽にするのならば、早く実現して欲しかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。




活動支援はこちら↓

あらためて支援サイトであるファンティアの事でも
https://rnowhj2anwpq4wa.seesaa.net/article/501269240.html
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ