52回 技術とレベルと経験値についてのあれこれ
技術レベルを上げるのは簡単ではない。
レベル1つを上げるのに必要な経験値は1万点。
これをこなすだけの経験値を得るには、だいたい半年前後ほどはかかる。
これは毎日定期的に働いての話だ。
何をするかによって差はあるが、仕事や作業を通して得るのが普通である。
また、頭を使って考えることでも経験値は得られる。
そうやって得られた経験値で技術レベルを上げて成長をしていく。
なので成長はどうしても遅くなる。
だいたいの人間が、1年間にレベルが二つ上がるのが普通。
これ以上になるのは、仕事にかなりうちこんでいねば不可能だ。
なので、人間が一生のうちに得られるレベルの総数は、合計40前後になる。
仕事で必要な技術のレベルを合わせるとだいたいこの数値になっていく。
成長はゆるやかなものと言って良い。
だが、ここに例外が存在する。
技術とは様々な要素が幾つか集まって成り立っている。
その一部だけに限定するなら、レベルの上昇はかなり早い。
戦闘においては、戦闘技術を限定する事でこれが出来る。
たとえば、素手による戦闘や刀剣、槍、長刀に斧槍、棒に杖など。
戦闘手段を一種類に限定する事で、かなり早くレベルを上昇させていく事が出来る。
必要な経験値が格段に低いのだ。
その分、他の事が出来なくなる。
こういった不便なところはある。
それでも、求められる水準まで比較的早くたどりつく事が出来る。
これを利用してタカヒロは、スコップによる戦闘技術を出来るだけ上げていった。
技術内容を限定する事で、必要な経験値はかなり低くなる。
レベル1つを上げるのに1万の経験値が必要なところ、限定すれば3000に抑える事が出来る。
半年でレベル1つのところが、2ヶ月弱にまで短縮される。
これは大きい。
もちろん、良い事だけではない。
限定された技術のレベル上昇に必要な経験値は、徐々に上がっていく。
レベル1までは3000で良いが、レベル1から2ならば4000が必要になる。
レベル3に上げるには5000。
こうして徐々に上がっていき、いずれは必要な経験値が1万になっていく。
それ以降も限定技術のレベルを上げていく事は出来る。
だが、さすがに1万を費やすなら、もとの技術を上げた方が効率が良い。
限定技術はこういった事から実質的な上限が決まってるといわれていた。
経験値1万が必要なレベル8。
その手前のレベル7が効率が良いと思われる上限であった。
だが、例え限定敵とはいえ、レベル7までならば通常の技術よりも早く上昇していく。
これは独り立ちしてやっていけるといわれる水準である。
ここまでに必要な経験値は4万2000。
2年余りで到達出来る。
この利点は大きい。
一人ではどうにもならないが、複数の人間で共同作業をするなら問題はなくなる。
大規模な商会や工房などでは、こういった限定技術を持ってる人間が互いに協力する体制になっている。
それに費やした経験値が限定されたものにだけ費やされるわけではない。
限定された技術レベルそのものは他に転換は出来ない。
あくまで限定された物事にのみ効果をあらわす。
なのだが、費やした経験値は無駄にはならない。
それは元の技術にある程度変換される。
費やした経験値は、元となる技術にも反映される。
戦闘技術を例にとるなら、たとえば刀剣限定でレベル3まで上げたとしよう。
この時費やした経験値は1万2000である。
この経験値は元となる戦闘技術にも反映される。
戦闘技術にもそれだけの経験値が入ったとされて。
その結果、元になる戦闘技術はレベル1として扱われるようになる。
もしこれを実質的な上限と言われるレベル7まで上げれば、戦闘技術はレベル4として扱われる。
限定技術に元になる技術が引っ張られる形になる。
こうして引っ張り上げられた戦闘技術は、元の戦闘技術の上昇とは関係がない。
元の技術に経験値を費やしたらレベル5ではなく1から始まる。
だが、こうして上がったレベルには、限定技術で上げられたレベルが加わる。
限定技術で元の技術がレベル1になっているところに、新たに元の技術レベル1をとったら、合計してレベル2として扱われる。
限定レベルを7まで上げたところに、元の技術レベルを1にしたら、元の技術はレベル5として扱われる。
これがあるので限定技術は無駄になるという事もない。
逆の事も言える。
元の技術が上がれば、限定技術にも影響が出てくる。
限定技術レベル1がある所に、元の技術レベルが1になったら、限定技術の方は加算されてレベル2として扱われる。
元になる技術と限定技術は相互に影響を与えあっていく。
ただし、限定技術同士ではこういった影響は与え合わない。
限定技術レベルがどれほど上がり、元になる技術に影響を与えても、あくまで元の技術にのみ影響を与える。
戦闘で言えば、刀剣をレベル7にして、元の技術がレベル4相当とみなされても、槍や薙刀、棒などに影響を与える事は無い。
影響を与えるのは、あくまで元の技術のみである。
逆に言えば、複数の限定技術がもたらす元技術への影響は累積する。
刀剣と槍でそれぞれレベル7まで上げれば、元技術はレベル8として扱われる。
こういった影響を相互に及ぼしあうので、限定技術は無駄というわけではない。
タカヒロはこれを利用してスコップの技術レベルを上げていった。
それに牽引させて戦闘技術を上げた。
例え一つに限定されるとしても、手早くレベル3まで上がるというのは大きな魅力であった。
駆け出しの頃はこれでどうにかして戦闘力を上げていった。
その時に上げていたのがスコップだった。




