51回 モンスターとの戦い方と、使う武器について
スコップ。
本来ならば、土木作業用の道具である。
言わずとしれた、土を掘っていくためのもの。
それをタカヒロは手に取り、迫るモンスターに備えていく。
タカヒロだけではない。
他の者達もスコップを持ってる者はいる。
彼等にとってはそれの方が使いなれた武器であった。
土木作業用の道具であるスコップだが、これの破壊力は案外馬鹿にならない。
そこそこ重さもあり、先端部分は鉄で出来ているから強度もある。
それでいて斧ほど重みが偏ってるわけではない。
柄も長いので振り回して使う事が出来る。
突き刺したり切り裂いたりするのには向いてないが、振り回して叩き込めば相当な打撲を与える。
打ち所によっては骨すらも折るだろう。
武器ではないが殺傷能力はなかなかのものだ。
加えて、土木作業道具だから一般的にかなり普及している。
その分安く手に入れる事が出来る。
にも関わらず結構使えるから重宝する。
どのみち、作業に必要になるのだから、義勇兵ならばたいてい所持している事が多い。
武器を買わずに、こういう武器になるもので戦ってる事など珍しくもない。
一般的な道具であるだけに安く手に入れる事が出来るからだ。
駆け出しの義勇兵ならば珍しい事ではない。
武器を買う金が無くて、他のもので戦うなんて事はざらだ。
鉈や斧なんてのはその代表だろう。
どちらも戦闘用の道具である武器ではないが、戦闘に用いられてもいる。
それと同じで、手近にあるもので戦闘に使えそうなもので戦っているだけである。
タカヒロの場合、それがスコップだったというだけである。
今では刀剣や槍といった武器を手にしてはいる。
タカヒロも腰に刀をはいている。
それでもスコップを主に使っていたりするのは、意外とこれが便利だからである。
刀剣のような殺傷力はない。
斧のような重みで相手を叩きつぶすわけでもない。
槍のような貫通力は期待出来ない。
だが、斧よりは簡単に振り回せて、刀剣よりも重みを叩きつける事が出来る。
その威力は馬鹿に出来るものではない。
何よりも良いのは、安い事だった。
刀剣ならば安物でも2万円や3万円はする。
それだけの価値はあるのだが、おいそれと買えるものではない。
しかしスコップはどんなに高くても1000円や2000円といった程度だ。
現代日本の物価に比べれば高いが、それでも刀剣などよりもよっぽど手に入れやすい。
土木作業道具なので比較的多く流通してるからだ。
多く出回ればそれだけ安くなるという市場の原理や法則の通りに。
なので、手荒に扱っても大して問題は無い。
何なら予備を二つ三つ用意する事も簡単である。
持ち運びには多少苦労するが、予備を揃えておける事は大きな利点である。
壊れてもすぐに持ち帰る事が出来る。
値段の高い武器ではこうはいかない。
金回りが良くなってきたタカヒロ達であるが、刀剣を簡単に幾つも用意出来るものでもない。
造りのしっかりしたまともな刀剣などに至っては、なかなか手が出せない値段でもある。
一振り10万円やら20万円といった刀剣などは、そうそう数を揃えられない。
タカヒロの腰の刀も、比較的簡単に手に入る安物である。
まともなものなどおいそれと買えるものではない。
使って壊れたら損失が大きいからだ。
そして、武器とは使っていっていずれは壊れるものだ。
収入を考えればそう簡単に入手出来るものではなかった。
だからこそ、かなり安く手に入れる事が出来る他の道具が重宝されていく事になる。
スコップがタカヒロにとってよく用いる武器であるのは、こういった理由による。
加えて言うなら、扱い慣れたものであるというのも大きい。
スコップ限定でならば、取り扱いの技術レベルはかなり高くなっている。
他に優れた道具があっても、扱い慣れたものや手に馴染んだものが良い。
土木作業を続けるためだけではない、タカヒロがスコップを使い続けるのはこれが理由でもある。