49回 モンスターを倒す場所
ともあれモンスターの出現地域に出向き、活動を始めていく。
馬車で数時間、ある程度通い慣れた道を通って目的地にたどりつく。
轍の跡も刻み込まれた踏み固められた道を進み、手際よく展開していく。
既に何度も訪れてるので、場所も決まってきている。
当然ながら、モンスター対策の備えなどもそれなりに作られてもいた。
作るといっても、存在するのは堀と土嚢を積み上げた壁くらい。
屋外で比較的簡単に作れるものといったらこの程度である。
だが、馬車を入れてテントをはれても余裕のある広さになっている。
施設というには粗末ではあるだろうが、人の手の入った場所になっている。
こういったものは珍しくもなく、義勇兵が出向く場所には結構作られている。
出向く度に一々作ってるのも面倒だし、どうせある程度定期的に通うならば片付けずにそのままにしておけ、と考えられている。
また、こうした堀と土塁による安全地帯は、なかば義勇兵の共有物扱いもされている。
使ったものが片付け、あるいは拡張拡大していくのも、いつの間にか成立した不文律になっている。
こうなるまでには、鉢合わせした者達が利用を主張して殺し合いになる事もあった。
拡大拡張の作業をやる集団がある一方で、整備などには全く手をつけない連中もいた。
そういった者達との軋轢や殴り合いや殺し合いの果てに、利用者同士で仲良く使おうという慣習が生まれていった。
誰が使うかで争うのもばかばかしいし、それよりは互いにある程度譲り合った方が便利である。
拡大拡張をすれば、その後も使いやすくもなる。
無駄な騒動を経なければお互いをいたわれない、争乱を回避する事すら考えないのは人間の持ってる業なのだろう。
そうした過去の出来事と、その後に生まれた相互扶助に近くて遠い互いを警戒し合いながらも同じ場所を利用する無言の取り決め。
これらに守られたタカヒロ達は、無人の宿営場所に入っていった。
「馬鹿がいなくて助かるな」
「最近はめっきりいなくなったようだ」
「ありがたい事っす」
そんな事を言いながら、野外活動と宿営の準備をしていく。
実際、こういう所に入り込む連中がいるから、宿営場所に入る前には中の様子を確かめるのが通例となっている。
身の置き所を無くした盗賊などがこれにあたる。
モンスターの出現地域であるこんな所にまでやってくるなんて酔狂にも程がある。
だが、世間に居場所のない連中にとっては、こんな所であっても他よりは良いのかもしれない。
さすがにモンスターの出没地域なので、そういった者は滅多にいない。
だが、一定以上の規模の集団だったら、危険を顧みずにやってくる事がある。
そういった者達には、モンスターよりも取り締まる治安機構の方が怖いのだろう。
それらに捕まって牢屋、もしくは絞首台などに放り込まれるよりは、モンスターの出歩く場所の方が良いらしい。
捕らえられればその後の処罰は免れないが、モンスター相手ならば生き残って自由に行動出来る可能性があるからだろう。
おかげでタカヒロのような義勇兵は、そういった者がいないかをまず確認しなくてはならなくなっている。
今回、そういった問題が発生してないのがありがたかった。
宿営場所に入ってこれからのしばらくの活動の準備が出来る。
タカヒロ達はテントを張ってこれから数日の活動に備えていった。




