46回 義勇兵集団の今後のためにやらねばならない事 2
「まあ、そういうのもいてくれないと困るしな」
自分の存在価値の軽さを仲間からの発言で再確認したタカヒロであるが、そこは仕事として割り切る努力は出来た。
結果が伴うかはともかく、自分がいない場合に備えて代わりの人材を育てねばならない事は理解している。
非常に卑近な話として、作業量を少しでも減らしたいという欲求もあった。
命を預かるというのは結構大変で、あれこれと頭と気をつかう。
そんな事からほんの少しでいいから解放されたいというのも、切なる願いであった。
集団・組織として以前に自分の安楽と平穏と余裕と暇のため。
タカヒロは自分に代わる、代理がつとめる人材を求めていた。
「でも、簡単にはいかないだろうな」
「だろうな」
「難しいからのぉ」
事の面倒さを考えると集団の頭領(別名、大将)であるタカヒロと。
集団年長(オッサン)組であるフトシとトシノリは人選に悩んでいってしまう。
これは単に技術があればどうにかなる、というほど簡単でもない。
確かに技術があればそれに該当する知識や手段などを身につける事は出来る。
だが、知ってるという事と上手く行えるという事は完全に一致するわけではない。
技術レベルというのは、そのレベルに到達すればそれに応じた振る舞いが出来るようにはなる。
戦闘用の技術であれば、素手や武器での戦闘方法を自然と身につけたりする。
何の訓練も受けてないものでも、極端にいえばため込んだ経験値を使って一気にレベルを格段に上げれば、同等のレベルの者達と寸分違わぬ事が出来るようになる。
たとえば、戦闘技術を身につけて無かった者であっても、経験値を費やしてレベルを5まで上げれば、それだけの動きが出来るようになる。
本当にそれまで何の訓練も受けてない者であってもだ。
なのだが、そこにはやはり素養や素質、才能といったものが絡んでくる。
無くて七癖ではないが、人には何かしら変わらない部分や持って生まれたものがある。
それが身体的特徴であったり心理的な気質であったりする
特定分野における才能や苦手も同様だ。
このため、数字上は同じレベルであり、同等の動きや考えが出来ても、結果に差が出る事がある。
また、分かっていてもやりたくない、という事もある。
戦闘技術でいえば、それを持っていても使いたくないという事はある。
誰だって死ぬ危険があるモンスター退治に出向くわけではない。
戦闘技術を高水準で修得していても、それで戦いにいこうと思う者ばかりではない。
身につけていても使わないという事が起こり得る。
タカヒロ達が悩んでるのはこれについてであった。
モンスター退治における部隊運営や運用、適切な行動の策定の才能があるのは誰なのか。
また、どうしても見合わない、やらせたくないのは誰なのか。
これをはっきりさせないといけない。
でないと、無駄にその方面のレベルだけ上がり、結局上手く指示が出せないという事になりかねない。
レベルを上げるための経験値を稼ぐのは大変な事である。
それが無駄になるような事は避けたかった。