45回 義勇兵集団の今後のためにやらねばならない事
不測の事態というのは何時起こるか分からない。
だから可能な限り普段から備えておかねばならない。
モンスターを相手にするのだから、怪我も死亡も常にありえる事態となる。
それらの対策として、治療手段の確保などがある。
だが、それでもどうしようもない事もある。
医療技術の発展もそれほどではないこの世界、医者のところに怪我人をつれていってもそれで助かる保障はない。
治療器具も治療方法も治療薬もそれほど高い水準ではない。
また、モンスターのいる場所から医者のいる場所まで連れて行く手段がほとんどない。
緊急で治療が必要であっても、治療出来る者のところまで行くには、せいぜい馬車で運ぶしかない。
救急車やヘリコプターなどは無いのだ。
一応、ある程度の治療技術を身につけてる者はいる。
それにしたって適切な処置が出来るかというと悩ましいところだった。
そもそもとして、生死に関わるような怪我を治すなど、それこそ魔術を使うしかない。
高いレベルの治療魔術ならば、失った身体部位すらも復活させると言われている。
だが、そんな高レベルの治療魔術を身につけてる者など多いわけがない。
国の中にも何人いるかというくらいだ。
このため、モンスターとの戦闘はやはり死亡率が高くなる。
タカヒロもそれを念頭に置いて、常に誰かが死ぬだろうと考えて行動している。
不意を突かれたり、想定より強いモンスターが出てきた時にはどうにもならない。
何とか逃げてこいとしか言えない。
それでも死ぬ者がどうしても出てくる。
レベルが上がって戦闘を問題無くこなせるようになるとこれは減ったが、それでも怪我の可能性は無くならない。
戦闘という行為を繰り返す中で、大なり小なり怪我はする。
死なないまでも戦闘力を喪失、あるいは大幅に低下させてしまう事はありえる。
そうさせない努力は当然として、そうなってしまった場合の対策が必要になる。
タカヒロもこれの例外ではいられない。
「今回、大将がいない状況になってつくづく思ったよ。
いないと不便だなって」
「不便で終わるのか」
支障を来すとか、二進も三進もいかなくなる、という事ではない。
その程度の存在感である事が悲しくもあった。
だが、自分が形にしてきた組織が、それなりに自立的に動けるという事は嬉しくもある。
それをより強化していこうという事であった。
「ますます俺が不要になるのか」
「そういう事だ」
「俺より先に追い出されるかもしれんのぉ」
とりなしの言葉もなく、周りの連中はタカヒロの言葉をそのまま承認していった。




