43回 留守の間の仕事状況 2
「まあ、作業はそれなりに出来たよ」
フトシが口を開く。
「やり方はいつもと同じだからね。
戦闘そのものも難しいものでもない。
このあたりに出て来るのなら、そうそう苦戦もしないし」
「なるほど」
「成果もまあまあ、普段と同じくらいには稼げた。
けどなあ。
やっぱり簡単にはいかなかったよ」
「やってみるとこれが難しくてなあ」
トシノリもそれに続く。
「自分で考えてやるってのは本当にきつい。
モンスターとやりあうくらいはわけないが、みんなを動かすとなるとな」
「モンスターの居場所も把握して動かなくちゃならないし。
魔術を使えば居場所を見つける事は出来る。
けど、どうやって巡れば手早く片付けられるのかってなると、これが難しかった」
「おびき寄せもやってある程度誘導は出来たと思うが。
いつも程上手く出来たかっていうと自信はないな」
今回仲間を率いる事になったフトシとトシノリは、指示を出す事の難しさをあらためて知ったようだった。
フトシとトシノリは普段から仲間を率いてる。
二人三人という人数を、場合によってはもっと多くを伴ってモンスターと戦っている。
なので、戦闘における指示ならばそれほど問題無くこなせる。
だが、今回はそれとは勝手が違う。
戦闘のための指示ではない。
戦闘する場所を巡るための指示である。
戦闘に入る前と、終わった後の話になる。
モンスターはいつも同じ場所にいるわけではない。
おおよその出現地点というか、国境からの侵入経路はある。
あるが、それは大きく幅が広く、何本もの道がある。
そして、何時どこからやってくるのかは完全にモンスターの都合による。
それらを見極めて、上手く倒していかねばならない。
こういった時に役立つのが魔術による探知である。
現在地の把握から、特待の対象や存在の居場所を突き止めたりするものだ。
フトシが身につけてるのはこういったものだ。
戦闘に直接役に立つものではないと言われてるが、広範囲に存在するモンスターを発見するのには役立つ。
これが出来ないと、モンスターを探して回るだけで時間を浪費してしまう。
とはいえ、魔術を使える者は少なく、多くの義勇兵はこういった手段をとれない。
たいていは足跡などの痕跡から居場所を見つけて居場所を探っていく事になる。
これだけでも成果をあげる事は出来るが、魔術を使う場合ほどではない。
今回、タカヒロ抜きで活動したが、それでも成果を上げられたのはこの魔術による所が大きい。
「けど、居場所が分かってもどう巡っていくかを決めるのが難しくて」
「やり方は教えてもらったが、実際にやってみると難しくてな。
取りこぼしも幾つか出てきてしもうた」
それでも黒字が出せるくらいには稼いでる。
一見して成功してるように見える。
だが、実際にはこうした問題も潜んでいたという。