42回 留守の間の仕事状況
「まあ、それよりも仕事の方だ」
「あ、話を反らした」
「真面目に話してるんだよ」
「……すんません」
「まったく……。
それで、どうだった。
俺がいなくてもどうにかなっただろうけど」
そう言ってタカヒロは自分が不在の間の活動について聞いていく。
今回、タカヒロの帰郷にあたり、義勇兵としての活動をどうするかが問題になった。
やろうと思って出来ない事はないとは思っている。
だが、タカヒロの指示無しでどこまで動けるかは未知数だった。
作業の分担などの関係で、タカヒロ以外の者が指示を出す事はある。
しかし、仲間全体への指示を出してきたのはタカヒロだ。
それが無くても上手くやれるのかというのは不安材料であった。
タカヒロの義勇兵集団は全部で15人ほど。
零細の中ではそこそこ多い方ではある。
だが巨大というほどではない。
たったこれだけと言える人数でもある。
なのだが、指示の伝達や意思の統率はこれでも難しくなる。
それぞれが違う事を言い出したらまず収拾がつかない。
全部の意見を汲み取ることは不可能だ。
かといって、無理矢理やらせても上手くいかない。
人にはそれぞれ意志や気持ちがあり、それを損なわれる事を嫌う。
作戦の正否に関わる事であろうと、それをやれば失敗すると分かっていても、己の立てた方針方策に拘る。
タカヒロはそれを無理矢理押さえ込んできた。
というか、指示に従わない連中は放り出した。
作業中にそんな事をして死にそうな目にあってから、そのままモンスターの餌になってもらった事も一度や二度ではない。
無事に帰還してから排除を言い渡した事もある。
その結果として残ったのが今の仲間である。
そうそう指示から逸脱した事はしないはずではある。
また、出す指示も作業として必要なものになってるはずであった。
そうした指示を出す人間が残ったし、そういう指示を出すようにも教えてきた。
受け入れる方も内容確認くらいはするが、反論や批判という無駄で害悪にしかならない行為で面倒を起こしたりはしない。
もちろんこれは、予期せぬ事態の場合には現場で勝手に行動して良い、という前提あっての事である。
指示通りに動こうにもそれが出来ない場合は撤収撤退する。
これをタカヒロは義務にすらしていた。
作業を続行しようとして損害が発生したら目も当てられないからだ。
これがあるからこそ、「とりあえず指示には従っておくか」という気にもなる。
いい加減というか適当・出鱈目なやり方とも言える。
だが、基本的に真面目というか誠実な人間が揃ってるので、極端に逸脱した事はしでかさない。
命令でガチガチに縛り上げる必要がないのは長所であろう。
問題は、指示を出すことになる者達が何をするかになっていく。
指示は出す方にもそれなりの能力を求められる。
作業場所、作業内容、作業人員などを見て、適切な行動をさせないといけない。
義勇兵の場合は、ここにモンスターが加わる。
人間の意志とは無関係に動く敵に対処していかねばならない。
それに対応出来る指示が出せるかどうか。
タカヒロが心配するのはここだった。
個々の能力は問題が無いのは分かってる。
分からないのは、それらが集まって部隊として機能するかであった。




