41回 心温まる仲間の反応 4
「こいつの世話は俺がやる。
幸い、それくらいの稼ぎはある」
タカヒロは考えをそのまま伝えていった。
「それとは別に、家は構えていってくれ。
俺に合わせて遅らせる必要は無い。
ミオとの事はあくまで俺の都合だ。
お前らまで合わせる必要は無い」
「まあ、それはそうだな」
トシノリが頷く。
「けど、頭はどうするんだ?」
「また稼ぐよ。
それくらいの余裕はある」
「けど、時間がかかるぞ」
「もちろん」
「構わないと?」
「問題は無いだろ」
少なくとも集団行動において問題になる事は無い。
普段生活する場所が異なるだけなのだから。
もっとも、それはそれで意思の疎通が出来なくなる可能性はある。
(最悪、離反するかもしれんしなあ)
そこをタカヒロは懸念していた。
普段の生活場所が違うという事で、目が届かなくなる可能性が出て来る。
その隙を突いて、一団がタカヒロから離反する可能性がある。
それが全員なのか、大半なのか、一部にとどまるのか。
どうなるかは分からない。
そもそもとして、そんな事起こらないかもしれない。
だが、人は利に走るものでもある。
今のタカヒロのやり方(主に分け前の配分など)に文句がある者が離れていく可能性はある。
(まあ、そうなったらそうなっただな)
そこはある程度覚悟はしてるし、それによる損失も許容範囲である。
仮に全員がタカヒロから離れたとしても、タカヒロもそれなりのレベルにある。
モンスター退治のやり方も身につけてるので、食い扶持くらいならどうにか稼げる。
何なら、同じような集団をもう一度組んでも良い。
時間も手間もかかるだろうが、やってやれない事は無いだろうと思っていた。
(そうならないのが一番だけど)
仲間を信じたいが、こればかりはどうなるか分からない。
人の心は掴みようがない。
前世においても今生においてもそうした場面を何度か見てきた。
だからこそ、タカヒロは必要以上に人をまとめようとはしなかった。
離れる時は離れていく。
まとまる時はまとまる。
どれほど利があろうと、理があろうと、去っていく者は居る。
どれほどの苦境であろうと、共にいようとする者はいる。
そのどちらになるかはその時になってみないと分からないものだ。
ここにいるのは、そういう意味では誠実な者達が集まっている。
そうそう離反したりはしないとは思ってはいる。
しかし、それすらも何の保障があるわけではない。
その時が来たら、なるようにしかならない。
ある種の諦めと、その時に備えての覚悟はしている。
相手を信じる事と最悪に備える事は相反する事ではない。
もともな人間ならやっておいてしかるべき事でる。
この部分において、タカヒロは運が良かった。
もともと誠実さのない人間は切り捨ててきたのもある。
その効能もあってか、この時点においてタカヒロに愛想をつかすような者はいなかった。
「予想もしなかった事だしなあ」
「見捨てていたら、それこそ酷いっすよ」
「それが出来ないから、俺達みたいなのを拾ってるわけだろうし」
「違いない。
裏があるかもしれんが、それで俺達が助かってるのは確かだからのぉ」
「しばらく大将が遅れるのはしょうがないですわな」
「なるべく早く稼いでくださいよ」
「待ってるっすから」
タカヒロが少しばかり遅れる事については、皆が納得して受け入れていった。
「それに、急がないとあの奴隷ちゃんと一緒にいる時間も作れないし」
「大将、頑張らなくちゃいけないっすよ」
「宿じゃいちゃつくわけにもいかないしな」
「まったくだ。
まあ、色事は家が建つまでお預けだな」
余計な一言も忘れずに加えていく。
それを聞いてタカヒロは、やっぱりこいつらといるのは間違いなんじゃないのかと思い始めていった。