表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/259

4回 そして奴隷を買う事になったわけだが 4

(まあ、家族に売られたらなあ)

 更に言えば、ミオ以前に何人かが同じような目にあっている。

 村にいた頃、タカヒロもその一幕を目にした事もある。

 奴隷商人がミオの姉を連れていくところだった。

 タカヒロが見たのはそれだけだったが、その前に二人ほど同じ目にあってるという。

 売られた彼女らのその後は不明だ。

 売られた娘がどうなるかなど、たいていの場合分からず終いになる。

 わざわざ売られたあとの消息を伝える事などない。

 奴隷商人も、売りに出すまでは管理するが、身請けされた者がどうなるかまでは関知しない。

 奴隷というのはそういうものである。



 だからこそ、多少なりとも顔見知りの娘をそんな目にあわせたくなかった。

 直接の接点はほとんどないが、タカヒロの妹なども含めて一緒に遊んでいた事もあったのだ。

 助ける義務も義理もなかったが、人情がタカヒロを突き動かした。

 おかげで、貯めていた金の大半を吐き出す羽目になった。

 だが、後悔はない。

 そうしたいと思って、思った事をやってるのだ。

 これで良かったと納得出来る。

 それが自分を誤魔化してるのだとしても。



(それに……)

 ミオの手を引きながら我が身を振り返る。

 タカヒロとてそれほど良い人生を送ってきたわけではない。

 とはいえ、家族がそれほど酷かったという事はない。

 この世界の一般的な人間としての情愛はあったとは思う。

 問題なのは、その家族の事ではない。

(前世も大概だったし)

 記憶にあるそれの方が問題だった。



 タカヒロは転生者だった。

 それも、この世界の住人ではない。

 現代日本から異世界へと転生をしている。

 その前世は、それほど良いものではなかった。

 そこそこ普通の家庭に生まれて育ち、それなりに成長し、一応は寿命までは生きた。

 しかし、それが幸せであったとは言えない。

 確かに底辺をのたうちまわるという程では無かっただろう。

 一応、仕事はしていて稼ぎはあった。

 食っていくだけならどうにかなった。

 だが、それだけでしかなかったのも確かだ。



 生活は食っていけるギリギリ。

 給料は時給で休んだ分だけ目減りする。

 そんな中で生きていくためにただひたすらに働いていた。

 多少は遊ぶ余裕はあったが、それも派手なものではない。

 それが幸せであったとはとうてい言えない。

 だからだろうか、ミオに同情してしまった。



 自分とは関係のない理由で不幸になる。

 そういうところに陥ってるのを見捨てられなかった。

 だからついつい助けようとしてしまった。

 彼女を奴隷から救う事は出来なかったが、この先どうなるか分からない状態からは引き上げた。

 タカヒロが蓄えを費やしても納得出来るのは、こういった経緯があったからだ。

 晴れてすかんぴんに近い状態になったが、それでも構わなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。




活動支援はこちら↓

あらためて支援サイトであるファンティアの事でも
https://rnowhj2anwpq4wa.seesaa.net/article/501269240.html
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ