35回 奴隷にやらせる町での仕事がだんだんと決まってきた、だいたいが屋内作業であるのは言うまでもない 5
実際の作業については、やらせてみて様子を見る事とした。
周旋屋から作業場所を借りて、サキの衣類を洗濯させてみる。
実際にどれくらい出来るのかを見てみないとどうしようもないからだ。
それに、仕事としてやってみないと、足りない部分も見えてこない。
揃えておかなければならない道具が何かは、やってみるまで分からないものだ。
実際にやるとあって、少しだけミオは緊張もしていた。
家族のものは日頃からやっていたが、他人のものに手をつけるのは初めてである。
勝手は同じだろうが、やはり多少は気を遣う。
場所の使い方もいつもと違うので、それにも慣れないといけない。
それに見慣れない道具もある。
それらの使い方も教えてもらいながらやっていく事になる。
ただ、手洗いで衣類を片付けていくのは今までと変わらない。
洗濯板を使ってタライの中で手で洗う。
効率は当然ながらそれほど良くはない。
どうしても汚れは多少は残る。
石鹸なんてもののない世界である。
もしかしたら存在するのかもしれないが、おそらく一部でしか使われない貴重品・高級品である。
基本的に汚れは手でもんだり擦ったりして落とすしかない。
洗濯は割と重労働である。
それをミオは、慣れた手つきでやっていった。
手際は悪くはなかった。
これを専門にしてる業者ほどではないが、一般的な家庭での作業であれば充分である。
それだけ色々やらされていたのだろう。
売り出すための、商品価値を高めるためという理由によるものではある。
だが、本人の能力を高めてるのは事実で、それだけはありがたいものがあった。
(普通だったらどこかに嫁にいけたんだろうけど)
生まれた家が悪かったと言うしかない。
洗濯の他にも家事については一通り身につけているようである。
それだけ出来れば、ごく普通に嫁にだすことも出来ただろう。
もちろん、嫁ぎ先があるかどうかは分からない。
というか、結婚など家を継ぐ者がするのが普通で、それ以外はまず無理ではある。
当然ながら間口は狭い。
嫁に……というのも実際には難しい。
それでも、奴隷として売る必要は無いだろうと思いたかった。
そんなミオが戸惑ったのは、洗濯が終わってからである。
周旋屋に置いてある機具の使い方についてであった。
これは普通の家庭には置いてないので当然と言える。
脱水機と乾燥室。
こんなものがこの周旋屋には存在していた。