3回 そして奴隷を買う事になったわけだが 3
渡小道の家は、意図的にこれをやっていた。
男の子は働き手として可能な限り残し、女の子は奴隷商人に売り飛ばす。
こうやって田畑を耕す労働力を確保していく。
当然、畑仕事だけならばそう多くの男では必要無い。
余ってる分は、村で必要になる作業にあてるようにしていく。
そして、娘の方は何かあった時に売りに出していく。
そうする事で、労働力と金銭を得ていた。
やむなき手段としてこれらをやってるならまだ良い。
だが、意図してこういった事をしてるあたりに問題があった。
さすがに村でも多少は問題にはなっていた。
非常時の緊急手段としてならともかく、これを営利目的でやっているのは。
しかし、だからと言って強くも出られなかった。
力仕事の担い手を村は得られる。
これにより、村は利益を得る。
だからあまりおおっぴらに文句は言えない。
積極的に賛同はしないが黙認はしていた。
今回、ミオが売られたのも、こうした流れの一環であった。
多少の不作、一家全員が食っていく事はかろうじて出来る。
だが、それでもミオは売りに出された。
ほんの少しの目減りがもたらす影響はある。
それを軽減するには、口減らしが必要だった。
そして、程よく育ったミオがそこにいた。
ただそれだけの事である。
家族は自分達の食い扶持を減らす事もなく、収入を得られる。
その金でこの先の為の投資をしていく。
あくどい事をやってるが、ミオの家の者達は決して先の事が見えない者達ではなかった。
手にした金で豪遊したり散財する事はない。
収穫を増やす為に金を使っていた。
その金を得る手段に顔をしかめざるをえないだけである。
その事について、ミオに一度尋ねたところ、
「うん、でも仕方ないかな」
とだけ返答をした。
家の中で色々言われてたので、そう思うようになっているのだろう。
そういう環境にいれば、順応してしまう事もあるだろう。
だが、その時の口ぶりは、決して現状をよしとしてるものではなかった。
仕方ないと自分を納得させるしかないようにも見えた。
何より、家族が自分を売った事についてはそれ以上何も言わなかった。
無言である事が何よりも雄弁に心情を物語っていた。